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【第178回】 2011年6月9日
■首相は出処進退に触れた途端 引き摺り下ろされるものだ
菅直人首相の退陣が濃厚になってきた。当初は内閣不信任案を回避し、そのまま逃げ切れるとみられていたが、実際は、あっという間に外堀を埋められ、早期の退陣を余儀なくされている。
第二次補正予算、復興支援基本法、さらに特例公債法案の成立、もしくは目処のついた段階での辞任を示唆しているものの、それさえも困難な情勢になっている。
就任からちょうど一年、またしても日本は新しい首相を選ばなくてはならないようだ。これによって小泉政権以降、安倍、福田、麻生、鳩山、菅と五代続けての短命内閣となることが確定した。
冷酷な永田町ではすでに「ポスト菅」の後継者選びが始まっている。
〈菅首相の辞任表明を受けて岡田、仙谷、枝野各氏や安住淳国会対策委員長らは8日までに「ポスト菅」について会談を重ねた。岡田、仙谷、枝野各氏は代表選に立候補しないことを確認したうえ、野田氏が新代表に最適任との認識で一致した。
仙谷氏らはこれを踏まえて自民、公明両党などに対し、菅首相辞任後の協力要請を始めた。首相が月内に退陣表明することを念頭に7月上旬にも代表選を行う日程も大筋合意した〉(朝日新聞/6月9日)
権力闘争における「レームダック」の意味を改めてかみ締める。首相は出処進退に触れた途端、引き摺り下ろされるのだ。
■残念ながら予想的中 「情報暗黒内閣」は何をしてきたか
この一年間、菅政権は何をしてきたのか。手前味噌だが、発足当初、菅政権は稀にみる「情報暗黒内閣」になり、国民を裏切り続けることになるだろうという筆者の予測はもっとも残念な形で的中した。
福島第一原発事故におけるうんざりするような情報隠しは、日本政府に対する国民の信頼を失墜させるに十分だった。そればかりではない。4月に行なった放射能汚染水の海洋放出と、それに絡む情報隠蔽は、世界中からの非難の的になっている。にもかかわらず、菅首相は日本が「海洋犯罪国家」になる道を選択したのだ。
海洋汚染の深刻さは、直ちに人体に影響を与えるものではないが、半永久的に人間を蝕む放射性物質として汚し続けることにある。とくに本コラムでも触れたストロンチウムによる海洋汚染は厳しい。海産物へのダメージは決定的になる。
〈文部科学省は8日、放射性ストロンチウムが東京電力福島第一原子力発電所から62キロ離れた福島市など、福島県内11カ所の土壌で新たに検出されたことを 明らかにした。放射性セシウムが検出されたところでは、微量に見つかるとされており、それが証明された形だ。放射性ストロンチウムには半減期が長いものがあって、体に入ると長期間影響を及ぼす可能性があり、監視が必要だ〉(朝日新聞/6月9日)
驚くのは、日本政府が3ヵ月経って初めて検査を行なったことだ。それまでは調査どころか、国際環境NGOのグリーンピースなどの外部調査すら拒否してきたのだ。
菅首相の「有言不実行」ぶりはこの一例をみても明らかだ。就任当初、自ら「有言実行内閣」を宣言して、胸を張っていた頃が懐かしい。結局、この一年間、言い訳のオンパレードで実行した政治の足跡を思い出すことは難しい。それは側近中の側近である枝野官房長官ですら、記者会見でこう認めざるを得ないほどだ。
「この1年で飛躍的に大きな成果を上げたかといわれれば、確かにそうなっていない部分が多いのは間違いありません」
■薬害エイズ訴訟も“錆びた勲章” 汗はかかず、手柄は自分のものに
約15年前、厚生大臣として取り組んだ薬害エイズ訴訟の「勲章」だけを掲げて、首相の座についた菅首相だが、実はそれさえも他人の手柄を奪ったものだった。
当時、原告団との交渉や血液製剤に関する調査の先頭に立っていたのは、枝野氏ら若手議員だった。大臣の地位にあった菅氏は、枝野氏らの強い要望にしぶしぶ応じる形で省内への調査指示を出している。そして、その行動に対する世間の反応がいいとみると、急遽、自ら問題解決のために先頭に立っただけなのである。
誤解なきように付け加えておこう。筆者は菅氏の決断が悪いといっているわけではない。むしろその行動自体は賞賛されてしかるべきことだ。ただ、欲をいえば、もっと正直に部下の手柄を世の中に紹介してあげてもよいのではないか、そう思うし、またそういい続けてきた。
「昔、わが党の竹下首相が、『汗は進んでかきましょう、手柄は人に譲りましょう』というのをいつも言っていた。あなたの場合はその逆だ。『手柄は自分が取りましょう、汗は他人にかかせましょう』。私はこう感じる」
党首討論の席上、自民党の谷垣禎一総裁はこう述べた。まさしく菅首相の性格を現している一語だ。
原発事故の対応に際し、情報隠蔽を繰り返して、日本の国際的な信用を毀損した首相はもはや不要だ。一日でも長くその座に留まることは、かえって日本の国益を損ねる。信頼回復のために一刻も早く、自ら退くべきだろう。
■菅首相を支えてきた「犯罪者」たちの中から 新首相が選ばれるという喜劇
同じことは、菅首相を支えてきた共犯者たちにも言える。しょせん政治は結果責任である。残念ながら閣内で菅首相を支えてきた政治家たちはみな連帯責任が発生している。
ところが、そうした「犯罪者」たちが集まって、同じ「犯罪者」たちの中から「ポスト菅」を選ぼうとしているという。なんという筋の悪い「喜劇」だろう。それは国家への反逆でもあるし、国民への最大の裏切りともなるだろう。
海洋汚染だけでも、今後、日本は莫大な国際賠償を背負わなくてはならない。その額は数十兆から、場合によっては数百兆単位になる、といくつかの国際機関からの指摘がなされている。
さらに、その上で国内の復興支援や原発事故住民への国家賠償も必要となる。
一方で、そうした予算を捻出する国力は確実に低下していくのだ。農林水産のみならず、工業製品を含め、日本の産業は放射能汚染による衰退期に入っている。
国をつぶした政治家たちになぜ国を任せようとするのか。情報隠蔽を繰り返し、自らの保身のために、国家の信頼のみならず、国民の健康まで害した菅首相。
彼と彼を支えた者たちは、将来、必ず断罪されることだろう。それは一年前、政権が発足した際に「週刊文春」誌上で指摘した「情報暗黒内閣」の言葉通りである。
菅首相は、15年前に自ら約束した、徹底した情報公開とオープンな政治の精神を思い出してほしい。そして、官房機密費を含む、すべての情報を約束どおりオープンにし、陣を退いてほしい。
それが、菅首相にできる、せめてもの政治家としての良心ではないか。
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