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震災の復旧・復興で大連立へという流れがでています。一致団結してこの国難に立ち向かう、国民のために責任を分かち合い、揚げ足取りに終始するのではなく、復旧・復興に汗をかいて欲しいはというのは国民感情です。しかし、そこに見え隠れするのは復興利権の切符を互いに分かち合うための妥協だとどうしても見えてしまうのが残念なところです。
もっと早い段階、まさに震災後の惨事に対処する復旧の段階で協力していれば、復興利権を求めての連立ではないという大義もたったでしょうが、もうタイムリミットという段階で、自民党が協力を示唆してきたことがそう感じさせます。また民主党にすれば、自民党を巻き込むことでこれまで一身に背負い、集中砲火を浴びてきた非難の矛先を分散させることができます。人材不足も補え、また野党からの批判も緩和できます。
しかし、そういった政治の思惑にかかわりなく大連立は、大きく日本の政治を変える契機になる可能性を持っているように思います。
大連立によって、この復旧・復興に関してチェック機能が働かなくなるという懸念もありますが、もっと遠い将来を見据えると、それぞれ思想の違いやアイデンティティを失った政党支配の歴史がさらに揺らぎ、新たな政治体制に移っていくこと予感させます。
この情報化社会、しかもマスコミの情報独占が揺らぎ始めた時代に、かつての大政翼賛会が生まれる背景はもはやありません。市場がすでに顧客主導の時代に入ったように、政治の世界も遅れながらも、国民主導に少しずつ流れは傾き始めています。さらに国会での政治家によるチェック機能が働かなくとも、国民によるチェック機能が働きはじめています。
まず、大連立でなにが起こるのでしょうか。冒頭に述べたように政党による違いは幻想でしかないことがあきらかになってきます。とくに比較的若い世代の議員の場合は、民主党であれ、自民党であっても、公認を得られる政党に属したという議員も少なくありません。これまでのように無理やり違いをつくる、違いをつくりだすことが自己目的化してきた根據が失われます。
むしろ、個々の議員や政策集団間ではそれぞれ立ち位置による違いが厳然としてあるので、やがて起こってくるだろうことは、あのTPP問題のように、民主、自民のいずれのなかも賛否で分かれるという現象でしょう。国会のねじれではなく、政党内部のねじれが表面化してくるはずです。
もはやかつての思想を引きずる野党はほんの小さな存在でしかなく、むしろ、エネルギー政策、地方への権限の移行、日米間の距離のとりかた、農業政策、財政建て直しなどの要素を考えると、それぞれの組み合わせから生まれる立ち位置の違いは二大政党では収まらないほど多様化しているのが現実だと思われます。
しかしそれがただちに政界再編につながるかどうかは不透明です。再編が起こるためには、それぞれの立ち位置の違いがなにかで束ねることが求められてきます。そういった束ねるパワーは、選挙資金による影響もあるでしょうが、結局はもう現代に適応していない思想ではなく、どのような新しいビジョンを打ち出せるリーダーが生まれてくるかにかかっているからです。競争は、国家ビジョン間の競争、どのように日本の価値を高めるかの競争にはいってきています。
マーケティングの世界は、すでに、同業のライバル間競争という狭い土俵でのライバルとの差別化競争は次第に破綻し始めています。むしろ市場は顧客主導に移行し、どのような価値を提供できるか、それをめぐる競争の時代にはいってきています。それは同時に同業間の競争ではなく、異なる分野の企業との競争を起こしています。いまや新聞メディアが、新聞社間の購読者囲い込みの競争よりも、インターネットがもっとも大きな脅威になったようにです。
民主党政権の誕生で、政・官・財が癒着した自民党時代が終わり、自民党が再び権力の座についたとしても、かつての自民党時代はもはや復活しないように、自民党政治大連立は、これまでの政党政治の終わりの始まりであり、おそらくそれぞれの政党に揺らぎが生じてくることだと思います。おそらく感覚的には民主党も、自民党もそのことが分かっているだけに、できるだけ小さな大連立しようとするでしょうが、パンドラの箱を開けてしまうと、もう立ち返れません。
しかし、この大連立に向かわせているのは、海外メディアでさえ、呆れ果てる政治の迷走、この難局ですら政治ゲームを繰り返す政治への国民の嫌気、不信、怒りであり、マーケティングで言う顧客主導の時代を彷彿させます。政局を争う奪い合う競争から、どれだけ国民と政治、国民と国民の間に絆をつくり、喜びや痛みを分かちあえるようにできるか、また日本の経済の再建の道筋をつくることができるかの競争時代に、大きく政治の力学も変わっていくはずです。
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