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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記
【第28回】 2011年7月14日 議員OBの生活が第一?
納税者に負担を押し付けた地方議員年金廃止のまやかし
大震災以降、日本社会は未曾有の難局に直面している。地震、津波に原発事故、さらには政治の機能不全が加速して危機的な状況が続いている。日常生活を根底から揺さぶる重大な出来事が連日のように発生し、社会全体が心休まる時を喪失してしまった感さえある。まさに非常事態の常態化である。明日への不安を抱かざるを得ないやり切れない日々が続く。こうした異常な状況がある現象をもたらせている。通常時ならば、大きく取り上げられるような出来事が、震災と原発危機という大二ュースの陰に隠れてしまうことだ。致し方ない面もあるが、世の関心が集まらず、内心、ホットしている人達もいるはずだ。そのひとつが、地方議員の年金廃止問題である。
議員特権の象徴的な存在として批判の的となったのが、在職12年(3期)で受給資格を得られる地方議員限定の年金制度だ。議員の掛け金が6割で、残り4割が公費負担(自治体の負担金)となっている。つまり、税金の投入である。「地方議員が在職中に安心して議員活動に専念するためにも退職後の生活の安定を支える制度が不可欠」と1961年に議員立法され、地方議員OBへの手厚い給付が始まった。
こうした地方議員年金を廃止する法案(地方公務員等共済組合法の改正案)が5月20日、可決、成立した。といっても、議員特権を撤廃する目的からではなく、制度の維持そのものが困難となったからだ。掛け金を支払う議員数が市町村合併により激減し、年金財政が急速に悪化した。
もともとアンバランスだった負担と受給の関係が大きく崩れ、破綻の危機にあった。全国の都道府県議と市町村議の数は今年3月末時点で、3万5565人。掛け金を支払う現職議員の総数である。これに対し、年金受給者の議員OBは9万3518人にのぼる。市町村議の積立金は11年度にも枯渇する見込みで、制度を廃止せざるを得ない状況に立ち至っていた。
次のページ>> 受給資格を持つ現職議員に示された2つの選択肢
廃止法案は3月11日に閣議決定された。東日本大震災が発生した日である。4月1日に改正法案が国会に提出され、統一地方選後の4月30日に衆議院が全会一致で可決。参議院も5月20日に全会一致で可決し、成立した。改正法は6月1日から施行となり、地方議員年金制度は半世紀に及ぶ歴史に幕を閉じたのだ。
しかし、議員年金廃止で問題が解決した訳ではなかった。制度の改廃に関する国会論議は日本中が大混乱を続けている真っ最中になされた。そうした事情もあって、改正法の中身について詳しい報道がなされたとはとても言い難かった。「廃止」とのワンフレーズがメディアなどで踊ったこともあり、その内容を誤解している方もいるのではないか。
改正法は4つの柱からなる。ひとつは、年金を受給している議員OBに対して支給を継続させること。給付をカットせず、これまでと同額の年金を支給するというものだ。ただし、年金額が200万円を超える場合は、超過額の1割分を引き下げることにした。また、高額所得者への減額措置を設け、年金額と所得(住民税の課税総所得金額べース)の合計が700万円を超えた場合、超過額の5割分を給付カットするとした。いずれもきわめて限定的な措置で、給付水準の原則カットは行わず、議員OBに痛みを強いることを避けた。
2つめは、受給資格を持つ現職議員に2つの選択肢を示したことだ。これまで支払った掛け金総額(特別掛け金も含む)の8割を一時金として受け取るか、廃止前の水準で将来、年金を受け取るかの2つの道を提示した。対象となる現職議員がいずれを選ぶかは予想できる。算盤勘定が勝るはずだ。
3つめが、受給資格をもたない現職議員へのメニューである。これまで支払ってきた掛け金総額の8割を一時金として、議員退職時に返金するというものだ。一時金の割合について国は当初、64%案を提示したが、ここでも議員の要望を優先し、80%に譲歩した。
次のページ>> 負担額が5倍以上に膨らんだという自治体も少なくない
4つ目の柱が、廃止後は議員の掛け金支払いがなくなり、公費のみで年金給付を続けることになる点だ。受給対象者がいなくなるまで公費負担は継続する。国(総務省)の試算では約60年かかるという。現職の受給資格者全員が一時金を選択した場合、公費負担の総額は約1兆1400億円にのぼり、年金を選択した場合は約1兆3600億円になると国は試算している。制度の廃止により、公費負担がなくなるというものではなかった。それでも制度を存続されるよりも公費負担は少なくてすむというのが、国の言い分だ。
結局、議員年金廃止といっても受給しているOB議員の年金額がカットされたり、受給資格を持つ現職議員の将来の年金額がカットされるというものではなかった。受給資格を持たない現職議員だけが、これまで支払ってきた掛け金総額の2割カットに泣く程度の話である。年金廃止というよりも、むしろ、新たな受給資格者をつくらず、自然減を待つものだ。掛け金廃止と自治体の負担増がセットとなっているのが、改正法のポイントだ。
地方議員は6月から議員年金の掛け金の引き落としがなくなり、手取り額が大幅に増えた。市町村議の場合、毎月の掛け金は標準報酬月額に負担率(16%)を掛けた額で、相当な額になっていた。これに対し、市町村側の公費負担率はこれまで16.5%。議員の標準報酬月額と議員総数、それに12を掛けたものが年間負担金総額となる。年金制度廃止により、市町村側の負担率は16.5%から一気に102.9%にまで跳ね上がった(都道府県は10%から56.1%に)。さらに、事務費負担金が議員1人あたり1万3000円(町村は1万5000円)かかり、自治体側の負担額は激増した。これまでの5倍以上に膨らんだという自治体も少なくない。
それでも国は制度の廃止により、長期的には自治体側の負担は少なくなると説明するが、どうにも腑に落ちない。あくまでも、議員年金制度に何ら手を付けずに存続された場合と比べての話である。給付カットなど公費負担を減らすための努力を行ったとは思えない。公費負担というが、それは納税者が納めた税金にほかならない。地方議員OBや現職への配慮を優先し、彼らに痛みを強いることを避けたとしか思えない。やはり、民主党政権は「議員OBの生活が第一」と考えているのだろうか。
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