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月刊日本編集部ブログ
自衛隊は便利屋ではない
参議院議員 佐藤正久
政府は自衛隊を活用できていない
── 東日本大震災からの復旧にあたって、自衛隊の活躍が注目されている。しかし一方で、政府は面倒なことをすべて自衛隊に丸投げしているだけのようにも見える。
佐藤 現場の自衛隊員は本当によく頑張っています。しかし、政府は自衛隊を活用しきれていない。まず、自衛隊というものに対する認識が基本的に欠如している。自衛隊は災害救助隊ではありません。
警察、消防、自衛隊とはそれぞれ性質が異なります。自衛隊は、国家を守るという目標のもと、あらゆる事態を想定して日ごろ、武装集団としての団体行動訓練をしており、その組織力、持久力は警察、消防とはまったく異なります。その訓練の応用として今回のような災害対応があるのです。
その点で、政府は適材適所の災害対策を行っているとは言い難い。警察は治安維持、消防は通常の災害対策、そして非常時の、想定を超えたような事態の対処に自衛隊を用いるべきです。たとえば、自衛隊には習志野駐屯地に空挺団がおり、陸路でのアプローチが難しい場所へのパラシュート降下、物資の輸送などを日夜訓練している。もちろん、今回の震災でも出動しました。
しかし、割り当てられたのは空挺としての任務ではなく、福島原発の20〜30キロ範囲内の自主退避区間において、避難状況を調査することだったのです。普段の訓練とは全く関係の無い任務です。その一方で、米軍に頼んで、米軍の空挺団が陸路を遮断された災害地にパラシュート降下し、物資を輸送していた。日本の領土内において初めて空挺団が必要とされたとき、自衛隊ではなく米軍が初の実地任務を行なった、これは屈辱的なことです。
もちろん、自衛隊員はそんな文句は言わず、黙々と任務を遂行しています。しかし自主退避区域で、一軒一軒状態の確認に訪ねて回るのであれば、地域に密着した警察や地元消防団のほうが顔なじみでもあり、効率が良いはずです。空挺団を用いるような任務ではありません。
責任から逃げる指導者たち
── 政府には自衛隊という組織そのものへの理解が不足しているのではないか。
佐藤 震災前、事業仕分けでは、その制服も中国に発注すれば良いということを言っていた。日本を守る自衛隊の制服が中国製である、という事態を屈辱とも思わないのです。
もともと、総理以下、国家から個人の自由や権利を守るという立場で政治家となった人々が政権を握っているのです。
そのため、現政府には、国を守るという意識がありません。
繰り返しますが、自衛隊は災害対策のためだけに存在するのではありません。今回、2万、5万、10万人と投入する隊員の数を増やしていきましたが、この数の増加の根拠は不明確です。今、この時期に日本のどこか別の場所、たとえば新潟や長野で大地震があった場合、ほとんどの戦力は東北に投入されているのですから、対処の仕様がありません。まして、首都直下型の地震があった場合、その時点で日本は壊滅です。
あるいは、今、尖閣諸島を軍事占領されたら、自衛隊はそれに対処することはできません。こうしたリスクを理解した上で、被災地に戦力を集中したのか、きわめて疑わしい。
そもそも、戦力の逐次投入はもっともやってはいけないことです。ところが、福島第一原発への対処において、政府は効果の少ないものから順番に逐次投入していった。
原発へ放水が必要だとなったとき、すべての選択肢をまず並べて、最も効果の高いものから採用するのが常道です。今回の場合、最も効果が高いのはコンクリート圧送車、次に消防車、警察の放水車、最後にヘリコプターによる投下です。
ところが、まず自衛隊にヘリ放水をさせて、それから消防車、最後にようやく圧送車の順番で投入したのです。しかも、自衛隊に「命令」したのではなく、北沢防衛大臣は「ヘリ放水を統合幕僚長が決心してくれた」と言って、責任を部下に押し付けてしまった。
建屋の屋根が抜けており、その上でホバリングして水を投下するということは、被爆する危険性がそれだけ高まるということです。しかも7トンの水を一気に放水すれば原子炉がどうなるかわからないし、霧状に噴霧しても効果はない、どちらにしても効果が極めて疑わしい任務に、命の危険を冒させ、しかもその責任はとらないというのです。
政府の自衛隊に対する態度は、出動を「要請」したり、「決心してもらった」り、一貫して、自分たちは責任を取らないというものです。これで、現場の士気が上がるわけがありません。首相は最高指揮官として決心し、責任を持って毅然として「命令」せねばならないのです。この点で、管直人首相の無責任な対応は万死に値します。
── 3月16日になって、天皇陛下から自衛隊、警察、消防、海上保安庁の労をねぎらわれるメッセージが出された。
佐藤 隊員の士気もおかげでようやく高揚したのです。しかし、最高指揮官である現職総理大臣が隊員の指揮を高揚させえない現在の状態は、きわめて不健全と言えます。
将来作戦を立てよ
── 官邸はどういう対応をするべきか。
佐藤 こうした非常時には、自衛隊の実務を知る制服組を官邸に置く必要があります。自衛隊が日頃の訓練の成果を最高に発揮することができるよう、もっともふさわしい配置をしなければなりません。たとえば、航空自衛隊基地から被災地までの物資輸送を今でも陸上自衛隊にやらせていますが、ある程度物流が回復した現時点で、全輸送を自衛隊が行う必要はありません。民間で出来ることは民間に委託し、そこから被災地隅々までの輸送に陸上自衛隊の戦力を投入すべきです。
また、自衛隊は当面作戦と将来作戦、ふたつの作戦を考えなければなりません。当面の危機に対応しっつ、将来的に発生するであろう間鬼に対して、現段階から手を打って置かなければなりません。 今後、問題となるのは防疫です。春になり、だんだん暖かくなってくる。ところが被災地には今でもご遺体、魚の死骸、ヘドロ、がれきが散乱している。こうしたものが腐敗し、疫病の温床となります。発生してからでは遅いのです。今から、対策を講じる必要があります。これが将来作戦を立てよということです。
── リーダーシップが発揮されないまま、ずるずると事態が悪化している。
佐藤 震災後、無数の対策本部が乱造されていますが、これらは責任を分散するものでしかありません。そして複雑な組織を生み出したことで状況把握はますます遅れ、判断はますます遅れ、人災はますます拡大していくのです。
枝野官房長官が活躍しているという評価もありますが、私はそうは見ません。むしろ、官房長官としての職責をまったく果たしていない。官房長官は政府のスポークスマンではないのです。記者会見は副長官がやればよい。官房長官の役目とは、閣僚間の調整機能です。たとえば、災害対策には松本防災大臣が、原発対策には海江田経産大臣があたっており、それぞれに被災者支援対策本部がある。 すなわち、地震、津波の被災者対策と原発による被災者対策と、指揮系統が二つあるということです。これらのすり合わせを行うのが枝野官房長官の役目です。しかし、連日記者会見で「ただちに〜なものではない」を繰り返すだけで、乱立する組織間の調整などまったくできていない。
国柄を守れ
── 国家的危機だから、自民党は大連立に応じるべきという意見もある。
佐藤 私は反対です。災害については、協力する。しかし災害だからといって、国家の在り方、国家運営の在り方についての根本的立場、党の綱領をねじ曲げるというのは全く別の問題です。自民党と民主党では、守るべきものは何か、という国家観が根底から異なる。
守るべきものは、国家としての平和・独立という主権、国益、国民の生命・財産だけではない。日本という国の国柄を守らなければならないのです。ここが民主党と決定的に違っており、この一点は絶対に妥協Lではいけないものです。
──「国柄」とは。
佐藤 被災地では、被災された皆さんが暴動を起こすでもなく、辛い中耐えて、頑張っていらっしゃる。これを海外は驚異をもって報道しているが、困難にもじっと耐えてゆく、時には自己犠牲さえ厭わないという精神的高貴さ、清らかさが示されたということです。
また、被災地で自衛隊員は、想像を絶するような状況下で任務にあたっている。あまりに悲惨なので、報道もされないほどです。
道路復旧の任務であっても、がれきの下に人がいる可能性があるから、ブルドーザーで一気に撤去など出来ない。だから一つ一つ丁寧に確認しながらの作業となる。遺体が見つかることがあるが、これは通常の状態の遺体ではない。津波にさらわれ、瓦礫で損壊し、さらに腐敗が進行している。こうした遺体の運搬も行うのだが、その過程で腐敗した体液が作業着に付着する。常に腐乱死体の体液の臭いがする中で作業をするのは通常の神経では耐えられない。
事業仕分けのおかげで、隊員に支給されている作業着は二着しかない。だから、それでも耐えながら作業を続けているのです。
脱臭のためファプリーズもありますが、これも無臭のものでなければならない。香りが付いているものだと、その香りを嗅ぐたびに悲惨な現場を思い出すことになるからです。
また、これは禁止されているのだが、隊員の中には自分の食糧も被災地に配っている人間もいます。自衛隊の炊事車は現在、被災地のために使われているから、隊員の食料はパックや缶詰の携帯食程なのだが、それすらも配ってしまう。食べるとしても、被災地の方々に遠慮して、遺体を運搬した車の中で、臭いに耐えながらようやく食べているという状態です。
福島第一原発周辺でも状況は同じです。放射線量の測定、除染に大宮の化学部隊が投入されているが、これは放射線対処ができる唯一の部隊です。そして、実任務に出動する以上、彼らは覚悟を決めている。
こうした精神的困難に耐えつつ、自衛隊員は任務を遂行している。なぜこのようなことができるのか。
自衛隊員は入隊するとき、次のように宣誓する。「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを誓います」と。
かつて教育勅語に示された、自己犠牲の精神、日本の伝統的価値観、日本人同士の紐帯、これこそが我々が守るべき国柄です。そのために自衛隊は日夜訓練に励み、こうした災害時に、どんなに理不尽と思われても、黙々と任務を遂行するのです。
阪神大震災の時もそうだったが、こうした災害後には、かつて自衛隊の存在を否定していた人たちが「軍備はなくして、災害復興のためにだけ存続させればよい」という議論を始めるものだが、先に釘を差しておきたい。災害復興のための訓練だけをしていたとしたら、今回、自衛隊はこのような活動はできなかったでしょう。
かつてイラクで復興任務にあたったとき、イギリスの将官から次のように言われた。「あなたたちが担うのはウサギの任務かもしれない。しかしウサギの任務をウサギの力でやっていては、任務の完遂はできません。ウサギの任務であっても、ライオンの心で取り組まなければならないのです」と。
自衛隊は、国防という、極限状態を想定して厳しい訓練をしている。だからこそ、今回の災害復旧にも対応ができたのです。最初から災害対処しか考えていなかったら、今回のような「想定外」の事態には到底対処できなかった。
国防とは、守るべきものとは、自衛隊とは何か。ここを誤魔化して政治を進めではならないのです。(聞き手・構成 尾崎秀英)
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