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◎「脱原発謝恩大解散」など不可能だ
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/2011-07-11
2011-07-11 07:28 永田町幹竹割り
政局の分析・予想は生き馬の目を抜く。いかに早くその局面分析の妥当性を見破るかが勝負となる。筆者はまともな報道では先頭を切って首相・菅直人による「脱原発解散」の可能性に警鐘を鳴らしたが、今度はダントツで「脱原発解散などまずあり得ない」と分析しておこう。どうしてもやるというなら「ツルの恩返し」ならぬ「菅の恩返し解散」となる。自民党には2年前の敵失総選挙で圧勝させていただいてお世話になったから、お礼に解散して圧勝していただき恩返しをしようというものだ。名付ければ「脱原発解散大謝恩セール」だ。
テレビ東京の「田勢康弘の週刊ニュース新書」は知性があっていい番組だ。みのもんたのしゃべくり低俗番組とは同じニュース番組でも格段の差がある。しかし9日はいただけなかった。田勢が「菅さんは何が何でも脱原発で解散する腹を固めたとしか思えない」と断言したのだ。いささか状況判断が遅れているのではないかと思ったが、案の定ゲストの公明党代表・山口那津男にぴしゃりと否定され、ぐうの音も出なかった。山口は「脱原発解散と言っても国民は将来の原発依存は無理があり、再生可能エネルギーを伸ばして代替エネルギーにしたいというコンセンサスが出来ている。それをどう達成するかが議論の中心であり、解散の争点にすることには無理がある」と指摘したのだ。過去2週間にわたり筆者が指摘してきたとおりの分析だ。
しかし、菅側近は自分が落選するのも知らずに、いまだに「脱原発解散だ〜〜!」と言って駆け回っている。河野太郎の9日の発言によると「菅さん側近は『脱解散で選挙やれとみんなで進言している。9月11日が投票日だ』と豪語している」という。地元でポスターを貼り「8月解散、9月衆院選投開票」の日程を流布している側近もいる。しかし「側近」のリークも筆者が取り上げた6月20日頃は「さすがにいいことを考えた」と思ったものだが、現時点では“オオカミ少年”の悪あがきとしか思えない。なぜなら「脱原発」という絶好のテーマを早々と打ち出した結果、野党が警戒して「脱原発反対」「原発推進」などと言わなくなってしまったからだ。10日のNHKの討論番組では全野党が表現の多様性はあるが「脱原発・入自然エネルギー」だった。側近は利口なようで甘いのだ。世論は脱原発派と原発推進派の2つに割れることなどあり得なくなった。
危険なエネルギー源である原発を将来完全制御できる技術が生まれれば別だが、現状ではもはや原発は過渡期のエネルギー源でしかあり得ない。再生エネルギーを活用出来るまでのつなぎであり、その意味で世論は一致している。総選挙用の対立軸ではなくなったのだ。加えて脱原発は先の話だ。ドイツのメルケル政権が打ち出した「脱原発」ですら2022年末までに全廃する話しだ。政界有数の論客武村正義が「“減原発”には国民世論の9割が賛成。30年かけて“卒原発”にもって行けばよい」と述べているとおりであろう。脱原発への周期は政治的に見れば気が遠くなるほど先の話だ。これは途中の技術革新や政治情勢でいくらでも変わりうることも意味する。
それでも菅が解散をやるというなら勝手にやればよいが、まもなく菅はもっと絶望的な状況に陥る。先に指摘したとおり、現在20%そこそこの内閣支持率が、復興相辞任劇と「ストレステスト」をめぐる閣内迷走で10%台に落ち込むことは避けられない。前兆は出ている。既にフジテレビの調査では内閣支持率16.4%、民主党支持率10.0%だ。10%台での「破れかぶれ解散」をすればどうなるか。ただでさえ総選挙をすれば自公が逆転する芽が出ているのに、これが確定する。麻生内閣は支持率16.3%(時事調査)で解散して、政権を手放した。小泉の郵政シングルイシュウ解散の際には小泉支持率は39.9%あった。菅が小泉のまねをして脱原発に絞ったシングルイシュウ解散をやろうとしても、支持率までまねできないから無理だというのだ。
従って現段階での解散断行は、争点が「脱原発」でなく、思惑とは逆に「菅民主党政権の是非」に絞られることが確定的なのだ。そこを読めない側近も側近だし、菅の愚かさの原点でもある。だから冒頭逆説で述べたように、自民党に「謝恩解散」をするなら別だ。野党はありがたく受けて立つべきだ。「脱原発解散」は、菅が見たはかない「真夏の夜の夢」に過ぎない。解散を脅しに使ってきた菅自身も8日の衆院本会議で「国民の意思に基づいて将来のエネルギーのあり方が決められることは好ましいとは思うが、このことで私が信を問うとか問わないとか、そういうことは一切考えていない」とトーンダウンした。まだ油断は出来ないが置かれた立場をひしひしと感じ始めたようだ。
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