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政治家の多くは霞が関官僚組織の下僕になりやすい構造がある(2)
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2011年05月09日 | 日記 :世相を斬る あいば達也
「金をバラ撒く装置」官僚機構 誰がこの伏魔殿の群れを解体できるのか?」(1)で述べたように、国家の支配を垂直的に統合すること(中央集権システム)で効率を高め劇的効果を現出した。あれよあれよと敗戦国日本は焼け野原から復興し、劇的経済成長を遂げ、米国を次ぐ経済大国に成長したのである。
東西冷戦の終焉により、日米欧の先進各国は一時の平安と民主主義・資本主義のイデオロギー勝利に酔いしれたのだが、その満足はそれ程長く続く事もなかった。実はソ連を中心とする東側の社会主義経済圏の疲弊は、日米欧の自由主義経済圏の経済をも疲弊させていたのである。早い話、東側がより酷くて、先にバンザイをしたに過ぎなかったのだ。
しかし、自由主義経済圏には亡霊のような金融資本の動員と云う「悪魔のツール」が残されていた。実体経済は東側より健全ではあったが、西側諸国の人々には常に右肩上がりの経済を指向する、それこそ嗜好性が存在していた。東側の人々は衣食住の満足と云う、人間の本能的欲望の満足が指向であった。
西側諸国の人々の指向は衣食住と云う「人間の本能的欲望」を乗り越えた処の欲望に衝き動かされていたのである。 「人間の本能的欲望」の枠からはみ出してしまった人間の欲望と云うものは、これはもう際限なき欲望で、何処かに終着点があると云う欲望ではなくなるのである。非常に厄介な欲望で、時には欲望の目的さえ見えない程習慣化するので、手に負えなくなる。
丁度、人間が抑制する能力を持たないのに、核の力を利用しようと企てるのに似ている。何らかのアクシデントで暴走するかもしれない、暴走したら止めようがない金融システム「悪魔のツール」に手を染めることになる。かくして、国際的金融危機は起きた。現在も日米欧の実体経済は疲弊したままだ。みせかけの経済成長は遂げているが、金融経済による見せかけの成長をしているだけに過ぎない。
あまり、この金融システム「悪魔のツール」の話題に深入りは出来ないが、自由主義経済圏も、この「悪魔のツール」の手助けなしには、もう経済成長はあり得ないと断言しても良いと云うことだ。そりゃそうだろう、自然現象を肉体で受けつけることを拒否し、35度の室内を25度以下にして、快適だといい、のさばっているのだから、このような人々に満足を与え続けなければならないシステムも苦労が絶えないのは事実だろう。
核爆発で電気を起こしてでも、生活を利便にさせる要求は、官僚の垂直統合システムが希求した結果だとは言い切れない部分もある。 しかし、ここで官僚の苦労話をする積りはないのだが、ただ自由主義経済の基本的成長のコア(人間の本能的欲望)は既に無くなっている事実を捉えておかないと、話が前に進まないと云うことだ。
日本の場合、この金融システムで虚構の金を生む技術が充分に進んでいないので、米国を中心とする金融グループの独壇場になってしまった。EU経済圏も日本同様に、金融システム経済での成長は蚊帳の外に置かれている。故に米国経済は、見せかけ上自国のドジで世界経済を崩壊させるほどの事件を起こしながら、早々と経済成長路線にシフトさせたのである。しかし、実体経済が伴わない虚構の経済成長なので、ネズミ講ではないが必ず破綻もするが、それが何時かはわからない。米国内では、国家の財政破綻をマジで心配する話題が増えている。
つまり、詐欺師金融経済を行わない限り、自由主義経済も実は行き詰ったいると云うことだ。日本の経済は、詐欺的金融テクニックもなく、取り残され経済成長は完全に停滞したままなのである。しかし、それは正しい指標であり、なにも嘆く問題ではない。ネズミ講方式で経済成長を遂げる米国より数段健全だ。日本には、汗水垂らして働く意欲に満ちた国民が控えている。予算などは、本質的にバラマキなのだが、バラマキ先を構造的にチェンジすることで、30%程度改善する糊代を残しているのだから、余力は米国の倍ある。
ところで、経済成長のコアが充分に満足された日本と云う国家なのだが、少子高齢化と云う構造的問題を抱えながらも、国民の「人間の本能的欲望」を乗り越えた処の欲望を基軸とする要求に応えようとする政治家や官僚たちが現に存在する。勿論、民主党だけの問題ではない。今まで積み上げた赤字国債の殆どは自公政権とコトもあろうか財務省が積み上げたものであり、その財務省が財政再建などと、今頃言い出すのは、人間業とは思えない笑い草である。
それはさておき、官僚機構があり、そのバラマキ方を恣意的に操作できるのが、日本の官僚機構の際立った特長である。法律を作るのは立法であり、国民から選ばれた国会議員の権限である。国権の最高機関は国会にあり、法律を作るのも彼等の権限である。しかし、現実は驚くほど違う。
つまり、現実に法律を運用するのは、霞が関の官僚であり、さじ加減と云う恣意性が入り込む余地は十二分に残されているのが、法律の条文というものである。霞が関の力の源泉が、この恣意的運用に由来することに異議を唱える人は少ないだろう。
最近の東電賠償問題と経産省と財務省が画策する救済ロードマップにせよ、ウィキリークスで暴露された普天間移設で国家反逆罪のような行為にせよ、小沢・鳩山を法務検察が貶め政治生命を危機的状況に追い込んだり、と社会的注目を浴びる問題に限らず、彼等のさじ加減一つで、補助金や交付金が増減するわけで、地方行政の首長達も当然下僕にならざるを得なくなる。
この法律の運用が行政、本来であれば行政の長である内閣総理大臣及び各省大臣に委ねられるのだが、これがちっとも機能しない。それはそうだろう政治主導といっても、その分野のエキスパート相手に議論をすれば、負けるだけでは済まず、引き込まれ洗脳されるのがオチである。つまり、政治主導と云うのは、官僚の専門分野の土俵に乗らずに、俺はこのようにしたい、その方向で検討し、案を出してくれ。出てきた幾つかの案の中から、俺が俺の責任で選択する。それが政治主導なのだ。形式的部分のご説明は受けても良いが、政治政策に関わる部分は、方向性を打ち出す頑なさが最も大切だ。
まぁ現実にはそれが難しいが為に、自公政権時も民主党政権交代後も、各大臣などの多くは官僚のなすがままに、安穏とした大臣生活を送るのである。変に知ったかぶりをして、彼等の土俵で闘い、一敗地にまみれた大臣は数多い。理論武装は、大臣の命令で出来あがった方向性を補完させるもので、それを官僚に考えさせるべきだが、利口さを見せようと踏ん張る政治家ほど罠に嵌る。
政治家の力量が落ちると云うことは、長期政権が成り立たないわけだから、大臣などコロコロ変わるのは自明なので、誰が来ても怖くない土壌が益々醸成されていく。政権がコロコロ変わる以前に、概ね3,4年に一度衆議院議員は選挙の洗礼を受けるので、その省庁の応援を期待する。霞が関が持つ集票ネットワークは政治家にとって垂涎の的だ。どうしても、政治家は官僚の僕(しもべ)になる構造になっている。だから、小沢はうるさいくらい、選挙に強くなれと言い続けているのだ。
しかし、此処に来て官僚どもも壁にぶち当たっている。「金をバラ撒く装置」で権力を欲しいままにフリーハンドしていたのだが、バラ撒く金が少なくなってきたのだ。そりゃそうだ、権力の源泉が金のバラマキであり、国民から巻き上げる金が底をついたのだから、悩ましい出来事だ。ヘソクリのように貯め込んである特別会計の保険は隠し通さなければならない。これは彼等の最後の砦だ。
そうなると、「金を掻き集める装置」が必要になる。経済が成長しなくても国民から収奪出来る「消費税」にシフトするのは当然なのだが、如何にも政治主導で増税が行われるアリバイまで、政治家の意志の如くシナリオを作ろうと云うのだから、霞が関は悪魔である。 困ったことに、この悪魔たちは組織の歯車として悪魔行為を行っているので、個人的に自分が悪魔だと気づきにくい厄介な代物なのである。
これを壊すのは、政治主導などと云う生易しい考えだけでは無理なのだ。霞が関にある権限の大半を何処かに移転させないと無理なのだ。バラマキだと民主党マニュフェストを批難する野党も多いが、バラマキの元祖は誰あろう、霞が関官僚組織であり、自公政権である。 こうなると、悪魔と闘うには、悪魔的手法も必要なのではないかと思うに至る。霞が関を弱体化させる為には、霞が関官僚組織が握りしめている恣意性が入り込む行政権を引き剥がす必要がある。検察庁の抜本的改革も必要だし、財源の地方移管も劇的に行われるべきだし、公務員改革もドラスティックに行う乱暴なモメントが必須になってくる。
驚くべき方向性を打ち出すのだが、筆者は「市場原理主義」と「国民の生活が第一」の理念が一時、呉越同舟、同床異夢する道はないか、考えるに至っている。実は竹中や高橋のマクロ経済と植草のマクロ経済は対立しているようで、多くの接点も有している。
小沢一郎・鳩山由紀夫の政治理念と前原誠司や小泉純一郎の市場原理主義が水と油だと云う認識は印象的なもので、必ずしもイデオロギーのように対峙する関係のものではない、と考えるに至っている。霞が関官僚組織を破壊する方法論としては相当強力な武器になり得る。逆に云うなら、そこまで腹を括らないと、霞が関は壊せないと云うことではないのだろうか。
(3)に続く
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