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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/7686
4月9日の朝、ツイッター上で民主党の原口一博衆院議員が「容認できません」とつぶやいた。
「コンプライアンス室長の郷原先生と『流言飛語に関するインターネット管理者に対する』総務省要請についてお話をいたしました。どのような経緯で発せられたのか? 私が知った経緯が事実ならば総務省は寧ろ防波堤の役割をしようとしたものの押し切られた形になっています」というのだ。
これに、私は興味を持った。総務省と言えば、かつて原口議員が大臣を務めていた官庁である。そこが出した要請に関して「容認できない」というのだから、ただごとではない。
そこで原口議員に取材を申し込んだ。
「フリージャーナリストです」と言って政治家に取材を申し込むと、「どこの媒体に書くつもりだ」と訊かれるのが常である。先方にしてみれば忙しい時間を割いて、どこの馬の骨か分からない人間に会うなど乗り気にならないだろう。会って話しても、それがメディアに載る保証もないのだ。だから、かなりの確率で断られてしまう。媒体を決めない取材依頼だったので、正直、今回も体よく断られるだろうと覚悟はしていた。
ところが、原口議員はすぐに日程を指示してきた。ちょっと面食らったような気持ちで、私は指定された日時に議員会館の原口議員の部屋を訪ねた。
孫社長は総務省要請に抗議してツイッター中断
原口議員のインタビューを紹介する前に、総務省の「東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する要請」(以下、「総務省要請」)について触れておかなければならない。
ご存じの方も多いと思うが、4月6日付で電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本インターネットプロバイダー協会、日本ケーブルテレビ連盟の4者に宛てて出されたものである。
3月11日に起きた東日本大震災に関係してインターネット上に流言飛語が流布しているという前提で、次のような「要請」が行われている。
<東日本大震災後、地震等に関する不確かな情報等、国民の不安をいたずらにあおる流言飛語が、電子掲示板への書き込み等により流布しており、被災地等における混乱を助長することが懸念されます。
つきましては、インターネット上の地震等に関連する情報であって法令や公序良俗に反すると判断するものを自主的に削除することを含め、貴団体所属の電気通信事業者等に、表現の自由にも配慮しつつ、『インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン』や約款に基づき、適切な対応をおとりいただくよう御周知いただくとともに、貴団体においても必要な措置を講じてくださいますようお願い申し上げます。>
この文章は私のような「一般人」には、「インターネット上の流言飛語について、削除も含めて対応しろ」と言っているとしか読めない。実際、そういう受け取り方をした人は多かった。
ソフトバンクの孫正義社長は、今回の東日本大震災で個人資産から100億円もの義援金を出しただけでなく、原子力発電所事故でも積極的な発言を続けている。孫社長は、かなりのツイッター利用者であることでも有名だ。その孫社長が、この総務省要請に抗議するとして3日間のツイッターでの発言中止を発表、実際にやってしまった。それは、私と同じ受け取り方をしたからにほかならない。
そうした総務省要請だからこそ、原口議員も「容認できない」とつぶやいたのだ。ただし、総務省は「防波堤の役割をしようとしたものの押し切られた」というのだ。
暴走して総務省を押し切った省庁とは?
新しくなって広くきれいになった議員会館の部屋で、原口議員はさっそく本題に入った。彼は今回の総務省要請について、次の3つを指摘した。
(1)要請を出すに当たって政務三役に上がっていなかった。
(2)某省庁の暴走を許した。
(3)普通の人なら抑圧に感じる。
「政務三役」とは内閣が任命する大臣、副大臣、政務官の3人のことで、各省庁のトップである。そのトップに相談もせずに業界団体への要請を出したのだから、問題だ。
しかも政務三役は政治家で、役人が政治家を無視したことになる。民主党政権が標榜する「政治主導」への真っ向からの挑戦だったと言ってもいい。二重にも三重にも問題のある形で、総務省要請は出されたというのだ。
次に原口議員が指摘した「某省の暴走」である。総務省要請は、総務省が独断で出したものではない。この要請が出されるに当たって、同じ日に「被災地における安全・安心の確保対策ワーキングチーム」の会合が開かれ、対策が決められている。
その中の1つに「流言飛語への対応」があり、「流言飛語に惑わされることのないよう、関係省庁が連携して、広く注意喚起のための措置を講じる」と決めている。
中でもインターネットを問題視し、次のように決定している。「特に、インターネット上の流言飛語については、関係省庁が連携し、これらの実態を把握した上で、インターネット利用者に対して注意喚起を行うとともに、サイト管理者等に対して、法令や公序良俗に反する情報の自主的な削除を含め、適切な対応をとることを要請し、正確な情報が利用者に提供されるよう努める」
ここにある「サイト管理者」を管轄しているのは総務省であり、だからワーキングチームの決定を実行するために総務省要請を出した、というわけなのだ。
ワーキングチームのメンバーには、内閣官房、警察庁、総務省、経済産業省の4者が入っている。原口議員によれば、上記の決定がなされ、総務省要請につながっていったのは、このうちのどこかの「暴走」だったということになる。
「内閣官房ですか?」と私が聞くと、原口議員からは「『某省庁』と申し上げたはずです。内閣府は省庁ではありません」との返事が戻ってきた。「どこの省庁か?」と重ねて聞くと、「もっと調べる必要があります」と断言を避けた。
内閣府ではないし、総務省は、原口議員が「防波堤の役割をしようとした」と言っているのだから、これまた「暴走した省庁」ではない。警察庁か経済産業省のどちらか、もしくは両者ということになる。やたらと規制をかけたがるところと言えば・・・なんとなく想像はつくが、確証はない。
総務省は「あくまでも従来通り」のつもり
そして、原口議員の3番目の指摘が「普通の人なら抑圧に感じる」という点である。
「普通の人なら」と原口議員は言うが、孫社長のソフトバンクと言えばヤフー(Yahoo Japan)の筆頭株主である。インターネットに関して孫社長は「普通の人」ではない。そんな孫社長までが抑圧と感じたのだから、かなりの効果である。「それが心配なところではあります」と原口議員も言った。
原口議員によれば、総務省が「防波堤になろうとした」というのは、普通の人に「抑圧」を感じさせないように努めた、ということを言っているらしい。「規制を強化することにならないように、総務省は言葉の使い方に最大限留意しているのです」と説明する。
言葉の使い方で、どう防波堤になろうとしたのか。総務省要請を作った総務省総合通信基盤局電気通信事業部 消費者行政課に直接聞いてみた。
「『従来のガイドラインや約款に基づき』と書いているのは、『従来通りですよ』ということを言っているのです。しかも、『表現の自由にも配慮しつつ』と入れています。わざわざこういう表現を入れたのは、積極的に削除等をやれと言っているわけではなく、あくまでも従来通りですよ、ということを確認するためです」
政務三役に上げなかったことについても、「従来通りだから特に必要ないと考えた。後で了解は取りました」との答え。
従来通りなら、わざわざ総務省要請を出す必要もなさそうなものだ。だが、その質問には、「ワーキングチームの決定にのっとって要請した、と私たちとしては答えるしかありません」と素っ気ない。
結局は「抑圧」としか受け取れない
原口議員は、「総務省としては、規制強化ではないことを確認した上で発表しています」とも言った。
その根拠となるのは、4月8日付で総務省コンプライアンス室の郷原信郎室長の名前で出された「『東日本大震災に係わるインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する要請』について」という文書(PDF)である。そこには、以下のようにある。
「所管の総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政課に同要請の趣旨、内容について確認したところ、同要請は、同22年1月に出されている『インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン』や約款に基づき『適切な対応』をとるという『従前どおりの対応』を求めているに過ぎず、それを超えた措置を求めるものではない、とのことである」
確かにコンプライアンス室は「従来通り」と確認している。しかし、そもそもこんな文書をコンプライアンス室が出さなければならなかった理由を、「情報統制を懸念する声が上がっている」からだと郷原室長も書いている。
いくら総務省が「防波堤」を意識して言葉を選んだとしても、一般的に通じるものではない。問題が起きれば責任回避するための「防波堤」でしかなく、極めて役人的と言うしかない。
それについて原口議員の意見を聞くと、「役所が作った文書を、同じ役所が否定するようなコメントを出したんですから、十分な責任の取り方だと思います。そんなことは、役所の中では大変なことなんですよ」との答えが戻ってきた。
しかし、その説明を素直に認めることはできなかった。
何より、総務省要請を情報統制と懸念する声があったことを認識しながら、「誤解で、通常どおり」と言いながらも、総務省は総務省要請を撤回していない。
さらに総務省のウェブサイトを見ると、「重要なお知らせ」の中に総務省要請は掲げられている。しかし、そこにコンプライアンス室長による文書は掲げられていない。それは、画面を移していってコンプライアンス室のページまでいかないと見ることができない。
「通常どおり」と指摘しているコンプライアンス室の文書を軽視しているとしか思えない。それでいて総務省要請だけを目立つところに置いているのは、それによる効果を期待しているからだとしか考えられない。
ああした内容の要請を役所の名前で出せば、原口議員も指摘するように「抑圧」としか受け取られないのだ。
にもかかわらず、総務省要請を撤回するでもなく、「従来通り」という見解も目立たないようにしているのは、責任を回避しながらも影響力を及ぼしたいと考える、いかにも官僚的なやり方だと指摘するしかない。
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