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◎「政権リセット」で「原発停止大不況」を回避せよ
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/2011-05-30
2011-05-30 07:27 永田町幹竹割り
どうも民主党の首相は10年先の「空想科学小説」がお好きなようだ。鳩山由紀夫が国連気候変動サミットで「2020年までに25%の温室効果ガスを削減する」と言えば、菅直人もサミットで「2020年代の出来るだけ早い時期に、自然エネルギーは少なくとも20%を超えさせる。一千万戸にソーラーパネルを付ける」と自然エネルギーの利用を拡大する方針を強調。鳩山の25%は、鳩山にとってだけは“幸い”なことに、原発事故で吹き飛んだ。もともと不可能だったが、もう誰もできると信ずる者はいまい。菅の20%は、そのころ首相をやっていないから責任を問われることもない。ところが首相がその“夢”を語っているうちに、原発長期停止で全国的に電力不足が現実のものとなりつつある。夏だけでなく構造的電力不足である。菅は原発再稼働を突きつけられているのが実態なのだが、本人は気付いていないか、ほおかむりしているのだろう。
問題なのは「20%」も「1千万戸」もいわば、「唐突消費税」「唐突船長釈放」「唐突外国人献金受領」「唐突谷垣副総理」「唐突浜岡」に次いで、またまた悪い癖の“唐突発言”なのである。その証拠に経産相・海江田万里は「1千万戸にソーラーパネルを取り付けるという話は聞いておりません」。経産政務官・中山義勝に至っては「20%はどこから出た話か分からない。エネルギーを知るものとして違和感が伴う」と、なんと菅を“軽蔑”してしまった。要するに菅は経産省事務当局はおろか閣僚や政務官にすら一言も言わずに、サミットという重要な場で発言、「国際公約」としてしまったのだ。
菅がトリッキーなのは、原発をエネルギーの4本柱の一つに据えつつ自然エネルギーだけ、数値目標を提示したことである。一般国民には原発が徐々に減ってゆき、自然エネルギーに代替されてゆくような“聞き心地”の良い論理構成としたわけだ。実際にはドイツ首相・メルケルのように完全な脱原発に舵を切る度胸はないにもかかわらずである。G8首脳の多くは、原発政策で菅が何を言うかに注目していた。日本の首相の発言がこれほど注目されたことはかってなかったが、菅は原発をどうするを言わずに、“夢”だけを語ったのだ。菅は国内向けの支持率しか考えていなかったことになる。つまりまたまた己が身大事のパフォーマンスである。
そもそも自然エネルギーは現在水力を入れて10%、水力を除けば太陽光、風力などは1%そこそこだ。「20%」構想も菅自身が昨年6月に閣議決定したエネルギー基本計画を10年前倒ししたもので、論議の積み上げなしに「エイヤッ」とやってしまったのだ。これまで自然エネルギーが普及しないのは、その質とコストに大きな壁があるからだ。誰も現段階では原子力に代替できると言う専門家はいない。政治家の多くも原発の安全性強化の上維持するしかないというのが大勢の“本音”だ。
“夢”に向かって技術革新を促進することは誰も異論を唱えることではないが、10年夢を追って、電気料金上昇と、電力不足を続けていたら日本の産業は全て、安価な原発の電力が豊富に使える外国に脱出して、国内はもぬけの殻となりかねない。産業の完全空洞化が現実のものとなるだろう。そうなれば日本は、あの懐かしい戦争直後のように、貧しい部屋にLED裸電球を一つ付けただけの貧乏家族が寄り添って幸せに暮らし、省エネなどとっくに必要なくなるかも知れない。まさに川柳風に言えば、「武士は食わねど脱原発」だ。
冗談はともかくとして、実際に原発再稼働が待ったなしの状況になりつつある。菅は決断しないだろうから、ポスト菅の新首相がに託すしかあるまい。菅が「浜岡停止」の根拠を大衆受けのする地震発生率だけに絞った結果、停止した全国の原発の稼働再開への道筋を消してしまったことが最大の原因だ。原発の現状は現在の54基のうち定期検査や事故などで37基が止まっており、順次再開していかなければ来年4月までには定期検査で54基全てが止まってしまう。日本の産業にとって、まさに死活に関わる電力不足が発生するのに、政治はほおかむりが続いている。菅が浜岡を政府部内の議論の積み上げがないままに、“独断専行”のごとくストップさせた結果、稼働を判断する各県知事は窮地に陥ってしまったのが実情だ。各地の原発は反対運動の盛り上がりで、にっちもさっちもいかなりつつあるのだ。社会運動家の菅と共産党や社民党、そして朝日新聞の思うがままになるようでは、我が国の産業政策も早晩末期症状に至るだろう。
敦賀原発の停止で電力に支障を来した関西電力首脳が、政府の無策ぶりに怒り心頭に発しているという。「再稼働しないと夏はとても東に電力はは送れない」というのだ。可能な限りの地震対策や津波対策を取った原発ですら再稼働を躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ない状況なのだ。「原発停止大不況」がささやかれる差し迫った現実にどう対処するかだが、政治は我が国の現段階でのエネルギー確保で強いメッセージを発する必要がある。パフォーマンスなどしているときではない。原発なしでは成り立たないエネルギー・産業構造の現実をあえて国民に訴え、党利党略なしで原発再開の必要を説く勇気のある政治家をリーダーに据える必要がある。絵空事では国民の真の信用を得るのは困難と心得るべきだ。それには早期に首相を代えるしかない。政権リセットしか対応は難しい。
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