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(英エコノミスト誌 2011年6月11日号)
1年前、菅直人首相が首相官邸に引っ越した時、妻の伸子さんは、政権が長続きしないかもしれないから夏服しか持ってきていないと冗談を言った。
実際には、菅首相は前任の4人より長く総理の座にとどまり、3月11日の大震災以降は第2次大戦以来最悪の災禍にあって日本の舵取りをしてきた。しかし、首相に残された時間は少ない。策士たちは今、菅内閣に代わる政権として「大連立」を模索している。
大連立は、菅首相率いる民主党に実権を奪われた旧支配層にとっては名案かもしれない。旧来勢力は、再び権力を味わうという考えを楽しんでいる。しかし、そうした人々に政権の座を与えることは、日本にとって大変な後戻りだ。
現在の政治的な混乱の責任は、菅首相を含むすべての関係者にある。地震と津波、原発事故の最中において、菅首相のリーダーシップは不安定だった。今では、菅首相も民主党も支持率は芳しくない。
政権交代に相応しいタイミングではないが・・・
首相の明らかな欠点にもかかわらず、政治空白を歓迎する者はいない。今は政権交代にふさわしいタイミングではない。しかし、菅首相は辞任を約束したため、いずれ去る運命にある。
菅首相は国会に提出された内閣不信任決議案の対応に失敗し、震災復興に向けた巨額の補正予算は、辞任と引き換えにしか成立しない。ゆえに問題は、もはや菅首相が辞めるかどうかではなく、後継政権がどうなるかに移っている。
多くの大企業や国内最大の発行部数を持つ読売新聞を含む支配者階級からは、かつて取り沙汰された大連立構想の復活を促す声が聞かれる。
国会の行き詰まりが被災地の復興に向けた法案の成立を遅らせ、予算の財源確保を危うくしており、野党・自民党の妨害戦術を民主党が回避するには、大連立しか手がないという主張だ。消費税の引き上げなど、ずっと先送りにされてきた計画が実現する可能性さえあるという。
国民を信じろ
過去の経験は、これが馬鹿げた構想であることを示唆している。2010年の参議院選挙で野党勢力が過半数を確保して以来、自民党が主導する妨害は単に改革を阻んでいるだけだ。菅首相が自民党が望むような財政再建案を共有していた時でさえ、その態度は変わらなかった。
自民党は戦術的優位に立つために国益を犠牲にした。今後も、日本の政治家が生来の習慣を急に捨てるわけがない。民主党と自民党は2人の年老いた酔っぱらいのように、互いの腕の中に倒れ込むだけの可能性が高い。
菅首相の政敵である自民党の政治家の方が日本に多くをもたらせるという発想は、国民の知性に対する侮辱だ。
自民党は政権の座にあった55年間、権力を守るために官僚や企業と癒着し、それにうんざりした有権者の手で2009年に政権から引きずり下ろされた。
規制が緩く自信過剰な原子力業界を生み出したのも、この政治体制にほかならない。その遺産が、いまだ解決していない福島の惨事だ。
自民党には政権に返り咲く資格はなく、むしろ晒しものの刑に処され、放射能で汚染された福島の野菜を投げつけられるのがふさわしい。
一方、民主党は大連立を組むより、国民の信を問うべきだ。今回の災害は多くのダメージを与えたが、同時に日本に改革のチャンスをもたらしている。これまで見過ごされがちだった地域に、奥深い共同体の精神や地域のリーダーシップ、産業の力、豊かな創造性があることが明らかになった。
原発危機により、東京電力のような力のある公益企業がもたらす悪影響を抑える必要性も明白になった。
地方分権と公益企業の改革は、恐らく大連立とは相容れない。権力闘争を当たり前のことと考える大連立推進派は、東電のような組織に政治生命を支えられてきたのだ。しかし、今の日本は、地方分権と公益企業改革の両方を必要としている。
いろいろな意味で、今は選挙をするには最悪の時期だ。避難所で暮らす人たちの中に、このような余計な動きを歓迎する人はいないだろう。実際問題として、津波で選挙に関する書類を失った市町村も複数あるはずだ。
政治改革への一歩
それでも選挙は、大きな負担になるとは限らず、逆に利益をもたらす可能性もある。津波や原発事故の被災者にとっては、選挙は自らの声を伝える機会となる。国民はエネルギー政策や地方分権について議論を交わすことができる。さらには消費税の引き上げについても、有権者が可否の判断を示せるだろう。
震災による危機をきっかけに日本の政治家には厳しい目が向けられている。既存政治への不満を表現する機会を国民に与えれば、政治変革に向けた一歩になるかもしれない。
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震災後の日本の政治:大連立か選挙か ‐ JBpress ‐
2011.06.13(Mon) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/11341
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/11341?page=2
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/11341?page=3
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