http://www.asyura2.com/11/senkyo114/msg/760.html
Tweet |
サンデー時評:「菅さんの不徳」と「民主党の限界」と
http://mainichi.jp/select/seiji/iwami/
サンデー毎日 2011年6月19日号
しぶとい、と言われてきたけど、そうでもなかった。
〈一定の目途〉
などとややこしい表現をしているが、菅直人首相が大震災対策に目途をつけて辞めると表明したからには、日々死に体になる。
野党提出の内閣不信任案が、民主党内の造反で可決の可能性が強まり、追い詰められた菅さんが折れた、ということだろう。自民党の大島理森副総裁は不信任案の趣旨説明で、
「目途とは何を言うのか。菅内閣ではすべて目途が立たないから、いますぐ辞めろと言っている。いやいや、渋々進退に言及するのはその場限りの延命だ」
などと悪しざまにののしった。が、内心はまあ、何とか首をとった、判定勝ち、ぐらいの気分ではないか。
今回の不信任案提出は戦後五十二回目、これまではほとんどがセレモニー的で、否決されている。ただし、吉田茂首相のもとで二回、大平正芳、宮沢喜一両首相で各一回、計四回だけは可決し、いずれも衆院が解散された。この四回は権力闘争そのもので、三人の首相の資質が問われたわけではなかった。
しかし、今回は菅さんの首相としての適性が深刻に問われ、だから与党の大量造反で可決しかけたのだった。こんなケースは多分初めてのことで、背景に政治全体の劣化がある。単純な政ではなく、首相交代を急がなければ、この国が危ういという思いつめた空気が漂っていたのだ。
では、菅さんはいつお辞めになるのか。引導を渡した鳩山由紀夫前首相は、
「そう遠くない時期、夏にはならないだろう」
とあいまいなことを言っているので、アテにならない。最長老の中曽根康弘元首相は五月初めの段階で、
〈菅政権は長期化するとの見方が出ているが、私は続いても二、三カ月くらいだろうと思う。原発の騒ぎが収まれば、政権には外交や他の内政の課題が山積していることがわかり、菅首相の政治力への不信が再び噴き出すからだ〉(五月十三日付『産経新聞』)
と予測している。となると、七月か八月、多分、当たると思われる。老風見鶏健在である。
だが、菅退場でひと息、というわけにはいかない。当コラムが、
〈菅さんは辞めてもらうしかない〉
と書いたのは一カ月半前のことで、その日が近づいたのは結構なことに違いないが、日本の首相の〈一年刻み〉がまた外国メディアの餌食になる。ポスト菅の新たな政治の仕組みを作るに当たって、首相の短命構造からどう脱出するかを、柱の一つに加えなければなるまい。
◇政権党の先は見えている 党派を超えて同志糾合だ
ところで、内閣不信任案が提出されたのが六月一日で、前日の三十一日、衆院東日本大震災復興特別委員会では激しい応酬があった。やはり自民党の大島さんが新劇役者よろしくこう大見得を切ったのだ。
「あなたが首相になって選挙に勝ったことがありますか。信任を得られないあなたが、この危機を乗り越えるのは無理なんだっ!」
菅民主党は各種選挙で連戦連敗、無残な選挙結果が続いている。この民主不信の流れはおいそれと変わりそうにない。勝利は皆無かというと、五月二十二日投開票の千葉県議選浦安市選挙区(定数二)で、民主党公認候補がみんなの党を抑え、自民党につぐ二位で当選を果たしたケースがあるくらいだ。
それはともかく、この時の菅さんの答弁である。
「私の態度が理解されず、自分の延命だけを考えていると思われているとすれば、私の不徳の致すところです」
「言い訳はもうよい。あなたには真心も誠意もない」
と大島さんがにべもなく切り捨てた。
このやりとりを聞いて、私は奇妙な感じに襲われた。菅さんは面罵慣れして、どんな言葉を投げられても不感症になっているかのようだ。それだけでなく、大島さんは延命批判をしているわけでもないのに、先回りして謝る。ことに大震災以後、
「申し訳ない」
を何度口にしたことか。いとも軽々しく陳謝する。〈不徳〉という、職を辞する時、最後に使うような言葉まで、釈明調に平気で使う。不徳は背徳、人としての道にそむくことだ。菅さんが首相になってから、言葉への信頼感が極端に低下した。これも政治危機の一つである。
大島さんは不信任案の趣旨説明でも、さっそく引きとって、
「徳なきあなたは……」
を連発した。情けない風景だ。
今後、民主党内ではポスト菅の争いが日々活発になっていく。それは当然のことで、政権党として次のリーダーを決めなければならない。だが、その人物が次期首相に就任することで一件落着としていいのだろうか。
民主党が政権を取ってからそろそろ二年、この間、日本の政治は迷走につぐ迷走だった。何もかもうまくいかない。私が特に気がかりだったのは対外関係である。沖縄の普天間飛行場移設問題と尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の処理は、とても外交なんて言えるものではなかった。
若い政党だからと未熟さを大目にみるほどこの国にゆとりはない。政権党としての資格を欠いていることは、鳩菅二人の首相がみせつけた。小沢一郎元代表とのトロイカ時代はこれで幕とみていい。だが、三人目の若い首相が生まれれば、民主党が蘇生するかといえば、それほど甘くないのである。
民主党の議員は、党の限界をしっかり自覚して、次のステップを踏む勇気を持つべきだ。政権党としての延命を考えても先は見えている。党派を超えて同志を糾合し、リーダーを担ぎ、ビジョンを明示する。それが政界再編だ。民主・自民二大政党時代なんていうフィクションに執着してはいけない。
とにかく、菅さんの不徳と民主党の限界をはっきり認めることから、政治の再生は始まる。
<今週のひと言>
スーパークールビズ、反対。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK114掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。