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独自入手の極秘資料が暴く 国民欺く東電賠償スキーム[週刊ダイヤモンド]
(ダイヤモンドオンライン 2011年5月20日配信掲載) 2011年5月23日(月)配信
東京電力の福島第1原子力発電所の事故の損害賠償をめぐり、本誌は政府が賠償スキームの根拠とした極秘資料を入手した。詳細を分析すると、国民だけに負担を強いる賠償スキームのいびつな構造が浮かび上がった。与党内からも批判が噴出し、その法案成立には暗雲が垂れ込めてきた。
「せっかく救済案をまとめたというのに、このままでは東電が倒産してしまう」
5月中旬、金融政策に詳しい民主党の中堅議員は、こんなことを口にした。東京電力の経営破綻が現実のものとなりつつあると感じていたからだ。そんな事態になれば、金融市場は大混乱に陥りかねず、危機感を強めていたのだ。
政府は、東電の福島第1原子力発電所事故をめぐる損害賠償が巨額になることを受け、賠償を支援するスキームの策定を急いでいた。5月に入ってからは閣僚間で詰めの作業を進め、13日に正式な政府案として発表する。
その中身は、一義的には東電が賠償責任を負うものの、賠償額が大き過ぎて支払えなくなった場合には、官民で新設する賠償機構に投入した資金を使って支援するというものだ。
ところが、政府内の了承も取り付け、あとは開会中の通常国会に法案を提出するのを待つだけだというのに、民主党内は大混乱に陥っていた。
その中身を理解するために、まずは賠償スキームの詳細について触れておく。まず、被害者への賠償金の支払いを官民で支援する「賠償機構」を設立、この機構に銀行が融資を行い、その融資には政府保証を付ける。
機構には、東電を含む原発を保有する電力会社も負担金を拠出、政府も現金と同義の「交付国債」を発行して機構に注入する。こうして資金が集まった機構が、東電の優先株を引き受けるなどして、東電に資金援助するかたちだ。
そのうえで、今度は下の表(※サイトでご確認を)に目を転じていただきたい。これはシミュレーションのポイントをまとめたもの。試算の前提条件として、被害者への賠償金を10兆円と仮定し、2011年度から5年にわたって年間2兆円ずつ支払うことにしている。その資金は機構から援助されるが、東電は機構に対し、負担金というかたちで25年かけて返済する設定だ。
ここで押さえておいてほしいのは、このシミュレーションが、「絶対に東電を破綻させない」という大前提で作成されている点だ。理由は二つ。電力の安定供給を維持しつつ、確実な賠償の支払い義務も負わせる必要があるためだ。
そのため出発点として、この資料には、「社債でのリファイナンスがメインストーリー」とある。つまり社債を発行し、自ら資金調達できる状態にまで自立することがゴールとされているのだ。
それゆえ、東電が15年度から社債を7000億円発行すると想定(@)。そのためには、前年度には黒字化しなければならないし(A)、社債発行には格付けでA格が必要。そこで、自己資本比率が最低でも10%を維持していなければならないと考えている(B)。
11年度に10兆円の賠償金が負債に乗ると、東電は即、債務超過に陥る。そのため、「機構宛請求権」なるものを資産側に同じ額だけ計上して相殺している。
資産と負債に等しい額を乗せても、維持しなければならない自己資本比率は引き下がるから、11年度に機構が優先株を引き受けるかたちで1兆8000億円、資本注入することにしている(C)。
それでもなお、原子力発電の代わりとなる火力発電の燃料費がコストを押し上げるため、12年度末には自己資本比率が10%を下回る危険性がある。それを回避するためには約1兆円の電気料収入の増加が必要で、その多くを電気料金としていとも簡単に転嫁するとしている(D)。こうした“荒業”を使わなければ、社債の発行やリファイナンスもままならず、東電は破綻の憂き目に遭う。そうならないように、さまざまな数字を“創作”したものといえるのだ。
ましてや前提条件が甘い。格付けが維持されていても社債を発行できるとは限らないし、自己資本比率が10%以上であればA格かといえば、「それだけで決まるわけではない」と格付け機関関係者は口を揃える。原発の廃炉費用も、10兆円という見通しもあるなかで、わずか1.5兆円にすぎない。
そしてなにより、賠償金を10兆円と仮定しているが、バランスシート上で資産と負債に同額を計上しているため、賠償額がいくらであろうと東電自身はなにも傷まず支払うことができるという奇策が講じられているのだ。
すべては電気料金に転嫁?
25年間で30万円上乗せ
しかし、東電がこうしたスキームを使わねばならないほど追い込まれているかといえば、そうでもない。
東電が取り組むとしているコストカットは、5兆5000億円の営業費用のうち、人件費の1割カットなどでわずか3100億円にとどまる。少なくとも6000億円は持っているとされる不動産や株式といった資産の処分額は、3000億円にすぎず、これとは別に1000億円の海外資産も保有したままだ。
東電だけではない。株主責任という意味でいえば減資するのが普通だが、株主の負担は検討されていない。それどころか、18年度からは既存株主への配当を再開させるとしている始末だ。
金融機関や社債権者に至っては、毎年1545億円の利息が据え置かれており、まったく傷まない。銀行側は「3月に行った超低金利での東電への緊急融資2兆円で、十分な責任を果たしている」と反論するが、こうした状況で利息が保証されるというのも、なんとも都合のいい話ではある。
つまり、東電はもちろん、本来責任を負うべき利害関係者すべてが責任を逃れるスキームといえるのだが、唯一、負担を押し付けられている主体がいる。国民だ。
内部資料を基に電気料金を試算してみると、一般世帯の月額負担を6142円とすれば、東電管内の一般家庭の負担は25年間で約30万円上乗せされる。全国で見ても1万0800円(中国電力)〜3万8700円(関西電力)だ。
なにも電気料金への転嫁だけではない。賠償機構に入る資金を見れば、その出どころはすべて税金だ。いみじくも、財務省幹部が「国が支援に乗り出せば、電気料金の値上げか増税は避けられない」と明かすように、結局負担を強いられるのは国民だけなのだ。
菅政権は、こうした欺瞞に満ちた賠償スキームについて、今国会で法案を提出、可決する構えを見せていた。だが、現時点では法案提出すらされておらず、6月22日に期末を迎える会期の延長さえ態度を決めかねている。
さらには、身内からの思わぬ反発に怖じ気づいたとの見方もあり、永田町では、とりあえず法案提出を見送り、8月にも召集する臨時国会に審議を先送りするのではないかとの観測までも浮上する。しかし、たとえ会期を延長し、党内をまとめ上げたとしても、今度は自民党など野党との攻防が待っており、波乱要因には事欠かない。
ただ、法案が提出されなければ、東電が破綻の危機に瀕する。それはすなわち、賠償主体が不在になることを意味する。となれば、救済されるべき被害者が賠償を受けられないことになりかねないという、最悪の事態になる可能性をはらんでいるといえる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史、小島健志、山口圭介)
http://diamond.jp/articles/-/12350
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※ 参照投稿
「政府・東電一体化賠償スキームが国民の“健康”と“財布”をむしばむ!:「最後まで国が面倒を見る」が騙しの手口」
http://www.asyura2.com/11/genpatu11/msg/497.html
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