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国会が延長になったが、菅総理の居座りや自民党から一本釣りもあって先週は実質審議は行われず、凪のような状態だった。
今国会での懸案は、第二次補正予算、特例公債法、再生エネルギー特措法である。これらが菅総理の退陣の「メド」だからだ。
第二次補正予算は予算規模も少額で、与野党間で大きな争点もない。本来であれば、大型補正を組むべきであったが、結局菅総理の延命の道具になってしまった。
例えば、被災者その他で30万人として、1ヵ月ひとり100万円を3ヵ月間支給するという政策があってもいい。9000億円でできる施策だが、今の与野党でそうした声は聞こえない。
リーマンショックの時に効果がないといわれていた定額給付金12000円をばらまいたが、今回は被災者に限って行うので定額給付金よりましだろう。また、これは、今の状態が事実上生活保護になるとみなして支給すれば、立派なベーシックインカムになるので、政策論としても筋の悪いモノでない。
特例公債法は、自民党が民主党マニフェストの子ども手当見直しを言っており、ちょっと微妙だ。これが民主党政権運営のアキレス腱になっているので、自民党もそう簡単に手放そうとしない。
特例公債法が成立しないと、当初は直ちに予算執行ができなくなるといわれていたが、実際にはそうでない。つなぎ資金の政府短期証券は20兆円発行でき、そのほかにも国債整理基金で10兆円ほど余裕資金がある。それだけで、11月くらいまでには資金繰りがつく。この際、ぎりぎりまで特例公債法の成立を伸ばして、国庫内余裕資金を発掘するというのも国民には悪くない手だ。
北欧4カ国の電力自由化に見習え
再生エネルギー特措法について再生エネルギーの方向はいい。しかし、この法案は大震災前に用意されたものだ。もっといえば麻生政権の時に議論され、一部は余剰電力買い上げということで制度化された。
これまで、経産省はなんちゃって「電力の自由化」しかやってこなかった。電力の地域独占を直して本当の電力の自由化をしないと、再生エネルギーの買取では電力料金だけが高くなる。
これは経済学のイロハであるが、それを知らなくても北欧4カ国の電力自由化の実例さえ知っていれば、政策を考えることができる。
北欧4カ国の電力自由化における電力の自由化は、1991年ノルウェーでエネルギー法、1996年スウェーデンで新電気法、同時にノルウェーとスウェーデンで電力市場統合、共同の電力スポット市場(Nord Pool)開設、1998年 フィンランド、1997年デンマーク西部地域、2000年にデンマーク東部地域がNord Pool に加入という経緯だ。
北欧4カ国の電力産業構造は、@多数の発電事業者、A送電会社の設立、B多数の地方公営配電事業者に特徴がある。つまり、発送電分離と電力料金自由化だ。その結果、電力本体料金は需給を反映する自由価格、送配電料金は規制価格となって、電力本体料金と送配電料金(それに税金)の合計を電力消費者が支払っている。
ここでポイントは、発送電分離だ。だから、再生エネルギーの買取では、発送電の分離を組み込むことが必要になる。ここで、東電問題がピンチをチャンスに変える。しかし、今の賠償法案では、賠償のために東電を温存するので、5兆円の送電網は賠償期間中は事実上売却できない。となると、当分の間送発電分離はできなくなってしまう。
2000年の独禁法改正で、すでに電力の自然独占に関する独禁法適用除外規定は削除されている。今東電を解体すれば、賠償の国民負担が減るだけでなく、電力自由化も進めるチャンスだ。
せっかく延長された国会なので、熟議を尽し法案を修正すれば、災い転じて福となすこともできる。
なぜ歳入庁をつくらないのか
国会外に目を転じると、先週、民主党内で税と社会保障一体改革がもめた。滑った転んだの末、政府・与党は6月30日、社会保障と税の一体改革を協議する政府・与党社会保障改革検討本部(本部長・菅直人首相)で「2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げる」ことを決定した。ただし、この案は閣議決定されずに7月1日の閣議報告だ。
民主党内でデフレ下での消費税引き上げに反対する「常識的な」意見が多く、とりまとめにかなり難航した上での結論だった。
菅政権の郵政課題はコロコロ変わるが、増税路線だけはしっかりしている。消費税引き上げで与野党協議が行われようとしているが、自民党も内容としては消費税増税なので、本来はウェルカムのはずだ。
社会保障のための消費税増税というと、多くが納得するようであるが、セオリーは違う。
人口規模が大きく地方分権が必要な先進国では、消費税は地方の基幹税だ。社会保障の目的税になっている国はまずない。社会保障は、所得再分配を行うので消費税をその財源にするのは適当でなく、所得比例保険料が普通だ。その上、給付と負担を明確化するために、社会保障では社会保険方式のほうが望ましい(少なくとも、わざわざ社会保険方式から税方式に移行しない)。これらの点から、そもそも論としては消費税を社会保障財源とするのはセオリーとして出てこない。
こうした理論上の話以外にも、増税の前にやるべきことがある。浅尾慶一郎衆院議員(みんなの党)が2月28日衆議院予算委員会で指摘した法人の情報把握不備のために社会保険料の未徴収、いわば「消えた保険料」が12兆円もあることだ。
社会保障の国庫負担は、社会保険料で足りないところを補うものだ。もし12兆円も消えた保険料があるならば、これは消費税5%分に相当し、消費税率を5%から10%へ引き上げなくてもいいことになる。
社会保険の徴収がかなり杜撰であるのは、消えた年金で既にわかっている。この消えた保険料のための最善策は、国税庁と年金機構(旧社保庁)の徴収部門の合体、いわゆる歳入庁構想だ。ところが、政府の検討では、「歳入庁の創設の検討」が脚注に一回だけ登場するにとどまり、まったく及び腰だ。
世界のほとんど国で、社会保険料は税金と同じ扱いで、social security taxと呼ばれる。もちろん社会保険料の徴収と税の徴収は同じ機関だ。1998年に同じ機関になった英国の場合、二つの機関の統合で人員の整理合理化になるとともに、社会保険番号を納税番号として利用できるのも大きなメリットになっている。
日本の場合、比較的やりやすく実効性の高い、このような納税環境の整備を後回しにして、消費税増税に前のめりなのは理解できない。こうした増税の前にやるべきことがあり、それなしでは必要な増税額も計算できず、増税に説得力がでてこない。
ギリシャ並の国有資産売却と民営化なら210兆円以上
増税の前にやるべきことといえば、世界で定番メニューは、資産売却・民営化だ。
6月29日の米国版ウォールストリートジャーナル1面で「ギリシャが迫られる壮大な民営化」という記事があった。
同国の財政再建計画では民営化や国有資産売却が盛り込まれているという。2015年までに債務残高の15%になる500億ユーロの売却だ。その中には、国営郵便局、水道会社、電力とガスの民営化・株式売却もあり、使われていない空港、古いオリンピック会場、ギリシャが誇る美しい海沿いの土地など国有資産の売却もある。
ギリシャでの国有資産の売却規模は、日本で考えると150兆円の売却に相当する。天下り先になっている特殊法人などを全廃、民営化すると210兆円以上になる。日本が財政危機であるというなら、そのくらいのことを増税の前に行うべきであろう。
こうした資産売却、民営化は、財政再建のためというより資源を民間に委ねるので長期的に日本経済のためになる。
ところが、民主党政権は、郵政民営化や政策金融機関の民営化の揺り戻しがある。資産はもうないから増税をお願いするのであればわかるが、天下り先を温存しながらの増税は国民の理解を得られない。
[高橋洋一「ニュースの深層」]2011.07.04
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/10955
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