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日本中枢の崩壊
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投稿者 sci 日時 2011 年 7 月 22 日 16:45:17: 6WQSToHgoAVCQ
 

http://www.youtube.com/watch?v=kXYfhU4P5ng
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http://book.asahi.com/bestseller/TKY201107210210.html
日本中枢の崩壊 [著]古賀茂明

[評者]速水健朗(フリーライター)

[掲載]2011年7月17日

表紙画像著者:古賀 茂明  出版社:講談社 価格:¥ 1,680

■改革の骨抜く官僚をえぐる

 震災であらゆる状況が変わったように錯覚するが、以前の重要問題が消えたわけではない。

 本書は公務員の“天下り”や“渡り”を追放する公務員制度改革の失敗を、内部の官僚側から記したものである。

 公務員制度改革は「消えた年金」問題に翻弄(ほんろう)されていた安倍晋三政権時、起死回生の策として掲げられる。省庁からの強い抵抗を受けたこの政策は、国民の支持と渡辺喜美行政改革担当大臣(当時)の情熱によって基本法の成立にこぎつけた。

 本書の著者は、この成立後に組織された改革推進本部事務局の幹部。しかも渡辺大臣が、反対勢力に抵抗するための改革の旗手として肝いりで抜擢(ばってき)した切り札的存在である。

 だが著者は、挫折の道を歩む。福田康夫首相時代の内閣改造によって渡辺大臣は退任。改革推進本部は各省が送り込んだ妨害派に主流の座を奪われ、事務局審議官を解かれた著者は、経産省の閑職に追いやられた。

 この政策は、のちの麻生太郎内閣の時代にも再び起死回生の策として国会に提出されるが、今度は当時野党の民主党によって妨害される。政権奪取後のカードとして「天下り追放」を横取りした民主党だが、その着地点は改悪に近い形に骨抜きにされたものだった。その証拠に、今年に入っても元資源エネルギー庁長官の東電への天下りが行われているのだ。

 本書が抉(えぐ)るのは、省益しか顧みずサボタージュや抜け道づくりによって、政策を有名無実化してしまう官僚の手法である。

 現状、国民の政治への不満は、何もしない政府に向くが、問題は何もさせない官僚機構である。政権交代が、その改善策ではないというのが不幸である。むしろ上に乗る政府だけがころころ入れ替わる状況が、土台の腐食を覆い隠してきたのだから。

http://blogs.yahoo.co.jp/hary1118/35371152.html
講談社から「日本中枢の崩壊」という一冊の本が出ている。現職の経産省官僚が書いた本だ。
著者である「古賀茂明」氏の肩書は、「経産省大臣官房付」となっているから、飛ばされて閑職に居る人だと分かる。「できれば、自ら辞職していただきたい」というポストである。

今回の原発災害で、古賀氏はときおりテレビに登場している。
古賀氏が主張している通産省と電力会社の癒着の話も当然書かれていて、「東京電力に睨まれたら出世できない」とさえ囁かれているのは事実なのだそうだ。

日本では、各電力会社は発電部門と送電部門を共に持っていて、地域ごとに供給を独占している。東京に住んでいれば(電気は)東京電力から買うしかないし、東京電力は基本的には自分の発電所の電力だけを供給すると云う具合だ。
つまり、そこには自由な競争も生まれず、電力消費者は東電のいいなりになるしかない・・・という情況が生まれていたのである。

「独占」というのは、「何でも好きなように出来る」ということを許すことであり、本来「独占禁止法」などで排除されてしかるべきなのに、こと「電力業界」だけが国策で例外的な独占を認められてきたのだ。

≪電力会社は独占なので、いくらでも儲けられる。あまり儲けすぎると、料金を下げろと消費者から文句を言われるので、あまり儲けない。
電力会社の社長が経団連や他の経済団体の会長に推されることが多いのはなぜか。電力会社は最大の調達会社だからだ。発電プラント、送電線、鉄塔。地域には発電所や事務所が無数にある。生活必需品も必要なら自動車も必要。電力会社は、鉄をはじめ、ありとあらゆるものをそこらじゅうから大量に買う。だから、経団連の会長に電力会社の社長がなると、誰も文句が言えない。p258≫と、古賀氏が書くのも無理も無いのだ。

民主党政権が、「政治主導」を謳い、「脱官僚」を標榜したにも拘らず、見事に破たんした原因について、古賀氏は次のように指摘している。

≪民主党政権は、発足当初こそ、期待通り、官僚と対峙する姿勢を鮮明に打ち出して出発したが、その後の妥協に次ぐ妥協をみると、脱官僚は看板倒れに終わりそうな気配であった。
菅総理は、「平成の開国」「最小不幸社会」などを掲げていたが、マニフェストを見直すことになったから、国民から見れば、そもそも民主党が何を目指すかは不明だった。
民主党政権最大の実力者であるキレ者の誉れ高い仙谷氏が、国家戦略相のときにやったことで記憶しているのは、ベトナムへの原子力発電所と新幹線の売り込みくらいのものである。こんなことを戦略相がやるのかな、もっと大きな枠組みを変えるようなことを考えて貰いたいな、と少しがっかりしたものだ。

仙谷氏と財務省の関係も非常に興味深い。 仙谷氏は当初は改革に燃えていたと思われる。しかし、現実との妥協で財務省と手を握るふりをしたように見える。
民主党政権誕生直後は決して主流とは云えなかった仙谷氏が、民主党内の権力を掌握し、菅内閣で突出した権力者となれたのは、財務省に依存する作戦が成功したからである。
財務省のバックアップがあるために、他の閣僚に比べて、入って来る情報の質・量が違って来る。従って、情報不足による失言は無く、大ボカをせずにすんだ。
非常に難しい場面になると、仙谷氏の意見が、一番もっともらしい。他の閣僚の評価が落ちていく一方で、仙谷氏の評価だけがウナギ登りで、内閣の中で突出した権力を持つに至った≫・・・というのである。

このあと、仙谷氏が階段を転げ落ちて、閣内から追い出されて行く話なども、「なるほどね、そういう話だったのかぁ」と分かり易く書かれている。

古賀茂明という経産省のエリート官僚は、別に霞が関をぶち壊したいと思っている訳ではない。
そうであれば、天下りを拒否して、閑職にとどまって、なおかつ霞が関の片隅に居続けるということに意味は無い。
彼は、むしろ、『霞が関の再生、とりわけ、若手官僚の活躍できる公務員制度の実現』を願っているから、そこに居るのだ…と言っている。

本書に書かれている危機感は、書名が示す通り、権力中枢の崩壊・メルトダウンが起きている…という現状認識そのものである。
「政治主導」も「官僚主導」もあったものではない。それらのいずれもが腐敗しており正に「炉心溶融」を引き起こしているのだ。

むろん、国民も無縁ではない。
国民の大半が、長年に渡る緊張感のない社会の中で、緩みきった生活をし続けた結果、何も考えない、考えられない人々を生み出していたのである。

「イワシは頭から腐る」・・・という。

この国の「中枢」が腐り始めているのであれば、この国はもはや絶望ではないのか。

「早く、頭を取り替えろ!」と言っている傍で、「腐ってはいても、頭は頭だ」とバカを言う人たちが居る。

古賀氏が書くように、 ≪世界の変化は年々、加速度を上げ、日本を取り巻く環境は一変している≫にも拘らず、この国の変革は遅々として進まず、国民の意識の変化もまるでないのである。
せっかく「政権交代」をして、チャンス化…と思われた期待も、風船はパーンと割れてしまったのだ。
「希望の風船」を割ったのは、旧態依然とした政治体制を望む、既得権力の上で胡坐をかいている官僚組織、メデイア、東電など経産省癒着産業、学者専門家・・・いつまでも、この国を属国状態に置いておきたいアメリカの支配者たち…である。

そして、なによりも「この国をリードする中枢に危機感が乏しい」・・・ことが、大問題なのだ・・・と著者は言っている。

本書は、ひさびさに読み応えのある内容を持ち合わせた「現職官僚」の提言集でもある。ぜひ、書店にて買い求められる事をお薦めしたい。

巻末に、「経産省が握りつぶした」と言われている「東電処理策」が掲載されている。
発送電分離を含む、電力業界を取り巻く政官業の癒着、学界、労働組合、マスコミを巻き込んだ構造的癒着を切り崩すためにも・・・と著者が提案したものだ。

古賀氏の政策提言は、民主党政権の政策を真っ向から批判したものと言われているが、不思議に本書の中に「小沢批判」の言葉が一言も出て来ないのである。その辺は、実に興味をひかれる部分でもある。

http://agora-web.jp/archives/1331594.html
日本中枢の崩壊
著者は、経済産業省の大臣官房付という現役のキャリア官僚である。それがこのように日本の官僚機構を全面的に批判する本を出すのは、それなりの覚悟があってのことだろう。ただ、彼は「反体制分子」というわけではない。本書に書かれている彼の仕事ぶりは、与えられた仕事を淡々とこなす常識的なものだ。

その歯車が狂ったのは、福田内閣の渡辺喜美行革担当相に「一本釣り」されて国家公務員制度改革推進本部の事務局長になったときからだ。自民党や霞ヶ関の反対を押し切って国家公務員法の改正案をつくったものの、渡辺氏がいなくなると法案は骨抜きにされてしまった。

政権交代で改革をやるはずだった仙谷由人行政刷新相は、著者を経産省に戻してしまい、彼は官房付の窓際ポストで飼い殺しにされる。そして彼が国会に参考人として呼ばれたとき、仙谷官房長官が「こういう場に呼び出すやり方は、はなはだ彼の将来を傷つける」という異例の答弁をして注目された。

著者もいうように、日本の官僚は個人としては優秀で仕事熱心な人が多いが、組織の利益を侵害される問題になると、人が変わったように組織防衛に狂奔する。私も経産省から懲戒処分を受けたが、このときも当時の官房長(北畑隆生)の行動は常軌を逸していた。この原因は著者も指摘するように、キャリア官僚の身分が法的には保障されていても、実は不安定なことにある。

建前上は、官僚は解雇されない終身雇用だが、キャリアの場合は同期が局長になると「肩たたき」されて、省内にいられなくなる。年功序列を維持するかぎり、天下りポストを確保しないと行き場がなくなってしまうのだ。他方で天下りに対する風当たりは強くなる一方なので、年功序列を廃止する公務員制度改革は、長期的には官僚の利益になるはずだ。しかし彼らは逆に、年功序列を維持するために「現役出向」というもぐりの天下りを始めた。それを著者が批判したのが、問題の仙谷発言のきっかけである。

本書のテーマはこうした官僚機構の批判だが、著者の思い出話がまじってやや散漫だ。せっかく公務員制度改革を手がけたのだから、日本の官僚制度についてもう少し深い考察がほしかった。それは著者が晴れて「自由の身」になれば、本格的な研究書として上梓されるのかもしれないが・・・  

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