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◎責任は首相にあり、“トカゲのしっぽ切り”をするな
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/2011-05-27
2011-05-27 07:35 永田町幹竹割り
擬態には目立たなくするものと目立つようにする両極端があるが、「菅擬態政権」のケースは後者の目立たせるケースだ。自分より大きく見せるエリマキトカゲ型だ。今回のあっと驚く「海水注入中断なし」も根底には首相・菅直人の擬態が原因として存在する。しかし菅の“間接指示”にうろたえて、海水注入中止を命じた東電幹部の意向を無視した現場の所長は、職務に徹した勇気のある判断をしたとも言える。副社長・武藤栄が「処分する」などと述べているが、もってのほかの「トカゲのしっぽ切り」だろう。第一義的には責任は官邸にある。
何でも“前さばき”で責任を転嫁しようとする官房長官・枝野幸男は、今度もまた「東電は、正確な報告をいただきたい」と全てを東電のせいにしようとしているが、根本的な認識が間違っている。21日の中断の発表は、政府・東電統合対策室の事務局長を務める首相補佐官・細野豪の責任において行われたのである。細野自身が「ヒアリングは東京電力に任せていて、私はそれを責任を持ってまとめる立場だった。政府も訂正があり、東京電力も訂正することになり、21日の段階で国民に正確な情報を知らせることができなかったのは誠に申し訳なかった」と潔く陳謝しているではないか。
この原発事故の初期段階の対応を左右する超重要な場面で、十分に確かめもせずに原子力安全委員長の発言を訂正し、再び中断発表を訂正した背景には、安易に重要文書をまとめてしまうことが象徴する民主党政権特有の“甘さ”がある。その根底には自分を常によく見せようという首相・菅直人自身の擬態があるのだ。元外相・高村正彦が「東電を生かすも殺すも政府の手の中にあるという状況で、政府は『東電は悪い会社』、『菅総理はよい人』というウソを流し続けている。菅政権は自分をよく見せることに熱心な政権だが、それにしてもひどすぎる」と述べているとおりだ。擬態政権なのだ。
中断がなかったことが明らかになっても、首相官邸の迷走ぶりには「訂正」が利くものではない。そもそも全ての発端は、菅が極めて可能性の少ない塩水注入の危険性を下問し、原子力安全委員会委員長・班目春樹が明確に否定しなかったことにあるのだ。愚かにも官邸の空気が「危険だ」一色となり、これを忖度(そんたく)した東電社員が首脳に連絡、首脳は現場に中止の指示を出したのだ。しかし東電の原子力部門の中でも原子炉への対応を知り尽くしている第一人者が激しく抵抗、指示を黙殺した。第一原発所長の吉田昌郎は“根性”があったのだ。おそらく“ど素人”の官邸や、“東京のお偉方”よりは原発を知っているとの自負があったのだろう。所長の部下たちも一致して中断することの無意味さと危険性を指摘したと言われている。これが現場の組織ぐるみの対応となったのだ。組織ぐるみと言っても大勢が関わることであり、漏洩は必至であったと思われるが、公表まで2か月間も漏れなかったこと自体が、現場における「気骨の所長判断支持」の雰囲気を物語っている。
「中断せず」を明らかにした理由について武藤は、「所長は『新聞報道や国会の審議、それにIAEAの調査があり、国際的に今後の教訓とするためにも、正しい事実に基づくべきだと考え、事実を報告したいと思った』と話していた」と述べているが、その判断も正しい。しかし組織の一員として上層部に報告しなかったことには問題が残るが、政治も東電幹部も大きいところを見なければなるまい。あの班目ですら「中断は悪化をもたらす」との判断を示しているではないか。武藤自身も「原子炉を冷やすという判断は技術的には妥当だったが、報告が遅れたのは残念だった」と述べている。危急存亡の時にその妥当な判断をした社員を「処分」するということでは、“御政道”が成り立たない。2700人の現場の士気を阻喪させる。事故対策はこれからという時に現場がやる気をなくすことが一番危険なのだ。細野は「きょう福島第一原発の吉田所長と直接話をして確認をした。海水注入を継続したことは当時困難な状況をどう乗り切るか判断して決断をしたわけで、やむをえない状況と思う。事故対応に欠かせない人物だ」と述べ、所長を擁護した。その通りだ。班目が「中断がなかったのなら、私はいったい何だったのでしょう。頭の中は、はてなマーク」と馬鹿なコメントをしているが、何だったのかを教えよう。「官邸迷走の発生源」だったのだ。「処分」するならまず菅、次いで班目だ。
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