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http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/05/post_767.html
1976年のロッキード事件発覚時に、田中角栄元首相と東京地検特捜部の両方を密着取材した田中良紹さんが、事件の真相と日本政治の知られざる内幕を取材メモを元に再現したノンフィクション『裏支配』が 、今年1月に電子書籍で復刻発売された。復刻版では、2003年に単行本として出版されたものにさらに加筆し、2009年の政権交代までの日本政治の問題点を明らかにした論考も加えられている。
『裏支配』を電子書籍版で復刻した理由とは?
いま、日本の政治について考えなければならないこととは何か?
日本政治の表とウラを取材してきた、著者の田中良紹さんにインタビューを行った。
▽ ▲ ▽
── 2003年に出版された『裏支配』が、03年以後の政治状況も加筆され、電子書籍化されました。この時期に電子書籍化しようと思った理由はなぜでしょうか?
私がこの本で言いたかったことは「政治は変わらない」ということです。政治とは所詮は人間のやることで、時代が変わっても、その本質はそれほど変わらないんですね。
それを実感したのは、この本を執筆中に取材メモをひっくり返していたときでした。いまになってメモを読んでみると、現役の記者として取材していた1980年代の半ばにはまったく意味の分からなかった話が、「なるほど」と感じることがたくさんあったんです。
たとえば「中曽根元首相を大勲位に」という話は、1984年に田中角栄がすでに言っている。これは『裏支配』にも書いていますが、角栄は84年の時点で86年に中曽根に衆参ダブル選挙をやらせて自民党を大勝させ、自民党の党則を変えて自民党総裁を3期つとめさせると話しているわけです。その結果、中曽根は佐藤栄作と肩を並べる長期政権となり、将来は大勲位を受ける。その話を聞いた時は、にわかに信じがたい話でしたが、今になってみるとそれがちゃんと実現しているわけです。
■みんな中曽根首相が嫌いだった
いまでこそ中曽根の評価は高いけど、当時は公明党も民社党もみんな中曽根のことが大嫌いでした。支えているのは田中角栄だけ。言うならば、田中角栄が手をひいたら中曽根政権が潰れてしまうわけです。だから、中曽根はこの本にも書いてあるとおり「私のような浅学非才の者が・・」などと地べたに頭をこすりつけんばかりにしながら、政権運営をしていく。そんな中曽根に角栄が「大勲位を与える」と話していたんだから、当時のほとんどの人が信じられなかった。
じゃあその中曽根をいつまでやらせるかとなったら、角栄はダブル選挙後の1年までと考えていた。そして、実際にその通りになった。政治のシナリオライターというのはすごくて、角栄が倒れたあとは中曽根が自力で政治をやるんだけど、シナリオはずっと後まで生きているわけです。
── そういうシナリオは、角栄の一番近くで取材していた当時の記者たちも気が付かなかったのでしょうか
政局の渦中にいる記者というのは、政治の流れはわからないんですよ。実際、私もわかりませんでした。後々になって理解できたことがたくさんあって、政治は一歩引いた場所から見ないとわからないんです。
■政治は繰り返す
その意味で「政治は繰り返す」ということも今になれば納得できます。
自慢するわけではありませんが、中曽根が後継首相を指名するとき、竹下登が指名されると予測した記者は私だけでした。新聞もテレビも、次期首相を安倍晋太郎だと思いこんでいて、全社が間違えました。それでも新聞が一面で恥をかかなくてすんだのは、夜中の12時ごろに中曽根裁定が下ったから朝刊の記事に間に合ったからなんですね。TBSでも、私が22時に出演した番組の時点では「竹下登」と言ったのに、その後の番組では当時の政治部長が「安倍で決まり」と言っていました。
なんで私だけ「竹下登」と言えたのかというと、それは「誰々が○○と言っている」という情報を集めてそこから予測するようなことはせず、過去の歴史を振り返って判断したからなんです。
当時、自民党の歴史で首相が禅譲された前例はひとつしかありませんでした。それは池田勇人が病気で倒れ、佐藤栄作を後継指名したときです。この一件しか政権の禅譲はなかった。そこで、池田勇人の秘書官だった伊藤昌哉さんに「なぜ、佐藤栄作を指名したのか」と聞いてみたんです。すると、彼はこのようなことを言いました。
「お前、後継指名なんて怖いことはできないよ。佐藤を指名したのは、佐藤派が最大派閥だったからで、もし違う奴を指名して自民党の中で波風が立ったらどうする。池田勇人は最悪の総理として歴史に残る」
私は「なるほど」と思った。となると、この理屈では当時の政治状況で中曽根が後継指名できるのは、自民党の最大派閥を率いる竹下登しかいないとなります。
ただし、簡単に最大派閥の領袖であることを理由に次の首相を竹下に決めてしまったら、政治にならない。だから、すぐに竹下に決定されないよう、いろんな仕掛けが出てくる。中曽根にとっても、最初から「後継は竹下」と言ってしまったら身もフタもない。「後継は竹下ではない」とみんなに思わせて、最後は竹下にするところに、政治的な意味があったわけです。
■ガセ情報もグルグル回ると真実になってくる
つまり、後継指名で流れてくる情報はすべて目くらましで、それに政治記者は全員踊ってしまって、政治家も一緒に踊ってしまった。「後継は安倍晋太郎」という情報が流れた後に「竹下派が祝賀会の予約をキャンセルした」という情報も流れると、それがまた永田町に流れて「後継は安倍に決まった」となるわけです。
おかしな話だけど、情報というのはグルグル回っているうちに、ガセ情報も本当になっていく。あの時はこのことを身をもって経験しました。でも、最後には収まるところに収まる。取材をしているときにはいろんな情報が流れてくるけど、そんな情報に振り回されず、どこかで全体の状況を俯瞰で見る目がないと政治は読めないということです。
■ロッキード事件で変質してしまった田中角栄
── 『裏支配』でも書かれていることですが、ロッキード事件が後々の政治に大きな影響を与えたということがよくわかります。これは現在でも続いているのでしょうか
日本の政治の混迷はロッキード事件からはじまり、それはいまでも続いていると思う。あの事件以来、日本はおかしな方向に狂い始めたのではないでしょうか。『裏支配』でもロッキード事件について、もう一度考えるべきだということを書いたつもりです。日本の政治がどんどんおかしくなっていくことは、事件発覚から田中角栄が倒れていく過程を見るとよくわかります。
その意味で検察の罪は重い。政治が検察権力からの介入を受け、国民生活にマイナスの影響を与えています。成熟した国家というのは、倫理の問題で国民生活を犠牲にはしないんですよね。倫理は倫理で大切なんだけど、それは別の場所でやればいい。少なくとも、政治は混乱させられることなく、粛々と進めなくてはいけないのです。司法の場で裁くなら裁けばいい。クリントン元大統領もホワイトウォーター疑惑で騒がれましたが、それで議会が停滞するようなことはありませんでした。一方、ロッキード事件のために日本の政治はどれほど停滞してきたか。本音では、政治家も「政治とカネ」の問題が大切だなんて思っている人はいません。
だからこそ、いまは「政治家に必要な資質とは何か」について考えないといけない。その点、田中角栄は有罪判決を受けたにもかかわらず、いまでも人気投票をやると上位になりますよね。その意味も考える必要がある。なぜ、角栄は人気があるのか。理由は様々だと思いますが、おそらく、インテリほどああいう人は嫌いで、庶民はそこはかとなく親近感を持つのでしょう。
私は、民主主義って不思議だなといつも思うことがあるんです。大衆って愚かなんです。テレビ局で仕事をしていたとき、クレームの電話を受けていると、建前で物事見て、「人間として許せない」みたいなことを言ってくるエセモラリストがたくさんいる。でも、選挙結果はすごい。それほど大きな間違いをしたことはなく、突拍子もなくヘンな結果は出ないものなんです。そういうものに触れるものを田中角栄は持っていたのではないでしょうか。
だから、かえすがえすも田中角栄という政治家を潰してしまったのは残念だったと思う。有罪になって世間がたたき続けたことで、そこで彼は逆に強くならざるをえなくなってしまった。田中角栄という人間も無理をしすぎて、ある意味で変質していく。これは悲劇としか言いようがありませんでした。
──自民党の凋落を背景に、2009年には政権交代がおきました。それから1年半が経ちましたが、新しい政治の流れはまだ見えてきません。はたして政権交代に意味はなかったのでしょうか
私は、政権交代の意味がまったくなかったとは思っていません。政権交代によって、今まで日本のどこに問題があるのかわからなかったものが、少しは見えてきたのではないでしょうか。たとえば、強すぎる参議院、アメリカと外交交渉できない政治家、司法とメディアの馴れ合い。政権交代後にこういったことがどんどん明るみに出てきていますよね。だから、いまの日本は、これまで隠されてきた問題点が「あぶり出し」されているんです。
だから、いまこそ日本人は「政治とは何か」を勉強するいい機会なんです。冒頭にも話したように、政治の本質はそれほど変わっていません。『裏支配』に描かれている80年代の政治の生々しい話を読んでいただければ、いまの政治の裏側で何がおきているかを理解し、「日本の政治をどうすればいいのか」を考えるための助けになるのではないかなと思っています。
(文中敬称略)
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