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2011年 06月 23日
進行形の「日本再占領」に日本の統治機構はどのように臨むべきか。
(写真:笠浩史ブログから)
アルルの男・ヒロシです。
先日まで三日間の日程で、アメリカからリチャード・アーミテージ元国務副長官を団長とする米戦略国際問題研究所(CSIS)の対日調査団(ファクトファインディング・ミッション)が来日していた。彼らは民主党と自民党の超党派議連との夕食会に出席している。参加した自民党の河野太郎のブログには米国側の参加者の名前がある。
(引用開始)
アメリカのCSISがリチャード・アーミテージ元国務副長官をヘッドにした視察団を日本に派遣した。視察団は、政府や与野党の幹部と面会したが、このままでは日本の問題は政治だという結論に達しそうだと心配した関係者が、急遽、次世代の政治家とも意見交換を、と民自連の世話人に声をかけ、意見交換の夕食会が実現した。
先方のメンバーは
リチャード・アーミテージ元国務副長官
ティム・アダムス元財務次官
ジョセフ・ブース ルイジアナ州立大学災害マネジメント研究所
マイケル・グリーン ジョージタウン大学准教授
チャールズ・レイク アフラック会長
ランディ・マーティン マーシーコープス ディレクター
スティーブ・モリソンCSIS国際医療政策センター所長
ティエリー・ポルテ日米友好基金理事長
デビッド・パンフリー元エネルギー省次官補(CSIS)
スタンリー・ロス元国務次官補(Boeing)
ロビン・サコダ アーミテージインターナショナル
ニコラス・セーチェーニ CSIS(日本部)
油木清明 CSIS/経団連
http://www.taro.org/2011/06/post-1034.php
(引用終わり)
アーミテージ、CSIS日本部長のグリーン、米商工会議所を代表するチャールズ・レイク、新生銀行頭取だったティエリ・ポルテ(三極委員会)、ロビン・サコダ(アーミテージ・インターナショナル)らは、私にはおなじみの顔ぶれである。ボーイングからも一人スタンレー・ロスが参加しているのも興味深い。アメリカは自社の飛行機開発に三菱重工などの日本のメーカーを取り込んだので、今回のサプライチェーン危機に直面した。そのためボーイングが参加しているのだろう。
安全保障・危機管理の専門であるアーミテージ、グリーン、セーチェーニだけではなく、財務次官や米商工会議所の人間が加わっていることが重要である。アメリカは日本の財政問題に関心を持っている、ということだ。そして米国は財政赤字が著しいので、日本にどの程度まで増税させるかということを調査しにきたようである。財務官僚との非公式の会合ももたれたのではないか。
レイクは郵政民営化の時にも米財界ロビイスト代表として政界工作を仕掛けた人物。レイクが含まれているということはこのCSIS調査団は、米国が進める太平洋経済圏戦略のTPP(環太平洋戦略パーナーシップ協定)の地固めという意味である。
最後の油木清明(あぶらききよあき)については、経歴を調べてみた。現職は、(社)日本経済団体連合会 政治グループ長であり、米マサチューセッツ工科大学(MIT)日本研究所リサーチフェローである。要するに、油木は経団連の代理人であると同時に、MITのリチャード・サミュエルズ教授の部下であるということだ。サミュエルズは日本の安全保障の専門家であり、同時にシミュレーションを使った日本の政治家たちの意思決定に関する教育プログラムを実施している。
カウンターパートとしての民自連のメンバーは以下のとおり。正式名称は「国難対処のために行動する『民主・自民』中堅若手議員連合」という。略して民自連である。
菅義偉(自) 樽床伸二(民) 河野太郎(自) 岩屋毅(自)松野頼久(民)梶山弘志(自)長島昭久(民) 笠浩史(民)北神圭朗(民) 平将明(自)
この会合の模様は民主党の小沢グループともいわれる笠浩史議員のブログに写真で掲載されていた。
米国は世界秩序の主導権を握るために台頭する中国を太平洋の真ん中まで進出させないという意図を持ち、東南アジアの各国と連携し、ソフトな中国の封じ込めを行っている。エドウィン・ライシャワーの言葉を借りれば、これは「堰き止め戦略」ということである。アメリカは小沢一郎などが指摘するように、米国の国家戦略としてTPPなどの経済“戦略”連携協定を打ち出している。
アメリカは2002年以来、アメリカの単独覇権に挑戦する国を封じ込めるという国防戦略を取っており、中国に対してもそれは適用される。折しも、CSIS調査団が来日中に米国・ワシントンでは、「2+2」の外交・防衛のトップ会合が開催されており、きわめて重大な意味を持つであろう共同宣言が採択されている。
この中でも中国に対しては「責任ある大国」への移行を促すとしつつも、海上航行の自由などの懸念を示す形で、米国の進めてきた「グローバル・コモンズ」の世界ビジョンと、中国の「接近拒否戦略・核心的利益」のビジョンと対決する姿勢を示しつつある。ランドパワーの中国とシーパワーのアメリカの世界観の衝突は、20世紀初頭の帝国ドイツとイギリスのそれの対立にも似ている。
TPPは国益をかけるという意味あいを含む「戦略」協定なのである。だから、正しくは略称を「TPSP」とすべきである。戦略の語が日本では抜けて落ちているのは報道する側の意図だろう。
『日本再占領』という本を私は準備している。現在、序章から始まり、第3章に突入している。基本的にブログやツイッターに発表したさまざまな仮説とその検証が主体となる。この本のテーマは「日本における統治能力の欠如」である。官僚主導体制でこれまでやってきた日本。民主党政権が誕生することで官僚機構のサボタージュが発生した。小沢一郎が『日本改造計画』などで発表した、イギリス型の議会制の導入というビジョンが、律令国家体制を護持していた藤原不比等以来の霞が関の律令官僚に対する恐るべき脅威だったからである。小沢・鳩山サイドの稚拙な戦術の問題もあり、官僚を支援したマスコミの問題もあり、結局、政治主導をめざした小沢一郎の制度革命は頓挫している。小沢自身も、制度革命家というよりは自己の生き残りを重視する「パワー・ブローカー型」の政治家の側面がチラチラ見えるようになった。献金スキャンダルで打撃を受けたのだと思う。
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Policy Entrepreneurship and Elections in Japan: A Political Biogaphy of Ozawa Ichirō (Nissan Institu
Takashi Oka / Routledge
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小沢一郎は制度革命を目指したとし、「政治的起業者(ポリティカル・アントレプレナー)」だとする論文がある。著者は新進党時代に小沢一郎の側近であった元米紙記者の岡孝(おかたかし)である。一般の合理的選択論のアプローチでは政治家の合理性は「選挙に勝ち残ること=サバイバル」であったり「内閣総理大臣になること」であったりすると想定される。ところが、岡は09年の政権交代までの小沢一郎の政治的軌跡を検証しながら、小沢の目的は制度革命といった政策目的(=パブリック・インタレスト)にあり、普通の政治家のような生き残りのための合理的選択だけが小沢の原動力であったわけではない、との仮設を提示し、帰納法的に立証している。
私は合理的選択論者だから、岡の主張には多少異論がある。岡のいう「制度改革」が小沢に取っての合理性であり、その制度改革を目指す近代主義者としての小沢は、合理的選択として選挙制度改革、政権交代を目指したという話である。岡孝の息子は槇原稔の娘と結婚しており、小沢の新進党時代までの対米人脈の要だったと思われる。
そもそも小沢の国連中心主義は、米国では90年代の半ばころにネオコン派(第二世代)が台頭してくるまでは、「平和の配当」論として人気があった。ところが、ご存知のようにネオコンはブッシュ前政権に代表される、「単独覇権主義」の志向を見せている。このことは孫崎享の『日米同盟の正体』に詳述されていることから引き出せる議論である。アメリカのリベラル派もネオコンの議論に引きずられて、やや右傾化しており、民主帝国主義者ともいうべき介入主義に傾斜していった。
小沢の世界観はそのようなものであり、これは鳩山由紀夫の唱えた「東アジア共同体」とも、前原誠司の唱える「日米同盟の深化」路線とも大きく異なる。前者は、クーデンホフ・カレルギー伯の提唱したパン・ヨーロッパ運動が源流にあり、祖父・鳩山一郎の所属していたフリーメーソンの世界観、カントの世界観であり、前原のそれはネオコンのそれである。小沢の世界観は90年代の物からの変貌はない。平野貞夫などの影響からか、むしろ「国内固有価値」を重視する傾向も最近では見られる。小沢はそのように、自覚的に近代と前近代の合間を縫うようにして生きてきた政治家である。日本にこのような政治家は小沢一人しかいない。
♢ ♢ ♢
私の考えでは日本占領が冷戦期に続いていた。それは敗戦時1945年に始まり、1990年の湾岸戦争で終わっている。1951年以降も日本はアメリカに基地を提供することで安保体制の傘下に入り、防衛を米国に委ねるという「幸福な占領期」を経験した。これは憲法9条を利用してきた、宰相射・吉田茂の叡智が成し得たことである。
もう一つ占領期の特徴としては、アメリカの対ソ情報戦略に見られたように、アメリカの文化面での影響力(ソフト・パワー)が大きかった。だが、現在の再占領においては、アメリカの文化的な影響力はそれほど強くない。アメリカ映画が世論を形成する能力はもうないのだ。
アメリカが日本を再占領する決断を下したのは、それがアメリカの太平洋戦略の要である国内数カ所の米軍基地の安全性を日本の統治機構が保証し得ないということを、福島第一原発の事故の発生によって米統治機構側が気付いたからである。だから横須賀の第7艦隊の寄港地に影響を与える浜岡原発を呈するように菅政権は指令を受け、実行したのである。日本人はアメリカの原子力技術に盲信するだけの「猿たち」であるとアメリカは見抜いていた。危険性をリスクで判断せず、安全神話で片付けてきた日本のやり方は極めてリスクが高いのでこれを矯正しなければならぬ、とアメリカは判断したのである。
したがって、アメリカはTPP推進に見えるように、米国の輸出倍増を目的にした経済協力を日本に受け入れさせるように強く要求してくる。今のCSIS調査団はTPPの調査もしている。TPP一時延期はアメリカの目的にも叶うのである。政局続きで日本政治が統治能力を失ったと判断したアメリカは冷戦時のように財界と官僚機構を利用することにしたようである。財界総理として経団連の米倉会長がCSISと会合している。
要するに、アメリカは日本に対して「使える同盟国」であることを求める。日米同盟はその対象範囲を世界に設定した。アメリカの意図は意図として、日本は危機管理のプロであるアメリカの軍隊などから学べることも多いはずだ。アメリカは地方自治体の防災訓練への米軍の参加を求めている。ウィキリークスの公電の中で、シーファー駐日大使が日本の原発のテロに対する脆弱性をかなり懸念する箇所がある。シーファーは日本の訓練がシナリオにそっただけの茶番であるとしている。一理ある。
そういう意味で日本はアメリカの占領を「学習期間」としてうまく活用すべきである。アメリカだけではなくイギリスの議会制に学ぶとした小沢一郎のような見識も民主党でも自民党でもいいので発揮してもらいたい。アメリカが何時までも日本に軍隊を駐留し続けるわけではない。嫌な占領国であっても、そのガバナンスの能力から学ぶべきことは非常に多い。そのように割りきって占領する米国の当局者と付き合う。つまり、TPPなど日本の国益にとって合理性のないものは自らの判断で参加を見送るべきである、ということだ。
アメリカから見れば日本はただの周辺国である。ただ、米軍の世界戦略に死活的に重要な基地を提供されている。それが横須賀・嘉手納・佐世保・横田である。それ以外は日本は「軽度の破綻国家」になりつつある。イラクやアフガニスタンのように、シビル・ソサエティが存在しないわけではないが、中央集権的官僚による支配がある。(アフガンはカルザイ体制による中央集権がうまくいかず分裂気味だ)
これは欧米近代国家のガナバンスからすれば異質なのであり、日本はやはり日本異質論者のいうような国家である。日本は官僚機構があるがそれに対抗する政治家や市民社会が弱い。(写真下:それぞれアフガン警察を訓練する米軍とトモダチ作戦)
今まではアジェンダは常に上(アメリカ)から降ってきた。日本が米国と対等の立場で交渉したいのであれば、もっと賢くなる必要がある。
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