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月刊日本編集部ブログ
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「月刊日本」7月号
発行所 株式会社K&K
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亡国に至るを知らざれば、これ即ち亡国
本誌主幹 南丘喜八郎
日本は今、未曾有の国家的危機に直面している。
三月十一日午後二時四十六分、宮城県沖でマグニチュード9の大地震が起きた。その直後に沿岸地域を襲った巨大津波、加えて福島原発事故は、東北地方の沿岸部を壊滅させ、日本を混乱の渕に叩き込んだ。被災地の惨澹たる状況は筆舌に尽し難い。発災以来三ケ月余が経過するにも拘らず、政権の無策により、復旧・復興の目途すらつかず、被災地の方々は自力で復旧・復興作業をせざるを得ないのか、と歯噛みする思いに違いない。
深刻な原発事故を誘発した未曾有の大震災は、戦争に比すべき国家の大事である。
この大震災は、我々日本人に、国家体制の一大変革を迫っている、と考える。そのために何を為すべきか。
一、独立国家として日本国憲法体制を徹底的に見直すこと
一、安易な米欧化を峻拒すること
一、共同体・社稜の再興を図ること
大震災という戦時に比すべき試練を克服し、国家再興を図るため、前記三点を実行に移すことが必要であると考える。
加えて我々は、これまで進めてきた近代化の過誤を真撃に直視し、これを剔抉(てっけつ)せねばならない。
近代化の過程で、犠牲を強いてきた東北地方の飛躍的発展を図ることも、国家再興の方途の重要な要素である。
今、我が国は亡国の渕に立たされている。かつて、明治天皇に直訴した政治家田中正造の言葉を噛み締めたい。
「亡国に至るを知らざれば、これ即ち亡国」
東北の犠牲の上に築かれた日本の近代化
今回の東日本大震災は、宮城、岩手、福島の東北三県を直撃し、死者・行方不明者は二万人余、今も八千人余が避難生活を余儀なくされている。東北地方はかつて「白河以北一山百文」と呼ばれ、経済発展の将外に置かれ、光が当らなぬ日陰の存在として、今日まで呻吟し続けてきた。
東北地方に適切な国家資本を投入し、インフラを確実に整備しておけば、今回の惨事を最小限に食い止めることが出来たかもしれない。大震災が東北に甚大な被害をもたらしたことを、近代化への鉄鎚と受け止めるべきではないか。
先ず、日本の近代化が、東北地方の犠牲の上に築かれてきたことを検証しよう。
今回の東北地方の惨澹たる被害状況を目の当たりにし、天明・天保大飢饉の際の惨状を思い起こさざるを得ない。
江戸後期の天明三年、東北各藩で大飢饉による餓死者が相次いだ。津軽藩では餓死者は男四万六八八二人、女三万四八二〇人に上り、南部藩では餓死・病死者合計六万四六九〇人、仙台藩では餓死者四〇万人に上ったという。
天明の大飢饉は明らかに人災である。儒学者細井平州を招き、藩政改革を積極果敢に進めた上杉鷹山の米沢藩は、この飢饉に際して、一人たりとも餓死者を出さなかったことが、それを証明している。
天明大飢饉のほぼ半世紀後の天保年間、またも東北で大飢饉が起き、津軽領内では餓死者四万五千人余を数えた。飢饉の影響は江戸、大阪にも及び、流民が放浪し、各地で百姓一揆や打壊しが頻発した。大阪で陽明学者大塩平八郎が死を覚悟して救民を訴え顔起したのは、この時である。
明治維新以後も、東北地方の苦悩は続く。東北各藩は餓軍・朝敵として維新後も徹底的に差別を受け続けた。
官軍を自称した薩長両藩は、賊軍とされた幕府・奥羽列藩同盟との戊辰戦争に勝利し、明治維新政府の権力を独占した。薩長は軍・官僚を一手に掌握し、富国強兵のスローガンの下、日本の近代化を推し進めた。軍・官界で出世するのは薩長に限られ、賊藩たる東北出身者は如何に優秀であっても薩長出身者の下僚に置かれ、政策決定権を与えられることはなかった。薩長藩閥政権は、東北地方から資本・人材を徹底的に搾り取り、意のままに駆使し続けた。
近代化は対外戦争の勝利によって、加速度を増した。日清・日露戦役に始まり、大東亜戦争に至るまで、東北・北海道の農家から徴兵された屈強な若者が精強な兵隊に鍛え上げられ、戦地に送り込まれ、多くの若者が屍を戦地に晒した。
農業の担い手を失った東北・北海道地方の農村共同体・社稜はその後、徐々に解体の道を辿ることになる。
しかも、東北地方には維新以後、国家による大規模な社会資本整備は殆ど行われず、昭和初期の大恐慌時に東北地方を襲った大凶作に農民は草根木皮を食べて飢えを凌ぐ状態が続いた。多数の餓死者すら出した。
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