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「内部」から見た内閣不信任案否決の真相ーー「政治における嘘」について
有田芳生の『酔醒漫録』 2011/06/06
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/
6月6日(月)原発被災地の福島県浪江町の住民から切実な話を聞いた。詳細は近く紹介したい。菅首相の退陣時期をめぐって政治的駆け引きが高まっている。菅内閣に対する強い批判を機動力とする「大連立」構想に違和感を感じている。大義はあるのか。この問題に判断を下す前提として「内部」から見た内閣不信任決議案否決の真相を記録しておく。
(1)ハンナ・アレントに「政治における嘘」という論文がある。「国防総省秘密報告書についての省察」とサブタイトルにあるように、ベトナム戦争遂行におけるアメリカ政府の欺瞞に関わる分析である。「欺く人は、自己を欺くことから始めるものだ」とアレントは人間的精神の一面を掴み出す。ちなみにカルト教祖は「自分が教祖の能力があると思い込むことから」教祖となっていく。その道具がイメージ作りを通じての「人々の心をとらえる戦い」である。菅直人内閣に対する不信任決議案の去就は「政治における嘘」の現代版である。
(2)菅首相の相談役は内閣発足から持続してただ一人閣僚を務めている北沢俊美防衛大臣である。当初は可決無理と見られていた不信任案だが、小沢グループの前夜からの巻き返しで、菅首相は深刻な情況に追い込まれる。可決に可能な「隠し球」が用意されていたからである。打開のためには「首相辞任」を仄めかすことしかない。しかし小沢一郎元代表と交渉する道はない。そこで鳩山由紀夫前首相がターゲットとなる。「鳩山なら乗ってくるだろう」!
(3)不信任案が提出される前夜。平野博文元官房長官は民主党の衆参国会議員から署名を集めはじめた。衆院本会議がはじまる前に両院議員総会を開催し、首相退陣を求めるのが目的であった。鳩山前首相を切り崩すには平野元官房長官に働きかけるしかない。鳩山前首相も不信任案に賛成することを公言していたが、内心は不安が高まっていた。岡田克也幹事長が不信任案に賛成した議員は除籍(除名)すると語っていたからだ。自分が作った民主党から除名されるのは困る。菅首相には退陣を求める。しかし除名は避けたい。それが鳩山前首相の本音だった。
(4)内閣不信任決議案が審議される6月2日午後1時から予定された衆議院本会議。その前に菅―鳩山会談が設定された。署名も退陣時期にも触れない奇妙な確認書が示された。そして代議士会が開かれ、菅首相の挨拶が行われる。そのころ共同通信や民放テレビはいっせいに「菅首相退陣」の速報を流し出す。いったい誰が「退陣」とリークしたのか。北沢俊美防衛大臣である。菅首相が大震災対応に一定の目処がたったとき「次世代にバトンタッチしたい」と語ったと同時にNHKが速報を流す。これで「退陣」イメージができあがった。
(5)さらに「表面の顔」として鳩山前首相が「首相退陣」のラウドスピーカー(拡声器)の役割を果すことになる。菅―鳩山会談さえなければ不信任決議が可決されていたと判断する小沢グループからは「また鳩山さんかよ」と怨嗟の声が出たほどだ。小沢元代表が「自主判断」を打ち出し、「人々の心をとらえる戦い」(アレント)はここに収束していく。かくして内閣不信任決議案は否決された
。
(6)退陣時期を菅首相は夏ごろを想定していた。ところが参議院予算委員会で硬直的な答弁を繰り返したために、野党どころか与党からも強い反発を招くことになる。福島第一原発が「冷温状態」になることを目指す来年1月まで延命を図るように見られたことも傷を深めた。6月末に野党から問責決議案が出されれば可決される。そうなれば西岡武夫議長は本会議開催のベルを鳴らさないから審議はすべてストップし、菅内閣は瓦解する。そうした事態を避けるために菅首相退陣の時期は早まるだろう。
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