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東電がJALにならない奇々怪々
(日刊ゲンダイ2011/5/14発行)
「日々担々」資料ブログ
あまりに理不尽なゾンビスキーム
◆分社化し、株主、貸し手責任を問えば国民負担は5兆円減
東電救済スキームが13日、正式決定したが、さっそく国会では、「なぜ、東電はJALのように処理しないのか」と追及された。JALは会社更生法で破綻し、事実上の公的管理の下、100%減資、金融機関は債権放棄した。それなのに、東電は補償は無限なのに、国有化もせず、借金もそのままで、社債も保護される。きのうになって枝野官房長官が金融機関の貸し手責任に言及したが、その行方は不透明。揚げ句が電力9社が金を出す新機構設立で全国的な電気代の値上げ必至のスキームなのである。
国民の批判をかわすため、菅首相と海江田経産相は歳費返上を言い出したが、ええかっこしいのパフォーマンスだ。政治責任を感じているのであれば、国で補償してやればいい。東電に責任を押し付けるふりをして、結局、国民に負担を付け回す。自分は責任から逃げて、そのくせ、形式的に歳費だけは返上する。菅の卑しさが見えてくるが、そんなことをしなくても、東電の賠償問題をスッキリ解決する方法はあるのである。
中でも注目されているのが、産業再生機構で活躍した現役の経産官僚、古賀茂明氏が提言した「東京電力の処理策」だ。古賀氏のプランは、会社更生法や民事再生法に近い形を取り、東電の資産売却を進め、株主責任、金融機関の貸し手責任も厳格に求めるものだ。このスキームであれば、国民負担は5兆円近く減るという。
処理スキームは2段階。まず特別立法で「東電経営監視委員会」のような独立組織を設立する。ここが管財人の役割を果たし、東電の資産査定や賠償額確定作業と並行して株式の100%減資、銀行の債権放棄を実施する。最終的には東電を発電会社と送電会社に分割し、発電に関する資産は順次売却する。送電会社は再上場を目指す。この案を採用すれば、発電送電分離が実現し、競争原理が働き、電気代は下がっていくし、東電は発電資産の売却で巨額資金を得られて、人員整理などのリストラも進められる。国民負担なしで、賠償資金を得られるのである。
◆今のままでは庶民にシワ寄せ
「東電ほどの大企業ならば企業価値の算定にはプロを使っても半年はかかります。株主責任を問わず債権放棄も求めない今のスキームは拙速だし、野党の理解は得られないと思います。原発事故後、金融機関は東電の資金繰り維持のために2兆円を融資した。これを債権放棄させるのは厳しいという意見もありますが、銀行はボランティアで融資するわけではない。リスクは当然負わなければなりません。このままだと被災者への補償の前に、銀行へ返済されてしまいますよ」(古賀氏)
利害関係者が責任を負う当たり前の案をツブしたのは銀行だ。債権放棄があいまいな政府スキームは東電のメーンバンクが作ったとされる。賠償金は税金と電気料金でまかない、銀行の懐は一切痛まない都合のいいスキームだ。これに保身が全ての経産官僚が飛びつき、官邸も乗った。これが真相だからフザけている。ジャーナリストの有森隆氏はこう言う。
「減資もしない、貸し手責任も問わない。経営責任もいい加減で、会長、社長は次の株主総会で辞めてしまう。退職金はないというが、多分、給料に上乗せされているので、手付かずで終わってしまう。これじゃあ、誰が責任を負うのか。電気料金値上げを押し付けられる国民ですよ。それも大口利用者には特別料金体系があるので、小口利用者である庶民にシワ寄せが行ってしまう。法案の細部の詰めはこれからですが、国民は、よくよく監視しないといけません」
JALも最初は大甘スキームだったが、結局、破綻した。東電も甘い処理は許されない。
2011-05-14(19:45)
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