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http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110525/271344/
自民党は5月23日の衆院東日本大震災復興特別委員会で「菅直人首相の責任を徹底的に追及し、茫然自失の状態に追い込む」と事前から息巻いていた。そして、5月26〜27日にフランス・ドービルで開かれる主要8カ国首脳会議(サミット)から菅首相が帰ってきたところで内閣不信任決議案を出す最大のきっかけにする、と自民党は言っていた。
ならば、どのような論戦を繰り広げるのか、どのような決め玉を持っているのか。私は自民党の攻めに大きな関心を寄せながら国会中継を見た。
その中身は惨憺たるものだった
復興特別委員会で口火を切った自民党の谷垣禎一総裁は、菅首相に挑みかかったかに思えたが、その中身は惨憺たるものだった。自民党はなぜこんな話を持ち出したのか、私にはさっぱり理解できない。結論を先に言えば、こういうことになる。
谷垣総裁が切りだしたのは、福島第一原子力発電所の1号機で東京電力が海水注入を一時中断した問題だ。「注水は首相指示で中止したとの報道がある」と問いただした。
東電は3月12日の19時4分、1号機への海水注入を開始したが、19時25分に停止。その後、海江田万里経済産業相の命令により、20時20分に海水注入が再開された。中断は55分間に及んだ。
最後は「言った、言わない」の論争
官邸は海水注入をやめるよう指示したのか。55分間の中断で原子炉の状態を悪化させることになったのではないか。だとしたら、これは官邸の重大なミスだ――これが谷垣総裁の質問の要点である。
実はこの海水注入の中断をめぐっては、政府・東京電力統合対策室が21日、原子力安全委員会の班目春樹委員長から「(海水を注入すると)再臨界の危険性がある」との意見が出された、と記載した資料を発表していた。
しかし翌22日、事実と異なると強く反発した班目委員長は、細野豪志首相補佐官、福山哲郎副官房長官と会談を行い、発言内容を「再臨界の可能性はゼロではない」と訂正させている。
この「再臨界」問題をめぐって3月12日夕方に官邸で意見を交わされており、それをもとに官邸が東電に海水注入を止めさせたのではないかと谷垣氏は疑問を呈したのである。
菅首相は「19時4分から東電が注入し、25分にやめたが、私どもには報告があがっていなかった。報告がないから当然ながら『やめろ』と言うはずがない」と答えた。
そこからは「言った、言わない」の論争になり、その中で官邸の混乱ぶりや発言記録が残されていないことが明らかになった。
「わからない」と首を傾げる自民党の論客たち
だが、海水注入の中断がいったい福島第一原発のその後にどのような影響を与えたというのだろうか。なぜ、そんなに重大だとみなすのか。
55分間の注入中断によってメルトダウン(炉心溶融)や水素爆発が起きたのであれば、確かにそれは重大な問題である。ところが、12日午前には完全にメルトダウンしていたことが東電の5月15日発表で明らかになっているし、水素爆発も12日の午後3時36分に起きている。官邸で海水注入について意見を交わされたのは、そうした最悪の事態がすでに起きてしまった後なのだ。
私は自民党の論理的に物事を述べる論客2人に取材し、なぜ自民党はこれで菅さんを追いつめられると思ったのかを聞いてみた。
だが、2人とも「わからない」と首を傾げるばかり。
何でも、谷垣総裁と石原伸晃幹事長を含めた自民党執行部は21、22日の土日に想定問答を繰り返したそうだ。菅首相役を立て、谷垣氏が攻める。土日にそれぞれ2時間ずつかけて想定問答を行い、「これでいける」と思ったらしい。
ところが自民党の論客は、「私が見ても、復興特別委員会での谷垣総裁の追及にどういう意味があるのかわからなかった」と語っている。
不信任決議案を提出する大義名分がない
私も同感だ。自民党側は菅首相の責任を何ら追及しておらず、谷垣氏の質問はばかげたものに思える。そもそも自民党執行部は、福島第一原発の1〜3号機がどのような事故を起こし、またメルトダウンや水素爆発がどのような経緯で起きたのか、どれだけ勉強しているのか。
谷垣氏は事故内容をよく理解しないまま質問に立ったのではないか。まったく迫力のない質問内容だった。
24日付の新聞各紙はこの質疑応答の様子を大きく取り上げたが、どの新聞を読んでも、谷垣氏の追及が何のためのもので、どのような意味を持つのか、さっぱりわからない。新聞は私と違って遠慮して書くものだから、論旨がぼやけてしまい、ますますわからなくなる。
菅首相の責任を徹底的に追及すると言っていた自民党は完全に失敗した。
これでは不信任決議案を提出する何の決め手にもならないし、仮に提出したとしても国民の多くはその理由が理解できないだろう。不信任決議案を出すには大義名分が必要だが、23日に繰り広げられた堂々めぐりの審議では大義名分になり得ない。
私が懸念するのは、本当に不信任決議案は通るのかということだ。複数の自民党議員に聞いてみたが、答えはバラバラで、可決されると思っている議員よりも否決されると思っている議員のほうが多かった。
菅政権は長期化するかもしれない
内閣不信任決議案は何回も出すものではない。1回きりの勝負である。もしここで不信任決議案が可決されなければ菅内閣は長期政権化する。
自民党のばかげた追及や、通る見込みの少ない不信任決議案の提出は、菅内閣の長期化に手を貸しているようなものではないか。そう思わざるを得ない。
本連載で繰り返し述べてきたが、今、大事なことは東日本大震災の復旧・復興をどう進めていくか、そしてメドのついていない福島第一原発事故の収束をどう図るかだ。
そして何より、大気や土壌、地下水に漏れた放射性物質の実態を正確に把握し、被災者をはじめ国民の健康を守ることが重要である。
大事なことが山積しているのに、大義もなく党利党略しか考えていないことに費やす時間などまったくない。国民もそれを見抜いていて、いら立ちを募らせるばかりである。
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