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「仕事をしなければしないほど辞めなくて済む」菅首相の「居座り」は国民にとって最悪の展開
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/7363?page=2
2011年06月04日(土) 長谷川 幸洋 :現代ビジネス
まったく、とんだ展開になった。
3日付けのコラムを書き上げた後、菅直人首相がその日夜10時から記者会見を開くというので「いったい何を話すのだろうか」と思っていたら、案の定、総理続投の会見だった。「ひょっとしたら・・・」という予感はあったが、こうまではっきり居直られると、さすがに驚きを通り越して、あきれてしまう。
菅は夜の会見で退陣時期について、東京電力・福島第一原発事故に触れ「工程表のステップ2が完了して、放射性物質の放出がほぼなくなり、冷温停止状態になることが原子力事故の一定のめどだと思っている」と語った。
工程表でステップ2の完了とは順調に進んだとしても、来年1月が想定されている。だが、工程表自体が疑問視され、来年1月までに冷温停止に持ち込めるとみている専門家は「東電のポチ」を除けば、ほとんどいない。
つまり、菅は建前の上でも来年1月まで、実際にはそれ以降もずっと総理で居座るつもりなのだ。これで、どこが退陣表明なのか。当初から退陣時期が玉虫色なのは分かっていたが、これは続投宣言にほかならない。
■鳩山は本当に騙されたのか
実は2日の民主党代議士会でも、菅は「大震災、原発事故に対して一定のめどがつくまで、ぜひとも私にその責任を果たさせていただきたい」と語っている。だから、発言を注意深く聞いていれば「総理は原発事故が収束しないことを理由に居直るのではないか」と気がついたはずだ。
ところが、その点を指摘した民主党議員は1人もいなかった。
鳩山由紀夫元首相が「身をお捨て願いたいと話した。首相と鳩山の間で合意した」と発言すると、いわば退陣表明がなんとなく本当であるかのような雰囲気になって結局、内閣不信任案には反対する流れが出来てしまった。
マスコミもテレビが「退陣表明」と一斉に速報し、新聞は夕刊で追従した。実際には「空気のような退陣表明」にすぎなかったのだ。
一昔前の自民党時代であれば、それでも、後進に道を譲る意思を表明した首相が居直るような事態にはならなかったかもしれない。政治家にも、それなりの矜持があった時代である。
ところが、菅にはそんなプライドはかけらもない。3日午前の閣議に臨む菅は満面の笑みをたたえていた。「不信任案さえ否決してしまえば、後はこっちのもの」という感覚なのだろう。醜悪としか言いようがない。この国はこういう総理を戴いていたのである。
鳩山は3日朝になって、菅を「ペテン師」と呼んで、怒ってみせた。鳩山も騙されたように見えるが、本当だろうか。私は鳩山も菅が「後で約束を破るかもしれない」という懸念を抱いていたと思う。それでも話に乗ったのは、党の創設者として「民主党を壊したくない」という別の思惑があったからではないか。
騙されるかもと知りながら「党を壊さないですむなら」とその場しのぎで延命の片棒をかついだ。それなのに菅が露骨に延命を言い出したので、頭に来たのだ。どっちもどっちなのである。
鳩山という政治家のでたらめさは米軍普天間飛行場の移設問題で暴露されている。そういう詰めの甘さ、行き当たりばったりの政治手法が今回も表れたにすぎない。
■ぎりぎりで兵を退いた小沢一郎
小沢一郎元代表はどうだったのか。
小沢グループはそれなりに不信任案賛成・棄権票を集めていたと思うが、鳩山や中間票の動向が重要な鍵を握っていた。もしも民主党分裂・集団離党で新党結成ともなれば、鳩山の資金力に頼る可能性もある。
その鳩山が菅と握ってしまい、不信任案否決に転じたとなれば「撃ち方止め」とならざるをえない。中間派も離反する中、小沢グループだけで突撃すれば採決に敗北したうえ、最悪の場合、少数で党を追い出される事態にもなりかねない。そうなれば、党を追い出された小沢と手を握る勢力はいない。永田町の異端児集団になってしまう。
小沢とすれば、鳩山が方針転換した段階で兵を退かざるをえなかったのである。
もちろん不満は残るだろう。小沢が激怒したという報道もある。だが、いくら怒ってみたところで後の祭りである。むしろ採決への態度は議員の自由判断にして、味方の損害を最小限に食い止めたと言える。
突撃・全滅を回避し、とりあえず菅をレームダック状態に追い込んだだけでよしとした。このあたりは、さすがに百戦錬磨である。
哀れだったのは松木謙公議員だ。倒閣の勢いが止まらず、単騎で突っ込んでしまった。政治的には無謀だったが「筋を通した男」として、人気は上がるかもしれない。
そもそも「仕事が一段落すれば辞める」という辞任スキーム自体が矛盾に満ちている。なぜなら、辞めたくないなら仕事をしなければいいからだ。あれこれ理由をつけて、ずるずると引き延ばせるだけ引き延ばせばいい。「仕事が終わらないから辞任しません」となるだけだ。
仕事をしなければしないほど、辞任しないですむ構造になっている。これでは一所懸命に汗を流して仕事をするインセンティブが働かない。菅は初めから辞めたくないのだから、ますます仕事をしなくなる。これは100%間違いないだろう。
■参院の問責決議が焦点
一方、自民党に対しては「オレを辞めさせたいなら、つべこべ言わず、オレの言うとおりに賛成しろ」というインセンティブを働かせる結果になる。つまり、これは「反対勢力に対して大政翼賛を迫る一方、自分に対しては仕事のサボタージュが最適になる」という辞任スキームなのだ。
しかも、自民党はじめ野党は頭に来て、なかなか賛成しないから、だらだらと時間だけが過ぎていく。国民にとっては最悪の展開である。
鳩山がそこまで気がついていたとは思えないが、結果的に、そういうひどい話になってしまった。
では、これからどうするのか。
内閣不信任案という伝家の宝刀を抜いてしまった以上、今国会ではもう二度と使えない。鳩山と小沢の選択肢は両院議員総会を開いて、菅に代表辞任と総理辞職を迫る。あるいは野党と連動して、参院で首相問責決議を可決する道が残っている。
ただ民主党は両院議員総会を開いても、代表を辞めさせる規約がない。そこで、まず規約改正から手順を踏むという展開が考えられる。首相問責が成立しても、総理を辞めさせることはできない。とはいえ、かねて菅に辞任を迫っている西岡武夫参院議長が問責成立で、どう出るか。そこは見所だ。
ポスト菅はまったく見通せない。
鳩山と小沢が党にとどまったまま菅を引きずり降ろせるなら、ポスト菅の「ミスターX」を選ぶのは民主党の仕事になる。民主党の体たらくを見ていると、菅を降ろせるという確たる見通しが出てくるまで、党内のミスターX選びは腰が入らないだろう。
鳩山と小沢のどちらか、あるいは両方が党を飛び出す覚悟で事に当たるなら、野党にも出番が出てくる可能性がある。だが、内閣不信任案カードを使ってしまった以上、離党の可能性はほとんどない。そもそも飛び出す理由がないからだ。
結局、いまの政局カードを握っているのは、やはり小沢と鳩山である。2人とも今回の失敗で傷ついた。松木の一件が象徴しているように、グループ内にも敗北感としこりが残っている。もう一度戦略を立て直すには、時間がかかるかもしれない。
救いは、いま通常国会が開かれているという点だ。菅政権の内閣支持率はどうなるか。それを受けて国会論議がどうなるか。ここは野党が菅政権のバカバカしさをしっかり追及してほしい。
(文中敬称略)
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