18. 2011年5月15日 23:16:49: dTB4iKtklI
『東京地裁で最も大きな104法廷に、公判検事の尋問に促された証人の静かな落ち着きのある声が響く。何回も繰り返されたであろう想定問答のせいか、回答に淀みはない。傍聴席がざわついたのは、次の応答の場面だった。 ---06年7月、水谷建設の水谷功元会長が脱税で逮捕される。この件で大久保(隆規秘書)被告と話をしたか。 「大久保さんから直後に電話がありました。『水谷建設さんがたいへんなことになりましたね』と、取り込んでいる様子で話してこられました。『水谷さんから頂戴したカネは山本さんに返したい』と」 5月10日、小沢一郎民主党元代表の政治団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件の第11回公判で、5000万円の現金を川村尚水谷建設前社長が、大久保被告に渡す場面に同席したという日本発破技研の山本潤社長の証人尋問が行われた。 』 これは、2011年5月12日(木)現代ビジネスに掲載されたジャーナリストの伊藤博敏氏の記事『「陸山会公判」で追撃される小沢一郎民主党元代表の本当の敵 細川政権、民主党政権を作った立役者が いま「実力」を発揮できないのはなぜか』の冒頭部分である。続きは下記サイトで読んでいただきたい。 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/4491 ところで陸山会事件の公判も半分以上が終わり、伊藤博敏氏の記事の5月10日を含め、5月は明日16日(月)と24(火)27(金)の4回が行われ山場を越える。ちなみに明日16日(月)の公判傍聴も抽選のようである。 (2011年05月16日 午前9時30分 東京地方裁判所正門玄関1番交付所) http://www.courts.go.jp/search/jbsp0010?crtName=15 5月の残りの公判でも水谷建設関係者の証人尋問が行われるのかは知らないが、水谷功元会長(66才)が弁護側証人として出廷するのはほぼ間違いあるまい。その時の傍聴券はかなりの競争率が予想される。 だがそもそも検察はなぜ公訴事実そのものではなく、動機に過ぎない水谷建設からの1億に拘るのか。2月7日の初公判の冒頭陳述で検察は『4億円の由来は、大久保元秘書らが具体的に説明せず、4億円を貸し付けた元代表も結局、合理的な説明をしていないように、公にできないものだった。陸山会が土地を購入した時期は、元代表の選挙地盤内の胆沢ダム工事の開札時期と同じ。建設業者のうちの1社である水谷建設は小沢事務所から下請け受注を了承した謝礼に大久保元秘書から1億円を要求され、04年10月15日と05年4月19日に5千万円ずつ宅配便用の茶色封筒に入れて渡した。1回目は石川議員が受領、04年10月18日に4億円の一部として入金した。』と主張している。 この事実を立証するために水谷建設の川村尚前社長(53才)や日本発破技研の山本潤社長(56才)の証人申請をしている。だが、5000万×2回=1億のヤミ献金を立証する自信があるなら、ヤミ献金そのものを政治資金規正法違反(不記載)として立件すれば済んだはずである。わざわざ収支報告の時期をずらしたことの動機に悪質性があるなどと回りくどいことをせずにストレートにヤミ献金を取り上げればよかったのである(なお、この1億が贈収賄、あっせん収賄、あっせん利得罪などには当たらないことは刑法を少しでもかじった人間なら解ることなのでここでは触れない。金丸信元副総理の佐川急便事件を想起すれば解る)。 だが1億円の金銭授受を立証する物証(例えば自筆でサインした受取書など)はなく、授受の当事者や関係者以外の証拠能力の高い第三者の目撃証人(石川氏について言えばホテルのフロントなどの人間とか、大久保氏について言えば喫茶室のウェイトレスなどが、例えば「ええその日のことはよく覚えています。その人が私の彼に似ていたし、その日は私の誕生日でもあったので、仕事が終わったら彼と逢う約束をしていて、どんな誕生日プレゼントを用意しているのか想像しながら見ていたら宅配便用の茶色封筒を受け取っているんです。自分の誕生日プレゼントと重ね合わせて想像していたのでハッキリと記憶しています」などと証言すればかなり強い証拠になる)もいない。 結局、検察はヤミ献金を厳格な証明が要求される主要事実にすることを諦め、裁判所が認める可能性は無くとも、せめて法廷で動機の悪質性を世間にアピールするためだけに彼ら水谷建設関係者を証人に呼んだのである。 登石郁朗裁判長もそのことは重々承知であるが、これだけ世間の注目を集めている裁判なので、検察の証人請求を受け入れたのである(検察がやりたいなら言わせるだけは言わせてあげる程度の受け止めだろう)。弁護側は無論反発したが、弁護側の要求した石川議員の秘書の証人申請という本件とは直接関係ないことも認めてあげることで衡平を保ったのであろう。 私はこの検察の対応を見て、国松孝次元警察庁長官狙撃事件で、最終的には不起訴処分にしたオウム信者の元巡査長についての警視庁と同じだと思った。不起訴処分で釈放しておきながら、未練たらたらの記者会見。プロとして恥ずかしくないのか。情けないと思った。水谷建設の証人申請も嘗ての検察ならやらなかったろう。プロとしての矜持が許すまい。 最後にこの事件のことにも触れているある書籍の一文を紹介しておく。 『石川議員の取り調べ 小沢一郎を標的とした動きは、その後、政権交代してからも続いた。 平成二二年一月一五日、石川知裕衆議院議員は政治資金規正法違反容疑で、東京地検特捜部に逮捕された。数回にわたる任意の取り調べで、石川議員は違反の事実を認めていた。通常国会開催前にいきなり石川議員ら三人を逮捕したのは、小沢幹事長(当時)狙いであることは間違いない。なぜなら石川議員は、在宅でいつでも起訴できる状態であったからである。 検察が石川議員ら三人を逮捕したので、陸山会に入金されている四億円の金の中に、水谷建設からの公共工事受注の謝礼である五〇〇〇万円が含まれており、それが土地購入代金に充てられたという客観的な裏付け証拠がある、と私は見た。また、小沢幹事長と石川議員らとの共謀の、客観的な裏付け証拠をつかんでいると私は見た。なぜなら五〇〇〇万円が四億円の中に含まれているとすると、事件に重みがつくからである。 小沢幹事長との共謀の客観的裏付けがなければ、そもそもこの時期に石川議員ら三人を逮捕するということが、通常の捜査ではあり得ないからだ。 ところが、二月四日、石川議員ら三人は起訴されたものの、小沢幹事長は嫌疑不十分処分となった。四億円の中に五〇〇〇万円が含まれているかどうか、その点もうやむやになったようである。共謀の客観的な裏付けもなかったのである。当時小沢幹事長は民主党を中心とする連立政権の、いやしくも幹事長である。そのような人物に狙いを定めて石川議員らを逮捕する限り、私が当初考えていた証拠関係がないと逮捕することはあり得ないのだ。 では、法務検察の小沢幹事長に対する捜査の真の意図は、何だったのだろうか。 法務検察は自民党政権と一体となって、自らの組織を維持してきた。ところが、政権交代があり、法務検察にとって好ましくない事態に陥った。検事総長の国会承認案件、民間人起用、取り調べの可視化法案の成立、無駄遺いの一掃・・・・・・。そしてなにより、これまでひた隠しにしてきた「検察の組織的な裏金作り」や、これまでの政権との癒着、つまり「けもの道」の実態が暴かれることは必至だ、と法務検察は恐れたに違いない。検察は、どうしても表に出せない汚物を自民党政権と共有してきたからである。 だから、小沢幹事長つぶしのために本来の捜査を行わず、言葉を換えれば暴走したのではないだろうか?これを燃料が足りずに突っ込む「特攻検察」と呼ぶ人もいる。そのように考えないと、あの時期に石川議員ら三人を逮捕した意味が理解できない。 市民団体の不服申し立て 小沢一郎への攻撃はまだまだ続いた。 平成二二年二月四日、東京地検特捜部は、小沢幹事長を嫌疑不十分処分とした。これに対し、小沢幹事長を政治資金規正法違反事件で告発した市民団体が、その直後に東京第五検察審査会に対し、不服申し立てをした。それについて、四月二七日、同審査会は東京地検特技部の処分を不当だとし、「起訴相当」であると議決した。 その議決書によると、政治資金収支報告書を提出する際に、「小沢氏に報告、相談し た」という石川知裕衆議院議員と池田光智元秘書の供述が、小沢幹事長の容疑を裏付ける直接証拠になると判断したという。 ではなぜ、特捜部は二人のこのような供述があるのに、小沢幹事長との共謀には嫌疑が十分ではないとしたのであろうか。 おそらく、その二人の供述には具体性がなく、抽象的であると判断したのか、強引な取り調べの結果によって供述が得られたと判断したのか、いずれにせよ公判を維持するに足る供述ではないと認定したことには、間違いない。同審査会によると、市民から選ばれた一一人全員一致の議決だという。市民感覚と特捜部の事実認定はこうも違うものなのか。 いずれにしても、検察がリークした情報が市民の判断に大きく影響したことは確かだ。 東京地検特捜部は、五月二一日、小沢幹事長を改めて容疑不十分で「不起訴処分」とした。検察が起訴しても、公判を維持することができないという判断に、変わりはなかったのだろう。 結局のところ、小沢幹事長をめぐる土地疑惑問題は、「法務検察による小沢つぶし」だと言っていいだろう。小沢幹事長さえ追放し、政治生命を奪えば、当時の鳩山政権だけならなんとか乗り切れると法務検察は考えたのではないか? 検察がリークを続け、世論を誘導したため、小沢幹事長は悪人に仕立てられた。その結果、世論調査によると、小沢は幹事長を辞職すべきとの意見が八〇%を超えたのである。 小沢幹事長は結局六月二日に、鳩山首相とともに辞任した。少なくとも支持率を見る限り、検察は起訴できなかったものの、法務検察の意図はある程度達成できたのではないかと思われる。 そして今後、検察審査会が小沢に対し、再度「起訴相当」の判断をすれば、小沢は裁判所が指定する弁護士によって強制的に起訴される。 指定された弁護士は、検察官役となって公判を遂行することになる。だが、本来の検察官と違って、補充捜査を強制的に行う権限はなく、捜査をするにもその手足はない。そうなった場合、特捜部はいわゆる高みの見物である。特捜部に対し、捜査批判などが起こることもない。 そして公判が続く限り、小沢は表立って政権の中枢に立つことはできないだろう。 (検察の大罪 裏金隠しが生んだ政権との黒い癒着 三井環元大阪高検公安部長 講談社 2010年7月28日発行 65ページ) 』 その後の展開は三井さんの読み通りである。 今朝のテレビ朝日のサンデー・フロントラインで、原発を推進した正力松太郎とCIAの関係、社を挙げて応援する読売新聞と日本テレビ。それに洗脳されてしまう一般市民。日本のマスコミの実態が白日の下にさらされた瞬間だった。
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