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EUで3ヵ国目となる財政危機を迎えているポルトガル。そういえば、かの国も昔、大地震と津波で壊滅的な被害を受けた。ただし、「財政破綻」の暗雲が広がる日本上空には放射性物質まで舞っている。
大地震、そして大津波も共通
「東日本大震災が起こったとき、私はすぐ『リスボン大地震と同じだ』と思いました。リスボン大地震は、フランス革命と並ぶ18世紀ヨーロッパの重大事件だと、ポルトガルでは言われています。ただ、いまポルトガルのメディアでは、日本の震災のことはあまり報道されていません。自分の国が大変なことになっているからです」
東京都港区にあるポルトガル文化センター取締役のジョゼ・アルバレス氏は、深刻な面持ちでそう語った。
アジアの東端にある日本が震災という国難を迎えているいま、ヨーロッパ西端のポルトガルは、財政破綻の危機に直面している。近年、ポルトガルは慢性的な財政赤字を国債で穴埋めしてきた。しかし、信用不安から、大口引き受け手である銀行が国債を手放したことで深刻な財政悪化に陥った。さる4月6日、ポルトガル政府は、EUとIMF(国際通貨基金)に、3年間で600億~800億ユーロ(約7兆3000億~9兆8000億円)の金融支援を要請したばかりだ。
EU諸国ではギリシャ、アイルランドに次ぐ3ヵ国目の財政危機だが、エコノミストの間ではいま、このポルトガルと日本の姿を重ねて、日本もポルトガルのようになるのではないかと危惧する声が出ているのである。
「リスボン大地震が起きたときのポルトガルを取り巻いていた状況は、確かに日本の現状とよく似ています。たとえば、もともと大航海時代にスペインと並ぶ強国だったポルトガルですが、地震が起きた当時はイギリスなどにその地位を取って代わられようとしているときでした。一方、日本も東アジアの盟主の座を中国に奪われるかどうかの瀬戸際で、今回の東日本大震災に見舞われたのです」(大阪大学名誉教授の川北稔氏)
つまり、日本もいずれポルトガルのように落日を迎え、二度と経済大国として復活することはないかもしれないというのだ。
その可能性について述べる前に、リスボン大地震について紹介しておこう。この大地震そのものが、日本を襲った東日本大震災と酷似している。
1755年11月1日、午前9時40分ごろ、推定マグニチュード8・5の大地震がポルトガル南西部を襲った。ヨーロッパ全土に強い揺れを起こしたこの地震のエネルギーは凄まじく、首都リスボンでは、一瞬で85%の建物が倒壊し、多数の市民が石造りの民家の中で押しつぶされた。
さらにしばらくして、不気味なほど沖へと引いていた海水が一転、最大で15mほどの大津波と化して、リスボンに襲いかかった。浅瀬や空き地などに避難していた生存者は、なすすべもなく怒濤に飲み込まれ、津波だけで1万人の市民が犠牲となった。最終的な死者の総数は諸説あるが、6万人とも伝わる。
元駐ポルトガル大使の原聰氏が言う。
「いまでもリスボンには、いかにこの地震の被害が甚大だったかを語り継ぐための史料が、市の博物館に展示されています。この史料によればリスボン大地震はマグニチュード8・5~9・0。東日本大震災もマグニチュード9・0ですから、地震の規模もほぼ同じです。それに港が破壊されるなど、津波の被害が大きかったのも共通しています」
カネがない
では、このリスボン大地震により、ポルトガル経済はどのようなダメージを負ったのか。上智大学外国語学部ポルトガル語学科の市之瀬敦教授に聞いた。
「もともとポルトガルは国土が狭く、植民地や外国との貿易で稼いできた歴史があります。ところが、リスボン大地震の津波で、リスボンの港はすべて崩壊してしまい、船が着けられなくなったことで、大きな痛手を受けました。また、工場が破壊され、製造業の被害も深刻で、生活必需品価格のインフレが起こりました。ポルトガルの国内総生産の32~48%が失われたという記録もあります」
一方、日本はどうか。日本も貿易大国で、自国に資源を持たないというところは同じ。製造業に甚大な被害が出ているところも似ている。与謝野馨経済財政担当相は地震発生から11日後の3月22日、国会で「地震による日本経済への影響はさほど大きくない」などと語っていたが、1ヵ月後の4月12日には、「当初予想していたよりも、経済に対する打撃は大きいのではないかと思っている」と漏らした。
その理由のひとつに挙げたのが、各種製造業で部品が入手できずに製造中止に追い込まれるケースが相次いだことだ。たとえば、自動車メーカーのトヨタでは東北に複数ある関連企業や部品工場がダメージを受けたため、国内はもちろん、北米の製造工場でも製造ラインがストップした。
そして、ここはポルトガルと大きく異なるところだが、日本では福島第一原発の事故による放射能汚染が、経済動向に大きな影響を与えることは間違いない。内閣府は地震と津波による被害を最大25兆円程度と試算しているが、放射能汚染による被害についてはまだ試算すら出せない状況だ。日本総研理事の湯元健治氏によれば、「風評被害の大きさを考慮に入れると原発関連だけで最大10兆円の被害が出てもおかしくない」という。
リスボン大地震による火災は5日間街を燃やし続けたといわれるが、「フクシマ」の原発はひと月たった今も放射性物質をまき散らし続けている。しかも、事故の重大さはチェルノブイリ原発事故と並ぶレベル7に認定され、不名誉なことに「フクシマダイイチ」は世界で広く通用する言葉になってしまった。すでに日本製食品の禁輸措置に踏み切った国も多く、いくら日本政府が各国大使館などに「風評被害だ」と訴えたところで、一度失った信頼はそう簡単には戻らない。
こうした苦境に対し、現在、政府では消費税の時限引き上げや震災国債の発行などを検討している。だが、日本にカネがないのは地震が起きる前からわかりきっていたことだ。ポルトガルが財政破綻したと言っても、公的債務はGDPの89%。それに対して日本は対GDP比で180%の借金を抱えている。
時間との闘い
一橋大学大学院教授の佐藤主光氏は、震災と原発事故が日本経済に及ぼす影響を、こう分析する。
「内閣府は震災の被害額を最大25兆円としていますが、これはインフラや住宅、工場などが受けた直接的被害で、これ以外に生産設備が破壊され部品供給ができなくなったことによる二次的被害もある。被害総額はさらに増えると思われます。
ただ、震災だけなら主な被災地域である東北3県のGDPは全国の4%で、さほど影響は大きくないと見ていましたが、原発事故とそれに伴う電力不足のほうが懸念材料です。これから夏場以降十分な電力供給ができなければ、さまざまな工場で生産停止や稼働時間削減による生産縮小が起きるでしょう」
震災の復興では、建築関連などを中心に需要拡大が見込まれる分野もあり、被害額がある程度相殺されるという見方もあるが、問題は国家の財政破綻。緊縮ムードで税収は減り、消費税アップをすれば消費マインドが冷え込む。そこへ原発被害を含む補償が重なれば、破綻の可能性は一気に高まる。佐藤教授が続ける。
「復興需要についても、今回は阪神淡路大震災とは違う部分がある。あのときは津波の被害がなかったので、土地の権利関係もクリアで、もとの土地の上に建物を作るという作業で済みました。しかし、今回は津波の影響で道路一本作るにしても、以前の道路がどこにあって、どの部分が誰の土地だったかわからない状況です。こういう問題を解決しないと復興に着手すらできない可能性があります。
国の財政も、われわれの試算では、2020年までに日本に財政破綻の危機が訪れる確率は、震災前で12・5%でした。ところが今は24・9~31・9%と、倍以上になっています」
そして、気になるのが、今回の震災が国民性に与える影響である。かつては利益獲得のため、大西洋に乗り出す荒々しい気性がポルトガル人の特徴だったが、前出の市之瀬氏によれば、現在のポルトガル人の性格は、おっとりしていてカネに対する執着が薄いという。これにはリスボン大地震で築き上げたものが一瞬にして灰燼に帰すという体験があったことも無関係ではないだろう。
一方、日本の被災者にも地震によって気持ちが折れてしまう人がいる。石巻市で避難所生活を送る50代の男性はこう語っていた。
「家は津波で流され、職場の水産加工場もやられた。命だけは助かったけれど、もう何も残っていない。簡単に『頑張れ』って言うけど、もうそんな気力なんてない。倒壊しかかった自宅に戻って首を吊った人もいるらしい」
信州大学経済学部教授の真壁昭夫氏はこう語る。
「今回の地震が起こる前は、私は日本の財政破綻危機は5年後以降だと考えていました。いまではその時期が2~3年後に早まる可能性が出てきました」
ポルトガルは大地震から約250年で財政破綻の危機に陥った。日本に残された時間はその100分の1程度しかないのである。
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