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私は今度の福島原発事故を通して、それまでどちらかといえば
漠然とした原発容認派だったが、今では最強の反原発派になった。
その理由はただ一つ、核物質は人間性と両立しないと知ったからだ。
それは一旦核物質が分裂・融合すれば人間が制御できないという
ことだけではない。放射線汚染がいかに非人道的なものであるかを
知ったからだ。
私は今度の原発事故を通じこれまでおよそ知る機会のないような
書物のいくつかに出会った。その一つが「朽ちていった命」(新潮
文庫)という書である。
これは1999年9月に起きた茨城県東海村の臨界事故で被曝した
核燃料加工者の83日間の闘病記録である。
自分の息子と同じ年齢のこの若者の被曝から死に至るドラマを私
は涙なくしては読めない。私はこの書を常に手元において繰り返し
読み、核物質の非人間性を思い起こす事にしている。
核物質はいかにそれが人間生活に便利なものであるとしても人間
が使ってはいけないものなのだ。ましてや武器としての核は認めら
れるはずはない。
だから原発政策は全廃しなくてはならない。国策として導入して
半世紀たったわが国の原発を今直ちに廃止することは非現実的であり
得策ではない。だから私はそこまでは要求しない。
しかし全廃に向けてロードマップをつくり、時間をかけてでもいい
から脱原発政策をあらたな国策としてすすめていく、今度の福島原発
事故をきっかけに日本の首相は明確にその事を国民に訴えるべきで
あると思う。
しかし菅首相は違う。浜岡原発は地震の危険が極めて高いのでやめ
るが他の原発には停止を求めないという。
そこには原発政策をこれからどうして行くかと言う明確な菅首相
の考えは見えない。
菅首相の原発政策を見事に教えてくれるスクープ記事を5月9日の
毎日新聞が一面で大きく掲載していた。
それは日本政府が米国と一緒になって核貯蔵・処分場の建設を
モンゴルにつくる事を極秘に進めているという記事だ。
これを要するに自分たちにとって危険で厄介な物質を、金にまかせて
他所に持って行くということだ。
私にはその考えが到底許せない。
私と菅首相との考えの違いは日米同盟についてもはっきりしている。
私は米国の軍事政策が、自国の安全保障を最優先しその脅威になる敵
をあらゆる策を講じて排斥するものである事を知っている。
それは価値観の異なる国との共存を拒むことだ。世界の平和に反する
ものだ。
少なくとも平和憲法を持つ日本とは根本的に異なる。
だから私は日本はそのような国との軍事協力からは決別すべきと考える。
しかし菅首相は違う。
菅首相は自らの安全保障観は一切語ることなく、日米同盟を深化させる
という。テロが何かを語ることなく、米国がオサマ・ビン・ラデンを暗殺
したことをテロとの戦いの勝利だと祝福する。沖縄住民があれほど反対
している普天間代替基地の建設について、その必要性を語る事無く日米
合意だから守るのだと言う。
それはあたかも原発政策をどうすべきかを語ることなく浜岡原発停止を
突然言い出すのと同じだ。
彼は卑怯な男だ。本心を明かさない・・・
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