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「菅が辞めないなら俺が辞める」という大見得はどこに 「他力本願クーデター」失敗に見る民主党政治の本質
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/9886
2011年06月24日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」:現代ビジネス
与野党を巻き込んだ「菅降ろし」が完全な失敗に終わった。
先週のコラムで「このままなら2011年度2次補正どころか、秋から本格化する12年度予算編成さえも菅の手に委ねかねない展開である」と書いたが、まさにそうなりつつある。
仙谷由人官房副長官や岡田克也幹事長らは「虚脱感にひたっている」などと報じられているが、これくらい見事に失敗すれば、そうなるのも当然だ。彼らは菅降ろし失敗の責任を問われこそすれ、しばらくは党内でも身動きできないだろう。
それどころか、菅が近く断行するとみられる内閣改造、党執行部人事で更迭される可能性もある。政権の中枢にいながら「首相退陣のクーデターを画策した」と批判されても仕方がないからだ。
少なくとも、国民新党の亀井静香代表は菅に大幅改造を進言するに違いない。
■亀井静香が復興担当相に?
もしも小沢一郎元代表のグループが党を追い出される一方、仙谷らの菅降ろしクーデターが成功し、自民党との大連立が出来ていたら、亀井が率いる国民新党は与党内で一挙に発言力を失い、下手をすれば連立与党から野党に転じる可能性もあった。
亀井が心底から菅を支持しているとは到底、思えないが「敵の敵は味方」である。仙谷らが政権運営の主導権奪取に失敗したからには、亀井とすれば、ここは菅を支えて影響力強化を狙うはずだ。
辛くも生き延びたとはいえ、政権内で本気で菅を支え続けようと思っている人間はほとんどいない。そういう状況は小政党を率いる亀井にとって、存在感を高める絶好のチャンスなのだ。
亀井を長年、よく知っている自民党の実力者が私に語った。
「亀ちゃんは情に厚く『義』に生きる政治家だ。人に『オレを助けてくれ』と頼まれて、見捨てるような男じゃない。いい悪いじゃなく、そんなことは絶対にしない。そういう場面は何度も見てきた。菅はきっと亀井さんに助けを求めたんだろう。それで亀井さんは菅を助けてやる気持ちになったんだ、と思うよ」
「おそらく亀井は復興担当相に就くんじゃないか。そういう仕事は彼に適任だね。自民党でも閣僚をやって、霞が関も知ってるし腕力もある。いまの民主党は人材がいないからなあ。復興担当相に細野豪志? とても無理だろう」
「ただ、亀ちゃんが助けてやる気持ちになったとしても、問題は菅のほうだな。菅は人に恩義を感じるようなところがまったくない。事情が変われば、後で平気で裏切るかもしれない」
■菅に直談判した亀井静香
亀井は今回の退陣騒ぎの重要局面で決定的な役割を果たしている。
新党日本の田中康夫代表によれば、小沢に加えて鳩山由紀夫元首相が内閣不信任案に賛成する立場を表明して、菅が断崖絶壁に追い込まれた6月2日午前、亀井は菅と直談判して退陣への段取りをつけた。亀井はこう言ったという。
「断腸の思いで総理に申し上げる。あなたは退陣表明をすべきだ。だが、やり残したこともあるだろう。だから、まずは辞めるとはっきり言う。そのうえで『しかし、やり残したことがあるから、これこれの始末だけは私にやらせてくれ』と言えばいい。そうすれば、きっと、みんな総理の決断を重く受け止めてくれるはずだ」
すると、菅はこう受けたという。
「お話は分かりました。ただ、どう話すかは私に任せてほしい」
一般的には、菅と鳩山の会談で「玉虫色の退陣表明」が決まったと思われているが、実はその直前にあった菅・亀井会談で大きな流れが出来ていたのである。
ところが、菅は亀井の話の根幹部分をひっくり返した。
菅は「大震災そして原発事故に対して一定のめどがつくまで、ぜひとも私に責任を果たさせてほしい。そして一定のめどがついた段階で若い世代に責任を引き継いでいく」と語ったのだ。
亀井はまず「辞任」を先に言って、次に「やり残したこと」を語れと言ったのに、菅は順番を逆にした。「やり残した震災と原発対応を私にやらせて」と言い、次に「その後、めどがついたら辞める」とにおわせたのだ。
これで何が違うのかといえば、まず「オレは切腹する」と言ったかどうかの違いである。亀井は義の政治家だから、まず「切腹する」と言えば「最後にあれをやらせてくれ」と言っても人は聞く耳を持つと考えた。ところが、菅は「最後にあれをやらせてくれたら、オレは切腹してもいい」と示唆したにすぎない。
似たようなものだと思われるかもしれないが、政治家が「どう腹を決めるのか」という観点で考えれば、ここは天と地の違いである。
いずれにせよ、そんな亀井が今回、一転して菅を助ける側に回った。それは小沢の造反に期待した「他力本願クーデター」のような企てに手を貸すわけにはいかないと考えたからだろう。国民新党の生き残り戦略であると同時に、そういう政治行動は亀井の性に合わないのだ。
■本当に辞めたのはただ一人
亀井と対照的だったのは、岡田や仙谷たちである。
とくに岡田は「玉虫色の退陣表明」があった直後、鳩山が苦労してまとめた2次補正成立の退陣条件について「鳩山元首相が述べた2次補正予算と復興基本法案の成立は辞任の条件ではない」と記者団に語っている。
当初はあきらかに菅の擁護に回っていたのに、途中から一転して、仙谷たちと歩調をそろえて菅降ろしに舵を切った。小沢と鳩山が主導した菅降ろしには反対しておきながら、それが失敗と分かると、菅降ろしに加担し始めたのである。
いったい岡田は菅を支えたかったのか、降ろしたかったのか。肝心の腰が定まっていないから、菅に足元を読まれてしまったのも当然である。
仙谷は岡田よりも巧妙だった。最初から菅降ろしの立場ははっきりしていたが、表面的にはクーデターに動かず、小沢の造反に期待した。それが失敗と分かってから、前面に出ざるをえなくなった。
岡田にせよ仙谷にせよ小沢と違って、内閣不信任案には反対している。本音はどうあれ政治行動としては、はっきりと菅政権支持の投票をしておきながら、後になって政権を倒そうとした。ここが根本的に矛盾している。
内閣不信任案の採決に先立って、岡田や仙谷が総理に表立って辞任を求めた場面はただの一度もない。仙谷は舞台裏で倒閣・大連立樹立を画策しながら、表舞台では内閣を支持した。本来、菅政権を支える立場と承知しながら、それゆえに「断腸の思い」で総理に自発的辞任を迫った亀井とは大きな違いである。
こういうところに、民主党生え抜きの政治家と自民党出身の政治家の違いが出ている。「謀略政治」と「義の政治」の違いとでも言ったらいいだろうか。間違えてほしくないが、私は亀井流の「義の政治」がすばらしいと言っているのではない。観察者として「スタイルの違い」を指摘したいだけだ。
さて各紙で報じられたところによれば、岡田に仙谷、さらに玄葉光一郎国家戦略相兼党政調会長、野田佳彦財務相、安住淳国対委員長らは菅が退陣しなければ、役職を辞任する意向を示唆してきた。
菅の居直りがはっきりしたいま、彼らはどうするのだろうか。虚脱感にひたるのは勝手だが、政治家として発言にはけじめをつけてもらわなくてはならない。
なかには、第三者を介した得意の「オフレコ発言」として伝わっている場合もあるので「オレはそんなことは言ってない」と言う向きもあるかもしれない。まあ、菅を追い込む作戦の一つだったのだろう。
しかし、国民を甘く見ないほうがいい。鳩山といい菅といい、それから岡田たちといい、民主党政治家がどれもこれも「辞めるのやめた」の連発では、あきれるのも当然だ。本当に辞めたのは、松野頼久議院運営委員会理事ただ1人である。これではやがて、だれも相手にしなくなる。
(文中敬称略)
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