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【高橋昌之のとっておき】これ以上菅首相の詐欺を許すな
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110605/stt11060512010002-n1.htm
2011.6.5 12:00 産経新聞
2日の内閣不信任案をめぐるレベルの低いドタバタ政治劇をみて、あきれ、憤ったのは私だけではないでしょう。とくに菅首相のとった言動は許せません。採決前に震災対応で「一定のめど」がついた後に退陣する意向を表明した菅直人首相が、不信任案が否決されたとたん、夜の記者会見では少なくとも来年1月まで長期続投する考えを示したのですから、これは明らかな「詐欺」です。
菅首相の退陣意向の表明は、2日午前の鳩山由紀夫前首相との会談で退陣の意思確認が行われたことを受けてのものでした。退陣の時期については「一定のめどがついた後」ということになりました。
私の取材では、菅内閣不信任案は1日夜の段階で、民主党からの賛成者が約90人に上り、可決される情勢になっていました。だからこそ、菅首相も「退陣の意向を表明するから、内閣不信任案だけは否決してください」となったのです。
そうである以上、退陣の時期は「近い時期」と受け止めるのが当然です。菅首相の退陣意向の表明を受けて、不信任案に賛成する意向だった民主党議員は2人が賛成、15人が欠席・棄権するにとどまり、その他は反対に転換したため、不信任は圧倒的多数で否決されました。
密室の政治家同士の約束なら、だましたり、だまされたりということは日常茶飯事ですが、菅首相の退陣意向の表明はテレビ中継され、国民の目の前で行われました。われわれマスコミだけでなく、国民のみなさんのほとんども「菅首相は近く辞めるんだ」と思ったことでしょう。それを夜になって、長期続投の意向を表明するのは、明らかに国民を欺く行為です。
ただ、われわれの取材によれば、菅首相は初めからそのつもりでした。一見、退陣の意向と思わせる演説をして不信任案を否決したら、退陣の時期を明示していないことをたてにとって、政権を続けていけばよいと考えたようです。そうなら極めて悪質、陰湿な行為といえます。
ここまできたら、政治家だけでなく、国民も菅首相の言葉も人物そのものも信用することはできません。そんな人にこの国のトップを任せ続けていいのでしょうか。
一方、政治家同士の約束ということについていえば、だまされた方もだまされた方です。2日午前の菅首相と鳩山氏との会談では、(1)民主党を壊さないこと(2)自民党政権に逆戻りさせないこと(3)大震災の復興ならびに被災者の救援に責任をもつこと(東日本大震災復興の基本方針および復興基本法案の成立と第2次補正予算の早期編成のめどをつけること)ーが確認事項として文書化されました。
そこには「退陣」という文字も「退陣時期」も、一切書かれていません。これでは何の確約もとったことになりません。当然、言った、言わないの話になってしまいます。鳩山氏の言葉を信じて、不信任案賛成から反対、欠席・棄権に転換した民主党議員は甘かった、逆に菅首相の方がしたたかだったということになります。
もともと不信任案に同調して賛成しようとしていた民主党議員には、民主党を離党したくない、分裂させたくないという弱みがありました。つまり、民主党議員は国家、国民より党を優先させる思考回路があったわけで、そこを菅首相につかれたのです。民主党議員の方も猛省してもらいたいと思います。
再び菅首相の「詐欺」に話を戻すと、「詐欺」は今回が初めてではありません。昨年8月30日も、菅首相は民主党代表選告示を前に鳩山氏と会談して、小沢一郎元代表の出馬を回避するために、菅、鳩山両氏に小沢一郎元代表、輿石東参院議員会長を加えた「トロイカ+1」で党運営をしていくことで一致し、菅、鳩山両氏が並んでテレビカメラの前で明言しました。
これを受けて、小沢氏は出馬回避の調整に入りましたが、翌日になって、菅首相は「あらかじめ人事の話をするのは国民からみて容認できない」と一変。約束をほごにされた鳩山氏は「ぼくは何だったんでしょう」とこぼしましたが、時すでに遅しで、民主党は代表選挙に突入しました。
政局だけならまだしも、菅首相は外交でも「詐欺」をしました。昨年9月の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で、中国人船長を処分保留で釈放したことです。菅首相はじめ政府は「那覇地検の判断だ」としましたが、これは真っ赤なウソで実は「菅首相の指示」によるものなのです。
私は関係者に取材を行い、複数の閣僚、政府高官から「菅首相の指示で行われた」との証言を得ました。残念ながら、物証など明確なウラがとれなかったため、記事にすることはできませんでしたが、ウソを塗り固めるための工作が行われたのは間違いありません。
こうしたことを振り返ると、たとえば証言が二転三転した今年3月12日の東京電力福島第1原発事故の海水注入問題も、私は菅政権と東電は「ウソをついているのではないか」と思ってしまいます。
この問題をめぐってはまず、「菅首相の指示で海水注入が55分間中断された」との疑惑が指摘され、東電も中断を認めました。しかし、菅首相は「報告が上がっていないものを『やめろ』とか『やめるな』というはずがない」と述べ、中断を指示してはいないと表明しました。
その後、東電は海水注入は中断されていなかったと発表内容を修正し、福島第1原発の吉田昌郎所長が、事態の悪化を防ぐため、東電本店の意向に反して独断で海水注入を継続していたとしました。
これは関係者しかわからない事実で、真相は薮の中ですが、私にはどうも話が出来過ぎているように思えてなりません。野党の追及や国民の批判をかわすため、菅首相サイドと東電が口裏合わせをして、吉田所長の“美談”で収めたという可能性はないでしょうか。
自らの政権存続のために、何度も国民を欺いてきた菅首相ならやりかねないと思ってしまいます。このコラムを書いている最中も、テレビからは参院予算委員会での菅首相の答弁が耳に入ってきますが、少なくとも私には菅首相がこれから何を言っても信じることはできません。
そのような菅首相に政権を、それもこの国難のかじ取り任せることはできません。今回の内閣不信任案は否決に終わりましたが、参院での首相問責決議案など、まだまだ菅首相を退陣に追い込むことはできます。
自民党をはじめ野党は、「菅首相が1日でも続けば国益が損なわれる」として、内閣不信任案を提出したのですから、今後も菅首相退陣に向けて対決し続けてもらいたいと思います。
一方、民主党は今回の内閣不信任案をめぐるドタバタ劇で、国家、国民より党の存続や保身に走る政党だというイメージが定着してしまいました。平成21年8月の総選挙で国民はどんな思いで民主党に政権を任せたのか。民主党議員一人ひとりはその原点に戻って行動してもらいたいと思います。
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