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2011年7月22日 (金)
首相辞任政局を党内政局に利用する姑息な幹事長
チキンゲームというのは、別々の車に乗った2人のプレイヤーが互いの車に向かって一直線に走行するゲームのことをいう。激突を避けるために先にハンドルを切ったプレイヤーはチキン(臆病者)と称され、屈辱を味わうことになる。
日米で、このチキンゲームが繰り広げられている。
日本では菅直人氏が首相退陣条件に、財確法を掲げた。財源確保のための特例法のことである。この特例法が成立しないと特例国債=赤字国債を発行することができない。国家財政の約半分を国債発行による収入で賄っている。赤字国債を発行できなければ、予算執行のための財源は枯渇し、公務員給与が払えなくなるなど、政府機能はマヒする。
必ず、どこかの時点でこの法律を成立させなければならないことははっきりしている。法律が成立せずに、政府機能マヒの状況に陥れば、大混乱に至ることは明白である。それを知りながら、菅直人氏と与野党がチキンゲームを展開している。
米国では政府債務上限を定めた法律がある。政府債務の増加に歯止めをかけるために、債務上限を法律で定めている。8月2日までに政府債務上限を引き上げなければ、新規の国債発行ができなくなり、やはり、政府機能がマヒすることになる。
現在、米国では民主党が上院過半数を握っているが、下院では共和党が過半数を占めている。下院共和党はオバマ政権に対して強硬な姿勢を示しており、増税をせずに財政赤字を大幅に削減するとの共和党の主張を大統領が呑まない限り、債務上限引き上げに応じないとの姿勢を示している。
債務上限引上げ法案が成立しなければ、格付け機関は米国国債の格付けを大幅に引き下げることを示唆しており、米国発で世界の金融市場に激震が走ることは明らかだ。米国でもこの問題の破裂に向けて、チキンゲームが展開されている。
日本では、菅直人氏が辞任三条件を提示した。@第2次補正予算、A財確法、B再生可能エネルギー特措法、の三つが成立したら、「一定のめど」がついたことになると発言した。常識で考えれば、この三条件が整えば首相を辞めるということになる。
しかし、この菅直人氏はウソつきで、ペテン師であるから、慎重に交渉を進めなければならない。ペテン師でウソつきの首相が存在することは日本の恥であり、国民の最大不幸だが、愚かな民主党議員が菅直人氏を代表に選出してしまった以上、これが現実である。
過去2回の代表選で菅直人氏に投票し、いま、菅直人氏退陣を求める民主党議員はおのれの不明を恥じるべきである。
三つの条件のうち、補正予算はすでに衆議院を通過した。予算には衆議院の優越があるから、これで一段落である。
エネルギー法案については、問題が多くある。それでも、これを盾に菅直人氏がごねるようであるなら、とりあえず、どのような形でも法律を成立させてしまえばよい。菅氏が辞任した後で、しかるべく法律を修正すればよいと思われる。
鍵を握るのは財確法である。これが通らなければ、大混乱が生じることは明白である。菅直人氏が辞めることを確約しないために、この法律が成立しないということになれば、批判は確実に菅直人氏に向かう。菅直人氏が日本全体を大混乱に陥れて、その批判の矛先をすべて自分が引き受けながら、なおかつ総理の椅子にしがみつくというのであれば別だが、さすがにその選択は菅直人氏にもできないはずだ。
そのようなことをすれば、菅直人氏が暗殺されるなど、菅直人氏の生命の危険も浮上しかねない。
つまり、この財確法成立と菅直人氏辞任を確実に取引すべきなのだ。菅直人氏の居座りが日本の国政全体の停滞、遅滞、混迷の原因になっている。国政は事実上の機能マヒの状況に陥っている。
菅直人氏の早期辞任の必要性については、与野党が一致するところとなっているわけで、そうであるなら、この財確法の成立と引き換えに首相を辞任する確約を取るべきである。
ただし、口約束では不十分である。公正証書を作成し、公証人にその証書を提出しておく必要がある。菅直人氏の書名、捺印をした契約書を交わすべきである。
ところが、この政局を政局に利用しようとしている勢力がいる。民主党が昨年9月の総選挙で提示したマニフェストを撤回しない限り、財確法の成立に同意しないと発言する勢力である。
自公両党がこの主張を示すのは、自公両党の党利党略としては理解できる。こうした危機に乗じて、自己の政党の利益増進を図ることは、感心できることではないが、日本の政党の常だからだ。
問題は、民主党執行部がこの政局を党内政局に利用していることだ。自公両党の主張をてこに、党内政局にこれを利用しようとの思惑が透けて見える。
民主党内部には、本来の民主党公約を重視する勢力とこれを否定しようとする二つの勢力がせめぎ合っている。現在の執行部は本来の民主党公約を否定しようとしている勢力である。私は前者を「民主党正統」、後者を「民主党悪党」と呼んでいるが、岡田克也氏などを中心とする民主党悪党は、この政局を利用して、民主党の本来の公約をせん滅しようと画策しているのだ。
これは、許されない行為である。民主党が2009年8月総選挙での政権公約を根本から変更するには、大がかりな党内論議が必要である。いま、この危急の局面で、そのような作業を実行する余裕はない。
自公両党が、菅直人氏が財確法が成立すれば辞任することを明確にしながら、なおかつ、民主党マニフェストを変更しない限り、財確法成立に協力しないと主張するなら、その主張を放置すればよいだけである。
この場合に、財確法が成立せずに大混乱が生じる場合、批判の矛先は自公両党に向かうことになる。民主党は財確法が成立しない理由を明確に国民に説明する必要がある。
私たちが目を凝らして真実を見極めなければならないのは、この政局混乱を、岡田克也氏を中心とする民主党の現執行部が党内政局に利用しようとしていることである。このような自己中心主義行動、民主党を支持してきた主権者国民に対する背信行為を許してはならない。
民主党執行部は菅直人氏と交渉し、財確法成立は菅直人氏の辞任確約との交換条件になることを明確にするべきである。このことを明確にしたうえで、自公両党に対して、財確法成立を交渉するべきである。
菅直人氏辞任の確約を得ながら、なおかつ自公両党がマニフェスト変更などとごねるなら、そのような自公両党は放置すればよい。財確法が成立しない責任は自公両党の過剰な自己主張によることが明白になるからだ。
私たちが監視しなければならない対象は、政局を党内政局に利用しようとしている岡田克也氏を中心とする民主党現執行部である。この点を間違えないようにしなければならない。
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