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ニュース・コメンタリー (2011年06月18日)
コンピュータ監視法で捜査当局が得た権限と懸念
解説:指宿信氏(成城大学法学部教授)
憲法で保障された通信の秘密を侵害する恐れがあるとして、日弁連などが懸念を表明していた「コンピュータ監視法案」が、17日、社民、共産を除く与野党の賛成多数によって参議院で可決・成立した。7月から施行される。
この法律の正式名称は「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」で、サイバー犯罪防止条約を批准するために必要な法律であるとして法務省が推進してきたもの。この法律の成立により、警察などの捜査当局が、裁判所の令状を得ないまま、通信事業者に対し、メールなどの通信履歴の保全を要請することが可能になるほか、現行法では罪に問うことができなかったコンピュータウイルスの作成や取得に、罰金刑を科すことも可能になる。
法案を推進してきた法務省はサイバー犯罪の抑制効果を強調するが、捜査機関が令状を得ずに通信記録の保全要請ができるようになることで、憲法で保障されている通信の秘密が侵害される恐れが生じるほか、ウイルスを作成していないか調べるために個人のPCが警察などに監視されるなどの懸念が広がり、日弁連が懸念を表明してきた他、主にネット上で反対の声があがっていた。
こうした懸念に対し法務省は、「PCの差し押さえや通信履歴の入手には、これまで通り裁判官の令状が必要であり、監視を可能とするような特別な捜査手法が導入されるわけではない」と説明している。
しかし、刑事訴訟法に詳しい成城大学の指宿信教授は、今回の法改正にはいくつかの懸念点があると言う。
まず、令状無しで要請できるのは、60日間の通信記録の保全までで、実際の差し押さえにはこれまで通り令状が必要になるというが、令状を得ない捜査は後から確認ができないため、常に濫用の危険がつきまとう。仮に保全要請の後、実際に差し押さえが行われ、 データを取られた後で、捜査機関がその事件を起訴しなかった場合、通信記録を取られた本人は、自分の通信記録の保全が要請されていたことを知ることができない。要するに、捜査当局としては、保全要請までであれば後から発覚しないため、やりたい放題できるということになる。
指宿氏は、盗聴法で盗聴には必ず令状が必要なため、仮に事件が不起訴となっても、捜査対象となった個人は自分の通話が盗聴されていた事実を後から知ることができることを引き合いに出し、たとえ保全要請とはいえ、令状無しの捜査権限の拡大は問題があると指摘する。
指宿氏はまた、今回の法改正によって、コピーされた電子データが証拠として認められるようになる点にも、コピーの具体的な方法などが定められていないため、拡大解釈の余地があり、懸念が残ると言う。これまで電子データのコピーは証拠として認められていなかったため、コンピュータのデータを差し押さえるためには、パソコン本体やハードディスクそのものを押収する必要があった。今回の法改正で、例えば現場でハードディスクをコピーすることで証拠の差し押さえが可能となるが、法律の条文に明確なコピー方法などが定められていないため、ハードディスク上のすべてのデータをコピーすることが許されるのかなどが、今後問題になる可能性が大きい。
更に、指宿氏はリモート・アクセスの問題を指摘する。この法律は、差し押さえの対象となったパソコンがオンラインで別のパソコンやネットワークに接続されている場合、接続先のパソコンからもデータを差し押さえることを認めている。しかし、現在はクラウド・コンピューティングが主流なため、クラウド上にデータを保存しているパソコンユーザーは多い。コンピュータやネット上のデータを差し押さえる場合、押さえの対象となるデータを捜査令状に明記することが難しいため、結果的に現場の捜査官の裁量で、クラウド上の他のサーバーにまで捜査対象が拡大解釈される恐れがある。
これは例えば、グーグルのGmailを使っているユーザーのPCが差し押さえの対象となった場合、Gmailのサーバーそのものが捜査の対象となり、他のGmailユーザーのメールまでが捜査官によって読まれてしまう可能性がある。実際に読んでみなければ、それが差し押さえ対象となっているデータかどうかは判断ができないからだ。サーバーが国外にある場合などは、相手国の同意を得ずに他国にあるサーバーを捜査してしまう可能性もあるため、問題が多いと指宿氏は言う。
今週のニュース・コメンタリーでは、17日に可決・成立したコンピュータ監視法案の問題点と今後この法律の運用で注意すべき点について、神保哲生と宮台真司が指宿氏とともに議論した。
プロフィール
指宿 信いぶすき まこと
(成城大学法学部教授)1959年京都府生まれ。82年島根大学法文学部卒業。84年金沢大学大学院法学研究科修士課程修了。89年北海道大学大学院法学研究科単位取得退学。91年同法学博士。91年鹿児島大学助教授、00年同教授、02年立命館大学教授などを経て、09年より現職。著書に、『刑事手続打切り論の展開:ポスト公訴権濫用論のゆくえ』、訳書に『極刑:死刑をめぐる一法律家の思索』など。
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