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ここまでくると、もうあれこれ書くことはあるまい、とも思った。菅直人という人物の批評はメディアにあふれている。こういう首相をよりによって非常事態下に持つことになった不幸は、世間のだれもがすでに、感じていることだ。
とはいえ、権力維持に異常な妄執を示す菅さんに、政治が振り回される危機的状況が続いているからには、何か書かないわけにはいかない。
六月十九日、日曜日の夜から菅首相と岡田克也幹事長ら民主党執行部との大詰めの会談が断続的に続いたが、二十一日朝の会談には〈菅降ろし〉の中心人物、仙谷由人代表代行(官房副長官)の姿はなかったという。前日夜の会談で、菅さんから、
「おれを追い落とそうとしているのかっ!」と面罵されたからだった。仙谷さんは周囲に、
「ふっ、ナントカに刃物だな」と漏らした、と二十二日付の『産経新聞』朝刊が伝えている。
鳩山由紀夫前首相の「ペテン師」呼ばわりに続いて「ナントカ」である。鳩山さんや仙谷さんを責める気にはなれない。そんな品の悪い言葉を、激した感情のなかで口をついて出さざるをえないところに、菅さんのほうが追い込んだのだ。
「あの人、多重人格者じゃないの」と民主党幹事が思いあまったようにつぶやいた、という話を耳にした。菅さんをどう分析すればいいか、みんなが戸惑っている。多重人格者というのは、相互に矛盾した複数の人格傾向を持ち合わせた人のことらしいが、そう言われれば、菅さんは唐突にいろいろな顔を見せてきた。とりあえず、三つの人格傾向が読み取れる。
まず、あらゆるマヌーバリング(権謀術策)を駆使する粘液質の現実主義者だ。厚相としてエイズを告発した時はこれがよく作用し、勲章にもなったが、一転、政権存続のためには〈辞任のフリ〉も平気でやってしまう。
第二に、権力に強烈な憧れを抱く、やはり粘液質の野心家。初の所信表明演説では、
「私の政治活動は、今を遡ること三十年余り、参議院議員に立候補した市川房枝先生の応援から始まりました。市民運動を母体とした選挙運動で、私は事務局長を務めました。……」
と市民運動を売りものにしておきながら、一年後の先日の国会答弁では、「市民運動家と言われるのは好きでない」
と述べている。首相という最高権力者の地位に就いたのだから、いまさら市民運動家でもあるまい、迷惑だ、と言わんばかりだった。
また、菅さんは東京選出の若手革新派リーダーとして人気が出てくると、ある時期、東京都知事という首都権力を執拗に狙ったことがあった。だが、その道がひらけないとあっさり捨て、大政党の党首、首相と野望をひろげていったのだ。
◇政治記者半世紀で知る首相ポストの恐ろしさ
そして、第三は、「おれがやらないと、だれもできない」と本気で信じている、類いまれな自信屋だ。いまは都合よく、この自信屋が前面に出ている。綱引きの最終場面で、菅さんは再生可能エネルギー買い取り法案を唐突に持ち出して成立に異常なこだわりを見せ、野党も民主党内も、
「延命狙いだ」と猛反発した。しかし、多分、本人は意に介していない。エネルギー政策はおれの手でなければ、と使命感をたぎらせ、一段と自信を深めている。これで歴史に名を残す、ぐらいに思っているかもしれない。
現実主義者、野望家、自信屋とそれぞれ異質の独立した人格傾向が共存し、時に応じて便宜的に入れ替わる。それに幻惑されて、思わず「ナントカ」などと口走っても不思議ではないのだ。
ところで、首相に就任時、市民運動ともう一つ、
「私は、山口県宇部市に生まれ、高校生の時、企業の技術者だった父の転勤で東京に移りました。……」(所信表明)
などと異例の出生地紹介までして、長州出身をPRした。〈奇兵隊内閣〉と自身で性格づけ、就任一週間後には宇部入りして、昔の同窓生と交歓したりした。菅さん以外で、そんな露骨なパフォーマンスをやった首相はいない。人格傾向の四番目に人気取りに執着するポピュリスト(大衆迎合主義者)を加えるべきだろう。
ところが、山口県の二井関成知事は、「菅さんは山口にゆかりのある政治家ではあるが、山口が育てた政治家ではない」
と述べたそうだ。まったくそのとおりで、当選十回の選挙地盤は東京だから、長州政治家と言われても、山口は困るだろう。
しかし、好きな人物も、菅さんは長州の高杉晋作と児玉源太郎をあげている。長男に源太郎と命名したほどだ。高杉はご承知のとおり、児玉は日露戦争の満州軍総参謀長を務め、大国ロシアを倒した功労者である。
ひょっとして、いまの菅さんは、倒幕や対ロシア戦に一命を賭した高杉、児玉と同じような位置に自分を置き、高揚しているのかもしれない。そうだとすれば、退陣を求める与野党の面々は、行く手を阻む敵に映っている。かつて、菅さんが鳩山さんに、
「支持率が一%になっても辞めない」と言った(あと修正)のは本音だった? そこまで想像をふくらませると、こちらの頭がヘンになる。
首相というポストは恐ろしい、ということを政治記者稼業半世紀にして知らされることになった。首相の進退騒動には何度となくめぐり合ったが、退陣表明したあと、なおも粘ったケースは一度もない。しかし、粘ろうと思えばかなり粘れるのが首相ポストなのである。
政治家が好んで使う〈無信不立〉(信なくば立たず)も、菅さんに言わせれば、信頼しないほうがおかしいとなるらしい。この首相、正常さを失いかけている。
<今週のひと言>諸外国に、こんなジャパンがどう映るのだろうか。(サンデー毎日)
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