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平成23年4月25日発売
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菅直人が手を染めた「言論統制の恐怖」
「ネットデマ削除要請」は平成の治安維持法か
総務省通達をめぐって、総務省内部やネットメディアも大反発!
上杉隆(ジャーナリスト)と本誌取材班
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かつて日本では、政府と軍部が「大本営発表」で情報を支配し、「治安維持法」で人々の言論を統制した時代があった。戦後66年経ったいま、未曾有の国難のなかで、密かに同じような事態が進んでいた。その夕ーゲットにされているのは、インターネットである。
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(写真)確かにデマが広まるのは問題だが……(左は震災直後のデマ)
〈火事場泥棒。言論の自由への挑戦。情報暗黒内閣の正体露[あらわ]に)── 4月11日、私がツイッターで、ネットに掲載された『週刊ポスト』(4月22日号)の「菅政権、震災のドサクサの中で『ネット規制強化法案』を閣議決定」との記事を引用しながらつぶやいたところ、大きな反響があった。ソフトバンクの孫正義氏は(本件に抗議して、今から3日間tweetやめます。ハンガーストライキみたいなもんです)としてツイッターを停止した。
ところが私のつぶやきに対し、「デマ」だとの批判が巻き起こった。批判者は「閣議決定は震災当日の午前中だからドサクサではなく、しかも法案はウイルス作成罪に関するもので、ネットを規制するわけではない」というのだ。ITジャーナリストの佐々木俊尚氏までが拡散に協力し、デマ批判が広まった。
確かに、閣議決定のタイミングは『週刊ポスト』も翌号で訂正していたように当日の午前中であった。しかし、私は日付など問題視していなかったし、気にもしていなかった。問題はこの法案の中身である。
私はこの法案を何年も前から取材してきた。批判者は、「ネットを規制するわけではない」というが完全に間違っている。この法案は、ウイルス作成罪以外に、捜査当局がプロバイダなどに対し裁判所の令状なしにネット上の通信履歴の保管を要請できる条文を織り込むなど、「言論統制」につながる可能性があるとして、ここ数年、危険視されてきたものだ。国会議員の中にも、法務委員の辻恵議員(民主党)が反対しているように、「言論統制」の第一歩とみる向きが強い。しかも、閣議決定された法案を震災後の4月1日に国会捉出したのだから、立派なドサクサ紛れの「火事場泥棒」である。 そもそも誤報とデマは違う。確かにポストの記事には時期の間違いがあったが、意図的にウソを流すデマとは違う。当然、私のリツイート(転載)にデマを流す意図はなく、単に危険な事態が進行していることを示したのみである。
私が菅内閣に対してずっと使ってきた文言──「情報暗黒内閣」による「火事場泥棒」はこの法案だけを指したものではない。
4月6日、総務省は、プロバイダ等の業界団体を通じて、「インターネット上の地震等に関連する情報であって法令や公序良俗に反すると判断するものを自主的に削除することを含め」た必要な措置を講じるよう、通達を出した。
政府の「被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム」が同日、被災地での犯罪防止や治安維持について対策をまとめたのを受けて出された、「ネットデマ削除要請」である。
孫正義氏はストライキからの復帰後、この通達と前出の法案について(両方は、深い所で関連。両方とも問題が内在。この両方などで言論統制の恐れに対しストライキしました〉とツイッターで言明した。
総務省の指示ではなかった
通達の前日、総務省は業界団体の4法人を呼び出した。招集を受けた法人の一つ、電気通信事業者協会の担当者が証言する。
「総務省が要請書を出した前日、急に連絡が来て、総務省に行って要請書同様の主旨の説明を受けました。
最終的には流言飛語への不安が募っているということもあるのでそれに配慮しつつ、これまで通り対応する、ということになりましたが、出席した 4法人の担当者は当然、言論の自由やプロバイダの秘密厳守の立場はどうするのかなどの話をし、担当が要請を拒否するような激しい議論もありました。総務省もその点は気になるところだ、といっていましたし、立場は私たちと同じように感じました。ただ、この話はもともとの出所が上のレベルからの話なので」
上からのレベルの詰、というところが気になる。
原口一博・前総務相は自由報道協会主催の会見で、「この大震災に乗じて、中央政府が何かしらの介入をしてきたというふうに誤解されても仕方のない内容だが、(総務省)政務三役に上がった形跡がない」と述べた。
通達は、総務省の上から降りてきた話ということか。
総務省コンプライアンス室長の郷原信郎氏はいう。
「総務省は、やはり監督官庁として表現の自由を阻害するような要請をすることは適切じゃない、ということは重々承知の上で、だからそういうことにならないような内容の文書しか出さないという方針だったんです。ところが、(政府の)ワーキングチームはそれを超えた措置を要請してきた。
総務省としての文書の内容には情報統制的な意図はないが、誤解を生じかねない部分についてはワーキングチームの対策を受けて採り入れた方向になってしまった、ということでしょうね」
もとより、こうした通達を総務省の官僚たちが出せるわけがない。さちに郷原氏は、「片山着博・総務大臣も知らなかった」という。
「こういう文書が大臣の承認なく出るということは問題ですが、大臣は後から知って、誤解を招くことがないようにする必要があると考えた。だから私が情報統制との誤解を打ち消すということも了解していただいたんです」
郷原氏は総務省コンプライアンス室長として、「『従前どおりの対応』を求めているに過ぎず、それを超えた措置を求めるものではない」との声明を発表した。
総務省としては異例の措置である。
政権交代以降、原口氏は総務相として「言論の自由を守る砦」を築く「ICT権利保障等フォーラム」を開催。私はこれに、孫正義、郷原信邸の両氏らとともに参加していた。今回の通達に危機感を覚えたのが、奇しくもそのフォーラムに参加した面々だったことは、「言論の自由」にとっていかに危険な事態が進行しているかの裏返しでもある。
警察庁が削除依頼
実はこの通達以前から、すでにネット言論に対する取り締まりは始まっていた。
警察庁は、4月1日付で東日本大震災に係る≠ニいう件で7件の削除依頼を行なっていた。
その内容は、被災地の外国人犯罪に関するものから、(3月20日 東京で同時多発テロ〉といった予言まで様々。なかには、(あまり書きたくないが、被災地では、ガソリンを抜き取る行為やスーパーのガラスを割って中の商品を取っていく、または、火事場泥棒などが報告されている。こういう時だからこそ助けあおう〉という、果たしてデマといいきれるのか疑問が残る書き込みまで削除されていた。
また、〈大学で放射能を研究しているのだけど、野外に設置したガイガーカウンターが急上昇している。そろそろ危険。地下シェルターでもなければ、やばい〉という書き込みにも削除依頼がなされているが、こちらはまだ削除されていない。
プロバイダなどを会員とする社団法人テレコムサービス協会は、行政機関から削除要請のあった案件について公表している。たとえば、〈今回の地震が人工地震だとの誤った情報の書き込みが掲示されているので削除してほしい〉との要請には、〈事実に反する書き込みであれば自主的に削除いただきたい旨を依頼したところ、会員は自らメッセージを削除した〉とする一方、〈事故を起こした原発の、原子炉製造メーカーについての投稿記述が事実でないため、削除されたい〉との要請には、〈内容を確認するも、削除基準に抵触するものではないため削除せず〉と突っぱねており、一進一退の攻防が続いているといえよう。
このように、すでに言論統制は行なわれているのだ。
もちろん、ネットのデマにより、誤った情報が広まることは問題ではある。しかし、私のつぶやきのように、ネット上の誤りはツイッターなどによって、すぐに訂正されやすい。むしろ怖いのは、そうした傾向を無視して言論を封殺しようとする政府の方だ。
そもそも、デマを取り締まる側の政府は、果たして本当の情報を出してきたといえをのか。私は福島第一原発の事故発生当初から、「炉心溶融=メルトダウン」の可能性を再三、政府や東電に問いただしてきた。だが、枝野幸男・官房長官はいまだにメルトダウンを認めず、それどころか原子力安全・保安院は、炉心が損傷し燃料棒が溶融する事態を認めながら、溶けた燃料棒が原子炉下部に落ちるのが「メルトダウン」だから、「メルトダウンは起きていない」と詭弁を弄している。
このため、「メルトダウン」を唱え続けてきた私はいまだに「デマ」扱いを受けているが、それは政府の判断によって私のツイッターが削除されることの可能性を意味する。
削除要請を出すデマの線引きを曖昧にしたまま進行しているこの事態は、政府の情報統制日的以外の何物でもない。
もうひとつ、提出法案も総務省通達も、インターネットだけを狙い撃ちしていることに注目したい。
フェイスブック、ツイッターなどによる「ソーシャルメディア革命」が起こったエジプトでは、政府が反政府デモの混乱を鎮圧するため、ツイッターの接続プロック、インターネット接続の遮断などの措置を取った。チュニジアやリビアでも同様である。
菅直人はその意味で、ムバラク、ベンアリ、カダフィとならんで、「言論統制」に手を染めた独裁者の仲間入りを果たした。これが「情報暗黒内閣の正体」である。
なぜこの危機に、新聞・テレビだけでなく佐々木氏などのネット言論人までが気づかないのか。日本では長らく記者クラブ制度が、自分たちで「言論の自由」を妨げてきた。いまだ「記者クラブ脳」に洗脳されている人たちは、この危機に気づくことすらできない。
これは、「大本営発表」や「治安維持法」、などいつか来た道のはじまりなのである。
(写真)警察庁の削除依頬一覧。上2つはまだ削除されていない
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