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反射鏡:「旧社会党病」が政界に蔓延している=論説副委員長・与良正男
http://mainichi.jp/select/opinion/hansya/
毎日新聞 2011年7月10日 東京朝刊
最近、よく思い出す光景がある。もう20年以上前、1990年のことだ。
当時の社会党衆院議員が一堂に会する代議士会で、執行部がある方針を決めたと報告した。するとベテラン議員が手を挙げて、こうまくし立てた。
「反対、反対。だいたい、そんな方針を決めたなんて私は聞いていない。私は地元で一生懸命、活動していたのに」
やじが飛んだ。
「そんなこと何の自慢にもなんねえぞ」
きちんと党の手続きを踏まえて決めた方針で、既に報道もされていた。それを「聞いていない」と言い放つ。実はこのベテランも方針が覆らないのは承知のうえだっただろう。要するに「私は反対した」という証拠を残したかっただけなのだ。
ちなみにやじの主は、この年2月の衆院選で初当選し、党改革を訴える若手グループのリーダー格だった仙谷由人氏(現民主党代表代行)だったと記憶する。確かに自慢にならないと私もあきれて見ていた。
社会党そのものが政権を取る気もなく、政府・自民党を批判してさえいればいいと考えていた時代だ。こんな話は日常茶飯事だった。
以来、私はこうした無責任体質を「(旧)社会党病」と呼んできた。そして今、この病が今度は政界全体に蔓延(まんえん)しているように思えるのだ。
例えば政府が全原発を対象に安全性を点検するストレステスト(耐性試験)の実施を決めた一件だ。6月18日、海江田万里経済産業相が定期検査などで停止中の原発の再稼働に「安全宣言」を出した直後は菅直人首相も「私も全く同じ」と同調していたが、その後、首相は一転、待ったをかけたという。
テスト実施は当然で、まっとうな判断であり、もっと早期に決めればよかったと思う。だが、私が驚くのは、海江田氏が再稼働を急いだ一連の経過に対して、首相が当初、「私は聞いていない」といわんばかりの態度を示したことだ。その後、混乱を招いた点を陳謝したとはいえ、そこに無責任さ=「社会党病」を感じないわけにはいかない。
テストには時間がかかるため、これまた首相の延命策だという人も多い。だが、都合の悪い話は他人に責任を押しつける首相を見ていると「自分の在任中に再稼働させたくないだけではないか」とさえ思えてくる。
「10年代半ばまでに消費税率を10%まで引き上げる」とした政府・与党の税と社会保障の一体改革案は、もっと無責任だ。一応の結論は出したが、すぐさま民主党議員からは「私は反対」の声が相次いでいる。
96年秋、発足直後の旧民主党は「必要な負担は国民にはっきり求め、責任ある福祉政策を確立する」と訴えていた。そこには旧社会党的な体質と決別する意志があったはずだが、原点を忘れているというほかない。
自民党も同じだ。昨夏の参院選でいち早く消費税増税を掲げ、「責任野党」をアピールしていたのだから、自民党が議論をリードしたらいいと思うが、「民主党は引き上げ方針の閣議決定もできないから信じられない」と、あれこれ理由をつけ与野党協議に応じない。自民党内には「国民の批判を招く増税は民主党政権の時に決めさせた方がいい」との声まであるそうだ。
万年与党と万年野党の55年体制から、ようやく政権交代の時代になった。どの政党もいつ与党になるか、野党になるか分からない。だから、お互い妥協もしながら政策の実現に責任を持つようになる。それが政権交代の効用だと思ってきた。
旧社会党のように原理・原則を唱え続けるより、国民から批判されても、必要と考えれば、その政策を実現しようとする方がどれだけ苦しいことか。さすがに「野党の方が気楽でいい」という政党はなくなってきたが、与野党ともその苦しさから逃げているのではなかろうか。
与党も野党も大多数のメディアも今、「菅首相は早く辞めろ」一色だ。この非常時、政局にかまけている場合ではないとずっと批判してきた私も、もはや菅政権には限界を感じる。だが、菅首相が交代すれば政治が大きく変わると考えるのは幻想だ。「菅首相が居座るから進まない」というのも肝心なことを決められない弁明でしかない。
一体、誰のための政治か。すべての国会議員が責任を自覚しない限りは新首相が誕生しても、すぐさま足の引っ張り合いを始めるだけだろう。私は「菅首相後」の政治についても、かなり悲観的になっている。
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