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◎政権もはや統治不能の崩壊過程に
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2011-07-06 07:27 永田町幹竹割り
新聞には「四面楚歌」とか「貧すれば鈍する」といった“かったるい”表現が並んでいるが、筆者はとっくに使ってしまった。今をいうなら「断末魔」が正しい。息を引き取る間際に、タコのような軟体動物がのたうち回っている姿が首相・菅直人だ。一時は「脱原発解散」構想で眼(まなこ)をぎらつがせていたが、「松本辞任」でその勢いも失せる方向だ。政権を支える堤防はあちこちに穴が開いて水が噴き出し、八本の足で埋めても埋まらない。まさに野垂れ死に政権そのものの惨めな姿だ。
そして全ての原因が本人の粘着質の性格に起因する。「川筋もん」気質の松本龍のように潔く辞められない。後任人事の迷走ぶりも、もはや憐れをとどめた。囲まれている状況が読めずに「菅退陣」を申し合わせた「6人組」に白羽の矢を立てようとしたが、2人にまで断られた。逆に6人組は“結束”ぶりを誇示した。菅がいかに情報に疎い「裸の王様」かの左証がその官房副長官・仙谷由人への打診だ。仙谷は松本と社会党の同期当選組で仲がよい。4日の夜電話して、「国会の状況も厳しい。追い込まれるより早くやめた方がいい」と説得したといわれる。松本も説得に応じる意向を示した。その経緯の後で5日朝急きょ菅にとっては寝耳に水の辞任となったのだ。
仙谷は4日夜の段階でとっくに菅がお鉢を自分に回してくるとの予感があり、断って追い詰めようという戦略を立てていたのだろう。仙谷は自分が断れば菅は国会対策委員長・安住淳を打診すると判断、安住に「受けるな」と根回しをした可能性がある。結局2人が断り、唯一のサポーター国民新党代表・亀井静香にも打診したが、さすがの亀井も、すねまで水が来ている泥舟には乗らなかった。またしても最重要ポストがたらい回しの末、2戦級の内閣府副大臣・平野達男に回ってしまったのだ。 仙谷の根回しを見れば、松本の暴言そのものが<ひょっとして政権つぶしの刺客かな>(朝日川柳)という“自爆テロ”説があってもおかしくないが、政治はそれほど手の込んだ舞台回しは出来ない。邪推に過ぎない。
かくして菅は進退窮まったが、問題はどこまでのたうち回れるかだ。「世論調査がどう動くか」と、見方をはっきりさせなかった政界風見鶏の渡部恒三が、「国民、被災地のためにも一分でも一秒でも早く辞めてもらいたい」と遅ればせながら退陣の主張を始めた。執行部内からも極めつけの発言が出された。安住が「本当に情けない内閣だ。党として支える価値があるのか、率直に怒りを感じる。支えきれなくなったら民主党政権は崩壊する。菅さんの配慮は全く無い」と批判したのだ。政権内部から自らの政権が崩壊するという予言が出てきたのは初めてだ。自民党など野党顔負けの厳しい反応だ。
となると菅が再生エネルギー買い取り法案で粘りに粘って8月末まで生き延びようとしていた戦略が大きく狂い始めたことになる。菅が「脱原発」で解散をもくろんだものの、野党は警戒して必ずしも「脱原発」の主張に正面切って反対しなくなった。将来の脱原発が可能ならそれに越したことはないという立場になりつつある。逆に再生可能エネルギーの必要性も強調するようになって、争点にしようがないのだ。
折良く6日と7日に予算委集中審議があり、自民党はここで幹事長・石原伸晃、政調会長・石破茂がギリギリと退陣時期の明示を迫ることになる。自民党にとっても菅の居座りに手詰まり感があるだけに必死だろう。好材料が山積しているこの千載一遇の機会を逃せば8月末まで政権は続く。ルーピー鳩山の発言など聞きたくもないが、初めて聞くに足ることを言った。「辞めると言った首相の下で外交も内政も対応できなくなっている。一日長く続ければ国益がそれだけ損なわれる。ここまできた以上、首相が冷静に判断すべきだ」。菅の存在そのものが、復旧・復興を遅らせているのだ。心あらば、いい加減にこのポイントに気付いてほしいものである。
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