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2011年7月18日 (月)
火事場泥棒『水産特区構想』は白紙に戻すべきだ
松本龍前復興相が宮城県を訪問した際、村井嘉浩知事を叱責し、その後辞任した。松本氏の言動に問題があったのは事実だが、遠方からの客人の訪問に際して、5分でも前もって時間を確保して客人を出迎えることは常識に含まれることではあった。また、松本氏が「地元のコンセンサスを得ろよ」と発言した、その中身には重大な意味が含まれていた点を見落とすことはできない。
6月25日に復興構想会議が提言を発表したが、そのなかに、企業の漁業への参入を認める特区の創設を盛り込んだ。
このことについて、私は6月24日に、
「火事場泥棒的手法に走る復興会議は解散すべし」
と題する記事を掲載した。
漁協の管理下にある漁業に対して、新たに企業の参入を認めることは、漁村全体のあり方を根底から変えかねない重大な意味を持つ。
はっきりしていることは、やがて、大資本が漁業を支配することになることだ。そんなことは火を見るよりも明らかだ。
そして、外資の参入を認めれば、日本の漁業は最終的に外国資本に支配されることになる。
こうした施策が、小泉竹中政治の「市場原理主義」の延長上にあることは明白なのだ。
村井嘉浩氏は、地元住民の意思を無視して、この流れに乗っている。震災で大きな不幸に直面した地元住民の苦しみを横に置いて、かねてより存在した経済のグローバル化を推進する資本の論理の主張に安易に乗っているのである。
この点が、地方の本当の声に真摯に耳を傾ける岩手県の達増拓也知事と歴然たる差が存在する部分である。
TPPを推進する勢力は誰の意思を代弁しているか。それは、資本の論理の主張でしかなく、資本の利害と本質的に対立する「国民」の論理には反する主張が提示される傾向は否めない。
TPP推進者は、日本の農業の自由化を主張する。農業にも企業形態での参入を認め、これまでの農業のあり方を変革するのだという。
確かに企業が参入し、農業を大規模化し、農業を資本集約的な産業に変化させれば、一時的に生産性が上昇するかもしれない。
しかし、外資の参入を認めれば、農業のノウハウを有する外資が日本農業を支配することになる蓋然性は高い。外資は外資の事情をもとに行動する。外資が長期の安定的な農業を追求するのか、短期の利益獲得を目指すのかは分からない。
また、外資を取り巻く環境がいつ急変するのかも分からない。リーマンショックのような変化が生じれば、外資はいつ資本を撤退してしまうかも分からない。
農業、漁業には、太古の昔からの歴史がある。産業革命後に発展した工業などとは歴史のスケールが違う。日本の農村、漁村の原風景を形成してきたのが、農業や漁業であり、その形態のあり方の変革は、よほど念入りな論議が必要なのだ。
資本の論理、市場原理主義しか頭にない、偏った人々の単なる利潤追求の発想だけで、結論を得るべき対象ではないのだ。
何よりも地域住民を愚弄しているのは、このような論議を、復興構想会議のなかに盛り込み、各種の利害代表者だけが送り込まれる、全体の主張を盛り込むとは到底言えないような、ちんけな会議で、ろくに時間もかけないで、このような結論を提示し、その一味である知事が無責任に、その片棒を担ぐ、その図式である。
地元の漁協はこのような構想に同意しているのか。住民自治の基本は、意思決定の主役を地域住民にすることではないのか。地域住民が反発することを、中央のどこの馬の骨とも分からぬ会議が決めたことだからと言って、上からそれを強制することが許されることなのか。
復興構想会議は、まず、復旧、復興に全精力を注ぎこむことだ。漁業への企業参入など、米国の差し金か、市場原理主義者の利潤追求の行動か、のいずれかでしかないようなことを、震災のどさくさに紛れて、強行するべきでないことは言うまでもない。
こんなことでは、復興構想会議は火事場泥棒会議と名称を変える必要が出てくる。この会議は、復興そのものよりも復興税などの増税政策に熱心でもある。復興費用を最終的にどのように賄うのかは、復興構想会議の次の問題だ。
結局、この会議は、地域住民のためのものではないことがよく分かる。ハイエナのような利益追求の亡者たちの、火事場泥棒構想会議なのだ。
漁業への企業形態での参入は、この会議で論じるのではなく、別の機会に、もっと時間をかけ、かつ、地元住民の声を十分に反映する形で論議する必要がある。
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