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【安藤慶太が斬る】菅首相こそ「運転停止」と「ストレステスト」が必要ではないか
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110709/trd11070912010011-n1.htm
2011.7.9 12:00 産経新聞
松本龍震災復興担当相の辞任劇を見ていて、呆れた国民は多かったと思う。大臣があれほど明け透けに威張った物言いで人の心をふみにじる光景を久々に見た。見るに堪えられない光景だった。
でも松本氏も松本氏だが、菅直人首相もひどい。これでは「運転停止」すべきなのは民主党政権だろう。差し当たって緊急停止と「ストレステスト」が必要なのは菅氏だろう。わが国を壊し、産業や国民生活をつぶす気なのか。国政をめぐるこんな体たらく、初めて見た。憂慮すべき光景だが、彼はそう思ってないのかもしれない。怖いよ。とてもまともな神経だとは思えん。
国対委員長の安住淳氏然り、海江田万里経産相然りである。次々に身内から公然と批判が出る始末で、政権内から「やっとられん!」コールである。
そりゃそうである。原発再稼働にストレステストが必要ならそれなりの手順と段取りが必要でしょうが!というのがまずひとつ。海江田氏だって、玄海町長や佐賀県知事と交渉を積み重ねてきた末、安全宣言もやって、ストレステストは必要ないといって何とかまとめたのである。夏の電力不足を前に何とか国民生活を混乱に陥れないようにと、今まさに何とか地元の同意を得ようとお願いしていたのである。
地元から見れば海江田氏が「大丈夫だ」と安全宣言しても額面通り受け止めているわけではなかったに違いない。「本当に安全なのか」である。たたけば、ほこりだって出てくる。内心、文句のひとつやふたつだってあったに違いない。しかし、国のこと、国民生活のことを思えば、政府の言っていることを真摯(しんし)に聞かざるを得ない面だってあるわけで、だからこそ地域をまとめ、議会をまとめ、何とか菅首相との協議という段取りまでこぎつけたのである。苦渋の選択ってもんである。
それを突然、菅首相の思いつきで政府の方針が転換されて「新しい安全基準」がぶちあげられたのである。「ストレステストが必要です」なんて言われれば、そりゃみんな怒るわ。TV入りの国会での堂々たるはしご外し。法律もルールも何もあったもんじゃない。
みんなの労苦を顧みない唐突なちゃぶ台返しである。「だったら最初に言えよ」である。積み上げられた信頼関係は水の泡だ。不快感のみが残るというものであって「じゃあこれからの電力需給をどうするの」という不安や疑問には「あとは野となれ山となれ」。いつもの無責任である。
■反旗を翻した海江田氏
7日の参院予算委での磯崎陽輔氏の質問だ。
磯崎「もうわけのわからん総理はいいですよ。海江田さんに聞きたい。あなたがんばってやっていたと思うよ。でも貴方がやったことを、こうぽんぽんぽんぽんひっくり返されたら大臣やってても仕方ないでしょう。貴方、佐賀県の人に対してどういう責任を取るんですか。よく平気でストレステストをやれますなんて言えますね。佐賀県の人に対して腹斬るべきではないですか」
海江田「…ん…いずれです。いずれ時期が来ましたら、それは私も責任を取ります」
「いずれ時期が来たら辞める」は菅首相の発言を彷彿(ほうふつ)とさせる物言いで正直、好きではないが、そこは今とがめない。海江田氏の表情、顔つきを見る限り菅首相に翻弄され、辟易(へきえき)させられ、頭に来ているのは地元だけでなく俺もだ、という思いが伝わってくる答弁だった。
少なくともこんな首相のもとで仕事をやっていたら、嘘つきの烙印(らくいん)を押され、世の中の信用などなくしてしまう。首がいくつあっても足りない。私は一体、何だったのでしょうか、という思いだろう。玄海町にも、佐賀県にもとても会わす顔がないし、菅首相は一体全体、国民生活のことをどうするつもりだろうという思いに駆られたに違いない。
■組織を知らない菅氏
「菅政権のもとで官僚はやる気を失っている」という話はこれまで散々耳にしてきた。今回の騒動を見ていて改めて納得した。確かに、これでは一緒に仕事などできない。
菅氏の考えを咀嚼(そしゃく)して、何としても首相を支えなければという人間だって少なくなっていくのもうなずける話だ。細野豪志氏だって、枝野幸男官房長官だって、いつ自分が「第二の海江田万里」になるか、わからない。実際、みんなバラバラに動いているようにしか見えない。チームプレーなしである。
もっとも、この手の思いつきでむちゃくちゃな大混乱に陥れてきたのはこれが初めてではない。浜岡原発だって然りだし、諫早湾の上告断念だって然りである。あたれば薬害エイズの隠蔽資料のように国民の拍手喝采を浴びるが、当たりはこれだけだと思う。選挙期間中に突然ぶちあげた消費税話もそうだし、批判を浴びたら、修正を図ってまた批判を浴びる。朝鮮学校の高校無償化の手続停止にも似たようなところがあった。
民主党政権発足直後の八ツ場ダム騒動も普天間騒動にも通じる。TPPもどうなったんだろう。CO2の25%削減もどこに行ったんだ。子ども手当の満額支給も…と何から何までポピュリズム政治のつまみ食いによる残骸があちこちに転がっている。とりわけ突出して菅氏がひどいだけであって、これが民主党政権発足以来、毎日のように続いているということだ。
■何だよこの発言
「私の顔を見たくなかったらこの法案を通せ」
菅氏のこの物言いは特にひどい。もはや一国の総理のたたずまいなどみじんも感じられないからである。
自分の蒔いた種で人を怒らせておいて「俺に従え。さもないと、君のかねてからの希望である辞任はしてあげないからな」といっているに等しい。さすがに味方であるはずの民主党執行部もドン引きというものだ。安住国対委員長が怒るのも無理はない。野党の協力など得られるはずがないではないか。
自民党、公明党との協力関係を作るためにはそれなりの手順と駆け引き、それに一定の信頼関係の構築が必要でそのために安住氏だって尽くしていたわけだろう。そうした人たちの労苦をこれほど何ら顧みない仕打ちを繰り返すと、とても一緒に仕事などできない。
そのうち菅氏は「俺が辞めるといっているのに辞めさせてくれない」と言い出すかも知れぬ。同族企業のオーナー、ワンマン経営者ならいざ知らず、わが国の首相をめぐって、かくも醜い光景があっただろうか。
何をやりたいかという夢物語はもう何度も聞いた。もう飽き飽きしている。菅首相が何をやりたいか、やりたくないかはこのさい二の次である。とにかくまず解決しなければならないことが今の日本には沢山ある。内閣改造だって、もうウンザリである。この手の国民の目線を反らすような技巧を国民は見抜いているはずだと思うのだ。
■誰も暴走を止められぬ
ともかく、閣僚から公然とこういう発言が出てくること自体、今まで見たことがない異常な光景である。異常なのに、それはとがめもされず、処分もされず、といって、意思疎通を図るわけでもなく、結局はきっとうやむやにして異常だとは認識せずに時間だけが流れていくのだろう。
今の菅氏は日本にとって臨界に達して暴走を始めた増殖炉みたいに手がつけられない存在である。このままどこへわが国を導く気か。規律ある政権運営など期待できるはずもないし、籠城に近い戦術で、政権の体を成していない状態が続いている。まともな仕事ができるとは思えないし、いずれ、彼にはみじめに終わるしか道がないと悟るときが、必ず訪れるに違いない。問題はそれまで、菅氏の暴走を誰も止められないという民主党の面々も情けないということである。
(安藤慶太・社会部編集委員)
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