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月刊日本編集部ブログ
菅総理は潔く身を引くべし
前農林水産大臣 山田正彦
菅総理では大震災を乗り切ることはできない
── 東日本大震災から二カ月余りが経過した。現状をどう見ているか。
山田 国の復興政策は遅々として進んでおらず、福島原発も決して安心できるような状況にはない。このまま事態は少しずつ鎮静化するだろう、といった楽観的な考えを持つべきではない。危機的状況という点においては、震災直後から現在に至るまで何ら変わっていないのだ。
そもそも、原発の平均的な運転期間は20年ほどである。ところが、福島原発は運転開始から40年経過しており、さらに震災の1カ月前に稼働年数の10年延長が政府によって決定された。
問題は福島原発だけに限られない。女川原発や、活断層の上にある浜岡原発など、いつ何が起こってもおかしくない状況なのだ。全ての責任は政治にある。
こうした非常事態においては、総理大臣がリーダーシップを発揮して、迅速に事態に対処していかなければならない。
総理大臣には、大きな方向性を示す能力、そして、全ての責任をとるから後は担当者に任せる、といった度量が必要とされる。
ところが菅総理は、一から十まで自分で決めなければ気が済まないようだ。それ故、東電に顔を出して怒鳴ってみたりと、全く落ち着きがない。そして、いたずらに会議の数を増やしてばかりいる。
しかし、学者を集めて復興構想会議などを開いたところで、学者が自説を展開し合うだけで終わるのは目に見えている。そして最終的に、会議は事務方、すなわち官僚にとって都合の良いようにまとめられることになるだろう。
震災直後からの菅総理の対応を見ていると、残念ながら菅総理の力ではこの震災を乗り切ることができないと思わざるを得ない。そうした菅総理に対して、与野党の議員、そして何よりも国民の方々が大きな不信感を抱いている。
千年に一度の大震災を乗り越えるためには、政界全体が一丸となり、挙党で対応しなければならない。一年なら一年、一年半なら一年半と期限を区切り、救国内閣を立ち上げて対処していく必要がある。
そのためには、菅総理は自ら潔く身を引くべきだろう。福島原発が臨界せずに今日に至っているのは、菅総理の一つの功績と言ってもいい。これを一つの目途として、東日本復興のために自ら身を引けば、総理の決断を日本中が支持するはずだ。
官僚の縄張り争いを打破せよ
── 復興政策が後手に回ってばかりいるのは何故か。
山田 復興政策が遅れている原因の一つは、官僚の縄張り争いにある。たとえば、仮設住宅を建設すること一つをとってみても、国交省と総務省のどちらの管轄であるかで、省庁間の調整が必要となる。放射能汚染は文部科学省、食の安全基準は厚生労働省、土壌については農水省などといって調整していたのでは、迅速な対応などできるはずもない。
私が農水副大臣として、宮崎県で起こった口蹄疫問題に対処した時も、省庁間で縄張り争いが起こった。農家に対して補助金を出すように命じた際、その補助金を撒務省が出すか財務省が出すかで紛緋し、結局1週間も遅れてしまうということがあった。
こうした縄張り争いを打破するためには、総理大臣の下に、各省庁の上部に位置する「防災復興府」といったものを常設機関として設置する必要があるだろう。そして「防災復興府」に権限と財源を集中させ、明確な指揮系統の下に「ヒト・モノ・カネ」を迅速かつ大胆に運用できるようにすべきだ。
また、それは復興計画だけでなく、今後生じる可能性のある地震や津波、原発問題などを見据えた防災計画にも取り組んでいく必要があるだろう。
── 日本国憲法には、今回のような緊急時の対応について明確に規定されていない。それが迅速な復興政策の実行を阻んだのではないか。
山田 私は現行憲法では、国民の生命・財産が危機に陥った場合、それを守るべく超法規的な措置をとることが認められていると考えている。
口蹄疫が発生した時、私は現地に入り、その場で柔軟に問題の対処にあたった。それ故、「歩く超法規」とまで言われた。
しかし、それほど迅速に対処しなければ、口蹄疫の蔓延を食い止めることはできなかったと思う。
現在それができていないのは、政治的決断ができない総理大臣の力量の問題である。
原発から自然再生エネルギーへ
── 原発を見直す運動が各地で起こっている。これ以上の原発の推進は、国民の反発を招くだろう。
山田 これまで日本は原発に頼りすぎていた。今回の震災は、主に東京などの首都圏で使用される電力の発電を、地方が負担していたという歪んだ構造を露呈させた。原発という危険な存在を地方に押し付けることで、東京の繁栄は成り立っていたのだ。こうした構造は今すぐにでも改善しなければならない。
日本では今日に至るまで、原発が世界のスタンダードであるかのように考えられてきた。しかし国際的には、チェルノブイリ事故が起こって以降、原発はほとんど作られていないというのが実情だ。 また、太陽光や地熱、水力、風力など、自然再生エネルギーはコストが高いと言われてきた。しかし、アメリカでは既に、原発と太陽光発電のキロワット時あたりのコストが逆転している。
ドイツでは、新築の建築物全てに太陽光パネルの設置を義務付けているところもあるほどだ。ドイツは自然再生エネルギー電力で、総電力の11パーセントをまかなっている。自然エネルギーで発電した電力を電力会社に買い取らせることによって、自然再生エネルギーの普及に成功した。
日照時間は、日本の太平洋側の方がドイツよりも長い。
それ故、太平洋側に原発ではなく太陽光パネル地区を作ることで、電力政策の転換を図ることが可能だ。また、東北で作られた電力を都会の人達が割高で買うことで、震災復興の手助けをするということも必要となろう。
原発は巨大な産業だ。当然大きな利権となっている。こうした利権が自然再生エネルギーの推進を阻む一因となっていたのは間違いない。我々は人類の未来のためにも、こうした既得権益を打破していかねばならない。
自然再生エネルギーが漁業を復活させる
── 東日本大震災により、東北の農業や漁業は壊滅的な被害を受けた。
山田 東日本の沿岸では造船所が破壊され、2万隻もの漁船が失われてしまった。被災地を訪問した際、漁に出たくとも出ることができずに途方にくれている多くの漁民の方々にお会いした。そこで、私はすぐに五島、壱岐対馬の浜に行って、「中古で使っていない漁船をわけてくれないか」と尋ねて回った。
その結果、長崎県の離島だけでも数十隻の漁船を集めることができた。エンジンだけが外されたFRP(ガラス繊維強化プラスチック)の船も、廃棄処分するには100万円から200万円の費用がかかるので、浜辺に無数に打ち捨てられていた。
こうした船はこれまで無料で東南アジアなどに送られていたが、これらの船に電池モーターをつければ、養殖、小型の定置網などにすぐに利用できる。電池モーターは大量生産することによって、エンジンの10分の1の価格で生産できるため、費用の負担も軽微で済む。
── 漁業の衰退は、ガソリンの値段の上昇にその一因がある。
山田 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)によれば、5年後にはガソリンの値段が一リットル160円、10年後には200円にまで上がるという。中東情勢は不安定で今後の見通しが不透明なため、さらなる価格上昇も考えられる。
ガソリンの値上がりと共に重油の値段も上昇するため、燃費が高騰することになる。そうなると、漁に出れば出るほど赤字になるため、漁民は漁に出ることができなくなり、廃業せざるを得なくなってしまうのだ。
しかし、太陽光、水力発電などの自然再生エネルギーを蓄電し、それを利用して漁ができるようになれば、燃費は現在の8分の1程度で済む。電池の価格もこの先5年間で、一キロワットアワーあたりで現在の7分の1程度にまで下がると予測されている。実際、この2年間ですでに3分の1にまで下がっている。
また、自然エネルギーを活用することは、C02の削減にも繋がる。現在、東京都はC02の排出権を1トンあたり1万2千円で購入している。地方の漁民はこれを東京都に売ることもできる。
このようなエネルギーの転換が、漁業の再生の足掛かりとなるだろう。
江戸時代の土木技術に学べ
── 津波の被害により、東北地方の農地では塩害が生じている。
山田 岩手、宮城、福島、茨城だけでも、2万4千ヘクタールの水田が潮に浸かってしまった。大量の水で塩を洗い出さないと復田できないところが、かなりの面積に及ぶと予測されている。
また、震災により排水施設、水路、導管パイプなどが破壊された。さらに、農家はトラクターなどの農機具を喪失し、野菜、果樹のハウスも破壊されてしまった。再び農家が農業に取り組むことができるように、無担保、無保証、無利息の特別融資などを実施する必要がある。
そして、これを機会に、土地改良事業に対する発想も転換していかねばならない。これまで農地では、10年、20年経つと、土中に埋めてある排水管を取り換える必要があった。こうしたメンテナンスのために、かつては年間1兆円もの予算が組まれていた。
しかし、日本古来の潅漑施設は、恒久的でシンプルなものだったために、このようなメンテナンスは必要としなかった。
例えば、私の住んでいる長崎県の大村市には、250年も前の江戸時代に、深沢義太夫という鯨綱の網本が私財をなげうって、200ヘクタールの潅漑を行った。これが現在に至るまで使用され続けている。
また、アフガニスタンで中村哲医師が建設した3000ヘクタールの潅漑設備では、石を金属の網で包んで積み上げる工法、蛇寵(じゃかご)と呼ばれるものが採用された。これは、古くから筑後川の堰において使用されてきたものだ。こうした古来の技術を見直す必要がある。
これと並行して、水路や水流を利用する水力発電をこれまで以上に活用していくべきだ。これには、例えば海面より低地に農地をもつオランダの知恵を借りることも必要となるだろう。
我々はあまりにも新しい技術に頼りすぎ、古代より日本にあった優れた土木技術を軽視してきた。確かに新しい技術は便利で効率が良かったかもしれない。しかし、そのメンテナンスには莫大な費用がかかり、また今回のような自然の力の前には無力であることが露里した。今こそ発想を転換する時だ。こうした土地改良政策は、公共事業として、国が全額負担してでも大胆に取り組んでいくべきであろう。
農地が回復すれば、国の資産価値は高まる。それはまた、将来襲いかかる食糧危機に対する備えにもなるだろう。TPPというアメリカによる食糧支配(本誌1月号参照)に従属するのではなく、これを機に日本もまた、ヨーロッパ並みの食料自給率を確保するように政策転換すべきだ。
大規模な財政出動を行え!
── 震災復興のための財源を確保するために、財務省などは消費税の増税や新税の設立を主張している。
山田 第一次補正予算では、年金や高速道路、子供手当ての予算を復興財源に回すということになった。しかし、こちらの予算を削ってこちらに回すといったような、バランスシートの辻複を合せることだけを目的とした発想では、復興は遅れるばかりだ。
震災により東北地方は壊滅的な打撃を受けた。しかし、発想を逆転すれば、それだけ復興のための実需があるということだ。今こそ大胆な財政出動を行い、景気を回復しなければならない。
そもそも、デフレ状況下で緊縮財政を行ってきたこと自体が異様なことなのだ。デフレなのだから積極財政を行わなければならない。私は常々そう主張してきた。
こう主張すると、日本はギリシャのような状況に陥ってしまうといったようなことを、財務省の御用学者たちが騒ぎたて、不安をあおる。確かに、政府の借金は800兆円ある。しかし、日本は米国債だけでも100兆円ほど保有している。年金基金も270兆円ほど持っている。こうした状況で増税など考える必要は全くない。
財務省は政府の借金残高だけを開示して、政府の持っている預貯金、有価証券などの金融資産を明らかにしようとしない。これほど奇妙な事があるだろうか。資産を開示すると自分たちにとって不都合なことが明らかになってしまうから、開示できないのであろう。
財務省の増税の論理に屈することなく、今こそ「防災復興債」を20兆円ほど発行して、内需の拡大、景気の回復を図るべきだ。
今回の福島原発問題は日本一国だけの問題ではない。原発の存在そのものが問われている。それ故、原発を重視する諸国家は、福島原発問題を鎮静化させるためならば復興債を購入するだろう。また、日本国民も、東北の復興を願って、必ずや国債を購入してくれるはずだ。それでも心配であるというのならば、日銀に引き受けさせればよい。
日本は長い間デフレに悩まされ続けてきた。この度の震災を奇禍として一気にデフレを克服できれば、日本は再び力強い経済成長ができるはずだ。
現在必要とされていることは、東北地方を元通りに復旧することに加えて、漁業と農業を再生させ、災害に強い日本を生み出すことである。世界に冠たる日本を復活させるための、列島改造計画に迅速に取り組まなければならない。
(5月3日インタビュー、聞き手・構成 中村友哉)
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