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東電が原発への海水注入を一時中断したとの発表を訂正したことを巡り枝野官房長官は「結果的に政府が把握して報告した事項が事実と異なっているのは遺憾だ」と表明した。続いて「得られた情報で一定の確度があるものは公開するのが(政府の)責任であり、裏付けが取れないから出さないということでは、逆に情報を隠すことになってしまう」とも述べた。
政府としては、東電側の報告を信じて事実関係を発表せざるを得ないとの立場を強調したつもりだろう。だが、これは原発に関する政府(=経産省・原子力安全委員会)と東電との技術力の差を示している。それは、東電による技術的な措置について、その是非を判断する能力が、政府には無いと言うことである。具体的に言えば、原発の保安・安全操業について、政府よりは電力業界や原発機器メーカーの技術者の方が、遥かに豊富な技術的経験や知見を有していると云うことである。
原発を自動車に例えて見れば分かる。自動車が暴走した時、それを制御するのは運転手(=電力会社)であり、メカの問題点を見つけるのはメーカーの技術者である。自動車の型式を審査する経産省の役人は、審査基準に合致しているかを、立会検査と書類の上で判断するだけだ。原発でも、その点は全く変わらない。経産省の役人は原発の運転・保守そして事故に関しての知見は、民間企業に比べはるかに劣るのである。
原子力安全委員会の班目委員長は26日、「中断がなかったのなら、私はいったい何だったのか」と不信感を表したそうだ。だが、それは身から出た錆なのだ。つまり、12日早朝に菅首相と斑目委員長がヘリで原発を視察したが、その行動やそこでの斑目委員長の発言が、福島原発の吉田所長やスタッフにとって価値の無いものだった。極論すれば、技術的な無知を曝したのではないだろうか。そのように推測している。
なぜそう言うか。斑目委員長はその就任の挨拶で、「原発の安全については素人」と述べた。その通りで、原子炉中の熱水の流体力学に関する専門家のようだが、核反応制御とか原子炉の暴走を止める技術的知見を有する学者ではない。原子力安全委員長として「海水注入」をすべきか、止めるべきかの判断を下さなければならない立場にありながら、その判断を下さなかった。このことから見ても分ることだ。
だから、福島原発の吉田所長と技術スタッフは、政府から的確な指示があるとは考えなかった。官邸に海水注入予告のFAXを送信した後は、実行するのみであった。所長の胸の内は、現場の実情を知らない東電本社はもちろん、東工大卒を振り回す菅首相や斑目委員長、原子力安全・保安院など、素人が「要らない口を挟むな」ということであったと想像できる。現場の長とは、そう云う気概を持つのである。
処で、以前にも書いたが、原発の安全行政は40年以上の間、安全確保に必要な技術について進化がなかったようである。ただ、検査員が700名に増えただけだ。創り上げた「安全神話」に乗り、逆に手を抜いたのではないだろうか。週刊誌などの記事を読むとそのような感じを持つ。そして、今回明らかになったように、【技術力で東電の方が、政府より上であった】ことが、事故の遠因だと思うのである。
即ち、人に依っては原発に関する力関係は【東電>経産省>他の電力会社】と言う。
(25日NHKニュースによる)。この見方は、筆者の経験から言えば頷ける。その結果、極論すれば、日本の原子力安全基準は【東電の基準=政府の基準】となったのではないか。そして、東電を中心とする原子力村(=原子力推進の学者や企業の技術屋)が構成された。「安全神話」に乗り手を抜いたとは、そう云うことである。
40年前の日本は、耐震性については、日本独自の基準を設けたが、後は米国原子力規制局(NCR)の基準を翻訳したものであった。自ら試行錯誤した結果、原子力の安全基準を設定したNCRには理念があった。NCRは「炉心溶融の危機」を想定していた。だが、日本の原子力村では、炉心溶融の危機を語ることはタブーであった。それを語る者は、京大の原子力研究者である【熊取6人衆】のように原子力村から排除されていた。
枝野官房長官の発言は、いみじくも日本の原子力行政(=そのほとんどが自民党政権時代に利権と結びついてできたもの)の矛盾と言うか、欠陥を示したことになった。日本の原子力行政には構造的欠陥があると言うことだ。
http://www.olive-x.com/news_30/newsdisp.php?n=109508
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