http://www.asyura2.com/11/senkyo113/msg/124.html
Tweet |
http://diamond.jp/articles/-/12214
高橋洋一の俗論を撃つ!
(DIAMOND online 2011年5月12日)
原発事故賠償金の国民負担を少なくし電力料金引き下げも可能な処方箋を示そう
東電の福島原発事故での賠償スキームが話題になっている。
東電の賠償スキームそのものは単純だ。賠償は原子力損害賠償法に基づいて行われるが、これまで政府が明言しているように、同法3条但し書きによる免責が東電に適用されない。となると、東電が責任をもって行うこととなる。一方、東電の責任を超える部分は、被災者の泣き寝入りは容認することができないので、政府、つまり国民が負担することになるだろう。
■東電は既に実質的に債務超過状態にある
ということは、「賠償額=東電負担分+国民負担分」という公式が成り立つ。ここで、東電負担分は、東電のステークホルダーである株主、債権者、経営者・従業員のいずれかが負担する。また、国民負担分は、税負担か電力料金値上げになる。
さらに、負担関係をきっちり具体的に把握するには、東電のバランスシート(BS)を見なければいけない(図1)。資産は13.2兆円、負債のうち流動負債1.9兆円、固定負債8.8兆円(うち社債4.7兆円)、純資産2.5兆円(2010年3月末。連結ベース)。
東電の賠償スキームでは、現状のバランスシートにいろいろな要素を加味する。まず資産側だが、原子力損害賠償法に基づき、東電は原子力損害賠償責任保険に加入する義務があり、福島第一原発で0.1兆円だ。
さらに、この責任保険でカバーできない範囲については、国が東電を相手として原子力損害賠償補償契約を結んでいる。これは2011年度予算で2.3兆円だ。これは国民負担である。
その一方、今回の原発問題への賠償は一義的には東電にかかる。仮にその金額を10兆円とし、負債側に加える。
賠償額が10兆円まで達しないとしても、その金額が株主資本2.5兆円と保険0.1兆円の合計2.6兆円を超えると債務超過になる。東電社長がすでに政府の支援を求めていることからわかるように、とても2.6兆円で収まるはずなく、東電は既に実質的に債務超過状態である。
■賠償額のほとんどが国民負担となる政府案
以上を踏まえた上で、政府案(プランA)をみてみよう。海江田万里経産相は、東電のステークホルダーである東電株主を救済する意向を示している。東電の個人株主は多く、天皇家もそうだといわれている。株主を保護する以上、債権者も保護されるはずだ。
他のステークホルダーである経営者・従業員については、経営者で役員報酬の全額返上などがいわれているが、金額的にはたいした話でない。企業年金までカットするのであれば、数千億円程度は国民負担が減るが、そうした話は出ていない。
となると、政府案(プランA)は、東電負担はなく、賠償額のほとんどが国民負担になる(図2)。国民に負担してもらうについては、東電の不始末を増税というわけにはいかないので、電力料金の値上げという形になる。
また、東電が温存されるので、地域独占や発送電一体などの現行の仕組みはほとんど変更されることなく継続されるだろう。
■債権者や株主も負担を負うプランを考える
もう一つ、政府案とは対極のもの(プランB)を考えてみよう。東電のステークホルダーである株主や債権者に負担を負わすものだ。
もし株主に本来の役割を持たせるなら、100%減資すれば2.5兆円も国民負担は減少する。もし債権をカットすれば、その分はさらに国民負担は減る。
もっとも債権のカットには技術上の問題がある。電気事業法37条に基づく一般担保による優先弁済だ。金融機関関係者はこれを主張し、被災者への賠償より 自らの債権を優先弁済すべきという。
まず担保でカバーされている東電の債務は、負債計10.7兆円のうち5.2兆円しかない。そこで担保なしの債権について、債権カットを電力事業に支障の出ない範囲で行うとすると、3.6兆円も国民負担は減少する。100%減資の場合と合わせて6.1兆円も国民負担が減る(図3)。
■送電網を売却して送発電分離による電力の自由化の契機とする
プランBでは、東電は解体されるが、その過程で、事業や資産の売却が行われる。
たとえば、5兆円以上の資産として東電のBSに計上されている送電網を売却して、賠償金の原資とすることができる。そうなると、電力自由化のキモである送電と発電の分離を実務上同時に達成できるのだ。
電力が地域独占というのは経済学の教科書にもあるが、それは電力事業のためには巨額な設備投資が必要だから、自然独占になると説明されてきた。ところが、電力事業を発電と送電に分けると、そのロジックは送電に当てはまるが、発電は最近の技術進歩によって当てはまらなくなった。
ということは、電話では電話網を開放していろいろな事業者を新規参入させたことによって電話料金が低下したように、送電と発電を分離し、送電網を開放し発電では新規参入させたほうがいい。日本でも、エネルギー関係や他の公益事業など多くの業者が発電での新規参入を考えている。
送電と発電の分離によって送電網を開放することは、欧米では当たり前だ。しかし、日本では送電網の開放が不十分で電力発電の新規参入が少なく、電力料金は国際的にも割高になっている。
かつて日本の電力料金が高いのは停電がないからだと豪語されていたが、今は無計画な「計画停電」があるので、そんな強弁もできない。また、省エネに役立つスマートグリッドが日本で進んでいないのは、送電網が開放されていないからだ。
日本経済の将来を考えれば、電力料金はすべての産業の基盤になり、それが国際的に高いのは、日本の産業の国際競争力を低下させるので不味い。
政府案のように東電温存・送発電の分離できず・電力料金引き上げという道をとるのか、プランBのように、国民負担を少なくするとともに、東電解体・送発電の分離・電力料金引き下げという道をとるか、という日本経済にとって重要な岐路である。 2011-05-12(07:56)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK113掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。