http://www.asyura2.com/11/senkyo113/msg/506.html
Tweet |
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/8764
福島第一原子力発電所1号機では、被災の翌朝から早くも炉心溶融(メルトダウン)が始まっていたことが公表された。また、土壌や農作物、海洋生物にも深刻な放射能汚染が広がっていることが次々と明るみに出て、今回の原発事故は世界最大というのが世界の共通認識になっている。
【柏崎の時にも繰り返した「想定外の地震」】
例えば、英フィナンシャル・タイムズ紙はいくつかの記事の中で、「過去25年間で世界最悪の原子力災害をもたらした・・・」と福島第一原発の事故を形容している。
旧ソ連のチェルノブイリ原発事故以上という認識だ。日本は有難くない世界一の座をまたしても手にしてしまった。
しかし、「最悪のケース」は大きな改善に向かう最大のチャンスでもある。二度と原発の事故を引き起こさないために、その変化を日本は求められている。
2007年7月16日午前10時13分に発生した中越沖地震によって、東京電力柏崎刈羽原子力発電所は7基ある原子炉がすべて緊急停止した。
この時にも、今回の福島第一原発と同じ表現を政府と東電は繰り返し使っている。
「想定外の地震だった」
3階建てビル以上の大きさがある変圧器が火災に見舞われ、使用済み核燃料プールからは放射能で汚染された水があふれ出た。
そして、3月11日の福島第一原発の事故である。柏崎の事故は放射能の汚染水を日本海に垂れ流すという問題は引き起こしたが、福島第一原発のような惨事にならずにすんだ。
しかし、原発の現場で働く人たちは「もしも」の危機感をいやというほど味わったはずである。そしてその危機意識を改革につなげていれば福島第一原発の事故は恐らく起きなかっただろう。
今回は、柏崎と同じ轍を踏むわけにはいかない。何しろ世界最悪の原発事故となったのである。次の事故は許されない。今までの原発行政のあり方を根底から洗い直す必要がある。
中部電力浜岡原子力発電所の運転休止は当然のことだ。大きな揺れを受けて原子炉や原子炉格納容器の一部が塑性変形を起こしている危険性がある柏崎刈羽原発の廃炉も検討すべき課題だろう。次に大きな揺れが来れば、次は破断に至る危険性が高いからだ。
今週、政府が示唆した経済産業省の原子力安全・保安院を経産省傘下から切り離すなどの組織改革も必ず、そして徹底的に取り組まなければならない。
【言葉だけ上滑りして実行力の全くない政権】
福島第一原発2号機内の様子〔AFPBB News〕
福島第一原発の事故を引き起こすに至る原因を作った人々に今後の安全対策を作らせるのでは、表現が汚くて恐縮だが、「泥棒に防犯対策をさせる」ようなものだ。
歴代の原子力安全・保安院院長、内閣府の原子力安全委員会委員長などの責任も厳しく追及すべきである。
国の原子力行政に関わってきた人たちの責任を曖昧にしたまま対策を講じようとしても、そうした偉い方々はあの手この手で一生懸命責任逃れを考えるために、十分な対策にはなり得ない。そして事故が再発する危険性が出てくる。
しかし、こうした組織や体制の改革には強力なリーダーシップがいる。今の政権を見ていると、口ではいろいろ言いながら、全く実行力が伴わないので極めて心配になる。
そんな日本の事情は海外メディアもとっくに見抜いている。今週掲載したFT紙とエコノミスト誌からそんな表現を抜き出してみよう。
【地震の少ないドイツの方が福島の教訓を政策に生かしている】
「これまでのところ、福島第一原発の危機が日本政府の長期的な政策に対して与えた影響は、遠く離れたドイツに与えた影響ほどには大きくないように見える」
「ドイツは地質学的に日本より安定しているにもかかわらず、ドイツ政府は今、原発の段階的閉鎖を2036年まで先延ばしする計画を覆そうとしている」
これはFT紙「日本の原子力信奉はまだ終わっていない」で指摘されていたものだ。世界最悪の原発事故を起こした日本よりも、ドイツの方がはるかに強い対策を講じているという。
しかもそのドイツは日本と違ってほとんど地震がないにもかかわらず、である。菅直人首相は今度世界の首脳会議で会う時にはアンゲラ・メルケル首相の爪の垢をもらった方がいいかもしれない。
エコノミスト誌の「原発見直し:プラグが抜けた日本」では次のように書いている。
【日本の首相には到底できないだろう・・・】
2号機内に入った作業員(5月18日)〔AFPBB News〕
「菅直人氏は、原子力は日本のエネルギーミックスの1つとして存続するものの、安全性を高め、規制を改善し、より想像力に富んだエネルギー政策の一端を担うようにしなければならない、ということを明確にしている」
「しかし、そのためには、息が詰まりそうな電力会社の地域独占体制を崩さねばならない。今のところ菅氏の発言は、到底それができるほど力強いものではない」
口ではつべこべ言っても、抵抗の大きい改革なんて日本の首相にはできっこないさ、というわけである。
皮肉たっぷりのエコノミスト誌はこの記事の冒頭で、日本の流行語を紹介している。
「ここ数年は日本のツァイトガイスト(時代精神)と言えば、父親世代が担ったサラリーマンの役割を避け、セックスよりも買い物が好きな若い草食動物を意味する『草食男子』だった。原子力災害から発生して2カ月経った今、流行語は『節電』となった」
【地に落ちた日本男児の評価】
奥さんの尻に敷かれ、いつも買い物や食事に付き合わされる「草食男子」の日本のリーダーには、問題解決能力など根から備わっていないのだと言いたげである。やれやれ日本男児も見下されたものだ。
しかし、よくJBpressの匿名読者のコメントにあるように「この英国人めが何を言いやがる」というような反応をしては、それこそセックスのできなくなった草食男子そのものである。小さい犬ほどよくほえるという。
ここは日本の未来を見据えた改革の狼煙をしっかりと上げ、最後までやり切ってみせることである。もちろん賞味期限が切れたしがらみだらけの古い鎧は脱ぎ捨てる。そうでしょう、日本男児の菅直人首相。
5月20日付の日本経済新聞は、電力自由化に向けた発電と送電の分離案が政府内で浮上していることに対し、電力会社の幹部の話として次のように書いている。
「電力会社は価格競争を避けたい事情もある。『国策民営』でリスクが高い原子力発電事業を抱えながら送電事業を分離されれば、『新規参入者にコスト面では勝てない』(電力大手幹部)という本音もちらつく」
【東大に原子力工学科はなくなった】
電力会社の幹部が原子力発電のコストが高いとはっきり認識しているのである。原発の設備投資を電気料金に転嫁できる仕組みと、原子力関連の補助金など多額の税金が地元に落とされる「利権」がなければ、純粋のビジネスとしては割が合わないことを証明している。
一方、大学生の間でも原子力はずっと前から全く割に合わない科目になっているという。伊東乾さんの「とっくの昔につぶれた東大の原子力工学科」記事によると、1990年代から東京大学の工学部から原子力工学科が消えたという。
「そんな看板を掲げていても、優秀な人材は集まらず、学生を募集しても定員割れを起こしてしまうから。東大工学部はすでに15年ほど前、初期の原子力という技術に若い新卒者をどんどん入れる、という判断を放棄しているわけです」
学問は割りに合うか合わないかで決めるものだとは思わないが、研究者の研究対象として魅力的ではなくなっていることは事実だろう。
5月20日の朝日新聞には内閣府の前原子力委員長代理の井上俊一さん(現・高度情報科学技術研究機構会長)のオピニオンが掲載されていた。そこで井上さんは原子力の技術について次のように指摘している。
【技術に対する謙虚さの喪失が福島の事故を引き起こした】
「私の見るところ、東京電力は、軽水炉はもはや完成された技術で、安全研究など余計な研究開発をする必要はないという態度だったように思える。最大の電力会社が技術に対する謙虚さを失ってしまったことが最悪の結果を招いた」
研究者や技術者にとって魅力が薄れコストも高くなった原発。一部の人々の利権を守ることが最大目的化してしまっている。ここに莫大な国家予算が使われ続ける仕組みや、電力料金の決定方法などもゼロから考え直すべき時だ。
長年享受してきた利権はそれを受けてきた人々の生活の基盤にもなってしまっており、簡単に崩すことはできない。しかし、世界最悪の福島第一原発事故を引き起こしてしまった今は、それができる最大のチャンスである。
ここで口先だけの場当たり対応で何もしないまま過ごしては、「日本のリーダーはやっぱりセックスのできない草食野郎だった。せっせと節電にでも取り組んでろ!」と非難されても反論できない。菅さん、谷垣禎一さん、団塊世代の代表であることもお忘れなく。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK113掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。