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【土・日曜日に書く】政治部・阿比留瑠比 心は見えずとも思惑は…
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110515/plc11051503170004-n1.htm
2011.5.15 03:17 産経新聞
◆被災者への視点なし
3月11日の東日本大震災発生以降、ACジャパン(旧公共広告機構)のテレビコマーシャルがやたらと目につく。その中で印象的なのが、宮澤章二氏の詩「行為の意味」を引用した次の一節だ。
「心はだれにも見えないけれど心づかいは見える」
「思いは見えないけれど思いやりはだれにでも見える」
震災発生から2カ月以上がたつが、いまも避難者は11万人以上に及ぶ。日本中が心を一つにし、国民それぞれができることを持ち寄って助け合うべき危機の今こそ、しみじみと胸に染み通る。
一方、永田町ではこれをもじり、菅直人首相を当てこすったこんな言葉が流通している。
「心はだれにも見えないけれど『下心』は見える」
「思いは見えないけれど『思惑』はだれにでも見える」
とても残念だが、これがわが国のトップの現状だ。そして、それが誰の目にも底の底まで透けて見えるところが二重に悲しい。
「どの時期に、復興を目指す平成23年度第2次補正予算案を提出すべきなのか。現在のところまだ白紙の状態だ」
菅首相は10日の記者会見でこう述べ、野党が要求する今国会での第2次補正予算案提出に否定的な考えを示した。これは、6月22日に会期末を迎える通常国会は延長しないと表明したに等しい。
またいつもの「逃げ菅」か、と嘆息するばかりだ。要は、早く国会を閉じることで野党の追及から逃げ、民主党内の「菅降ろし」の動きも封じ込めたいだけなのだ。
そこに保身はあっても、段ボールで仕切っただけの避難所で暮らし、一刻も早い政府の手当てを待つ被災者への視点はない。
◆一貫して「逃げ菅」
実は菅首相のこの政治姿勢・手法は、今に始まったことではない。昨年の通常国会の閉じ方もそうだった。
菅首相は昨年6月8日に菅内閣を発足させると、予算委員会も党首討論も開かず、民主党の金看板だった郵政改革法案や国家公務員法改正案を廃案にしてまで、わずか8日で国会を閉じた。
当時、荒井聡国家戦略担当相が事務所費で女性下着を買っていた問題など、民主党の政治とカネの問題が噴出していた。菅首相がこうした弱点を野党に追及されるのを避け、内閣支持率が高いうちに夏の参院選になだれ込もうとしたのは明々白々だった。
「議論は、これから選挙になれば、テレビとかいろんな場面でまた、たくさんありますから」
菅首相はこのとき、記者団にこう釈明し、国会論戦がなくても問題はないと強調した。
ところが、菅首相は6月24日の参院選公示日以降、7月7日まで2週間も記者団のぶらさがり取材を拒否して質問から逃げた。
「1対8は議論じゃない。下手をすればつるし上げだ」
7月2日の街頭演説ではこう述べ、前言を翻してテレビでの与野党9党首による党首討論も可能な限り避け続けた。
「菅は能力的にはダメだけど、生き残るための嗅覚はすごい」
民主党の閣僚経験者の一人はこう漏らす。だが、その生存能力は国民のためとは思えない。
◆排除なきシステム
「今後のエネルギー政策では、自然エネルギーと省エネを2つの柱に力を注いでいくべきだ」
菅首相は10日の記者会見でこうも強調した。その大きな方向性自体に異論があるわけではないが、十分な知識・見識に裏打ちされた発言なのか疑問も残る。
4月29日の衆院予算委員会では、菅首相と民主党の渡部恒三最高顧問(衆院福島4区)との間でこんなやりとりがあった。
渡部氏「福島県の原発の電気は、福島県では1キロワットも使っていない。全部東京へ送っている!」
菅首相「福島原発で発電された電気はすべて東京を中心とする関東に送られ、大変豊かな生活を支えてくれている」
だが、実際には東京電力福島第2原発3、4号機で発電された電気の4分の1ずつは、福島県を含む東北電力管内に送られてきた。
これが、「ものすごく原子力に詳しい」と自称し、法的根拠がないまま国会にも閣議にも諮らずに中部電力に浜岡原発の停止を求めた菅首相とその同志の実態だ。
精神分析学者の岸田秀氏は、先の大戦で補給軽視のインパール作戦を主導した牟田口廉也陸軍中将について「どなり散らすしか能がなく、無能で卑劣な将軍の最たる者」として著書でこう指摘する。
「商売の世界なら当然脱落する彼のような男を排除するシステムが日本軍にはなかった」
決して過去の話ではない。現在の政府・政界にこそ当てはまりそうだ。(あびる るい)
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