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田中角栄はアメリカの陰謀で失脚した?
http://news.livedoor.com/article/detail/5697656/
2011年07月10日02時30分 小さな政府を語ろう
陰謀論と言われると何を思い出すでしょう。フリーメイスンやユダヤが世界支配を企んでいるといったものもありますが、昔は何でもCIAの陰謀のせいにすることが一つのジョークのタネのようになっていました。ところが最近は右派の側から陰謀論が語られることが多くなってきています。
その中に、満州事変のきっかけとなった張作霖の暗殺は関東軍の河本大佐の仕業ではなく、KGBによりソ連の陰謀だったというものがあります。陰謀説のネタは戦後アメリカが解析した膨大なソ連の暗号文書にそのような記述があったということなのですが(詳しくは「ヴェノナ文書」) 、陰謀論を展開する人が言いたいのは「満州事変は日本主導ではなくソ連の陰謀で導かれたものだ」ということでしょう。
その中に、満州事変のきっかけとなった張作霖の暗殺は関東軍の河本大佐の仕業ではなく、KGBによりソ連の陰謀だったというものがあります。陰謀説のネタは戦後アメリカが解析した膨大なソ連の暗号文書にそのような記述があったということなのですが(詳しくは「ヴェノナ文書」) 、陰謀論を展開する人が言いたいのは「満州事変は日本主導ではなくソ連の陰謀で導かれたものだ」ということでしょう。
同じようによく引き合いに出されるのは「ルーズベルトは日本海軍の真珠湾攻撃を知っていたが、アメリカを開戦に導くために見て見ぬ振りをした」というのもあります。これも「日本ははめられて開戦に追い込まれた」というものです。
この論理のおかしいのは、日本がアメリカに不意打ちを食らわせようとしたという事実は、ルーズベルトが知っていたかどうかには関係ないということです。アメリカが日本に中国からの即時撤兵要求や、石油の禁輸という圧力を連発し、袋小路に追い込まれた日本が開戦に及んだというのは確かでしょうが、だからと言ってルーズベルトが太平洋艦隊の戦艦を全滅させるのを指をくわえて見ていたと考えるのも無理があります。
陰謀を「ひそかに企む計画」定義すると、外交や軍事作戦のほとんどは陰謀と言えます。ですから、この世の中に陰謀など存在しないとか、公開された情報以外の物を使った推察をしてはいけないなどと言うのは間違いです。
日本が行った陰謀の例では、明石元次郎が日露戦争を勝利に導かせるために現在の400億円にも相当する予算を与えられて、欧州全土の反ロシア勢力に資金を提供した工作活動が有名です。明石の諜報活動は満州の20万人の軍隊にも匹敵するとドイツ皇帝から称えられたと言われているほどです。
その明石の工作活を陰謀と呼ぶことはもちろん可能なのですが、日露戦争で双方が様々な諜報、工作活動が行っているのは当たり前ですし、その時の資金がロシア革命の助けになったとしても歴史上の認識が大きく変わることはありません。歴史上の認識が変わるとすると「レーニンはその時以来日本のスパイとなっていて、レーニンが死ぬまでソ連は日本の強い影響下にあった」といった、陰謀説が従来の歴史観を覆すような形で登場することです。
陰謀というものはそもそも隠し事ですから、検証は簡単ではありません。当事者は陰謀があっても「そんなものはない」と言うのが普通です。逆に言えば証拠が何もなくても「このような陰謀があったと仮定すれば、うまく説明がつく」程度の根拠で陰謀論を展開することができます。
最近の右派の側から日本が第二次世界大戦に至った理由に陰謀説が何度も語られるのは、「日本は侵略的な国家であり周到な計画の下にアジアでの覇権を獲得しようして戦争を引き起こした」という「自虐史観」を否定するためでしょう。
しかし、一つや二つの陰謀で国家を戦争に突き進ませることはできません。歴史に「もし」は禁物ですが、張作霖が爆殺されなくても日本の満州への侵攻と中国との戦争は必然だったと考えるのが普通です。陰謀論の真偽と歴史の流れは別の話です。
むしろ陰謀論としては昔から左翼陣営の言っていたアメリカ陰謀の方が歴史の流れを変える力があったと思われます。アメリカはCIAを通じ自由民主党に資金を供給してきたというのは、ほとんど歴史的事実と考えられるからです。日米安保条約を国内の強い反対を押して強行採決した岸首相は「CIAのエージェント」と看做されていました(CIAの虚像と実像)。
このような背景を考えると田中角栄がロッキード社からの献金問題で逮捕されたのはアメリカの陰謀だった、という推察はそれほど的外れのものとは言えません。
田中は独自の日中外交を展開しようとしてアメリカ政府の強い不快感を引き起こしていたのですが、上院公聴会で追求されていたロッキード社の海外での献金問題で、突如田中が収賄側として名前が出たのです。
もっとも田中角栄はロッキード事件に先立つ2年前の1974年、立花隆が文芸春秋に書いた「田中角栄研究〜その金脈と人脈」をきっかけとした政治とカネの問題で首相を辞任していています。アメリカ政府がそこまで手間暇かけてさらなる追い落としを図る意味があるのかといった疑問もあります。
しかし、田中角栄がアメリカ発の不正資金疑惑で逮捕されたという事実は、アメリカがその気になれば日本の元首相を逮捕させることも可能だという証明になったことは確かです。日本とアメリカは政財界だけでなくあらゆるレベルで密接に結びついていて、アメリカが日本をコントロールするために何かしようと企てれば、パイプはいくらでもあるのです。
アメリカ政府は巨大な組織で一枚岩とは程遠く、陰謀があるとしてもCIAが全てを取り仕切っているわけではないでしょう。ロッキード事件ではCIAのエージェントと目されていた児玉誉士夫が捜査の対象になるなど、CIA人脈的にはむしろマイナスの事件でした。
田中角栄を陥れようという陰謀がアメリカにあったとしても大統領やキッシンジャーが直に命令を下したというより、日本に様々な利権やパイプを持つアメリカが全体として自主外交を企てた田中を追い詰めたと考えた方が実態に近いのではないかと思われます。
鳩山首相が最後は辞任に追い込まれた普天間基地の移設問題も、経緯の中に外務官僚や防衛官僚が従来の関係をぶち壊しにするような「少なくとも県外」の意向に巧妙なサボタージュをしたことが交渉の頓挫の原因とも言われています。そうだとすれば、鳩山首相の退陣は日米の官僚を中心とした組織全体の陰謀作業ということになります。
一つの陰謀が歴史の流れを大きく変えたり従来の歴史認識を一変させるということはほとんどあり得ません。検証も証明もできない事柄を摘まみだして「これが本当なら今までの解釈は根本的に改めなければならない」などという言い方は歴史が巨大な組織と人間の集合体が作っていくという事実を無視したものです。
逆に、表向きの政府の見解や広く報道されている事実だけをもとに物事を見るのは危険でしょう。何を言おうとアメリカは自国の国益のために日本を利用したいし、そのためにはあらゆる力を利用するだろうという当然の推測をすれば、過去の日本の首相の就任や退陣、自民党の長期政権の裏にアメリカがあったと考えないのは思考の怠慢とさえ言えます。
当然ですが組織で陰謀を行うのはアメリカの専売特許ではありません。中国や韓国、ロシアが日本を自国の利益のために様々な裏の手口を使うといは当たり前です。前に述べたように、外交とか軍事は大部分が陰謀そのものなのです。
付け加えるとフリーメイソンやイルミナティのような秘密結社(フリーメイソンは秘密結社でも何でもありませんが)を陰謀の総本山のように考えるのは、善玉悪玉の歴史観と同様愚かしいことです。歴史の流れを陰に隠れた組織が密かに操ることなどできません。世界は陰謀に満ち溢れていますが、どんな陰謀も策略も歴史の中では大海の一滴ほどの意味を持つことはできないのです。
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