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http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1104/25/news015.html
参議院予算委員会の集中審議。菅直人首相は震災対策が一段落したところで辞任したらと迫られてこう答えた。「震災からの復興も財政再建も道筋をつけたい。それができれば政治家として本望だ」
細川護煕元首相は、あるインタビューの中で「首相として1つのことを成し遂げたら辞めるぐらいの覚悟がなくてはいけない」と語っていた。そして「菅首相にその覚悟があるだろうか」と問うた。まさに菅首相が「財政再建まで」と言ったのは本人も自覚されているとおり「欲張り」である。
やるべきことは分かっている
国家の指導者として「震災復興」と「財政再建」は難易度が全く違うと思う。日本が第二次大戦に負けてがれきの山になっていたときも同じだが、それこそ国としての目標は見えていた。打ちひしがれている国民をどう鼓舞するのか、どこから手をつけるか。将来ビジョンをどう描くかという大問題はあったにせよ、日本を再建するという大きな目標は一致していた。
東日本大震災も同じだと思う。甚大な被害であり、あまりにもたくさんの人が亡くなっている。しかしやるべきことは分かっている。二度と津波の被害を受けないようにしながら、故郷そして地場の産業を再建するということだ。財源をどうするのか、国と地方の分担をどうするのか、といった問題はあるとはいえ、政治的な思惑を絡めることがなければ与野党の協議もしやすいはずだ。
それに比べると、財政再建は「道筋」をつけることだけでも大変である。本来ならば、民主党政権はこの2011年度予算では財政再建への道筋を示すべきであった。なぜなら20年度でのPB(プライマリーバランス、基礎的財政収支)を黒字化させるという目標を立てているからだ。黒字化ということは税収などで一般の政策経費を賄える状態にするということである。2009年度でのPB赤字は33兆円、2010年度もほぼ当初予算では23兆円ほどだが、補正予算も組んだため赤字額は27兆円ほどに達しているだろうと思われる。
これは大変な額だ。なにせ国の予算で基礎的財政収支の対象である歳出は71兆円ほどしかない。公務員の人件費を2割カットしても1兆円しか浮かないし、民主党が目の敵にした公共事業費も2011年度予算では5兆円。つまり公共事業をゼロにしても(実際には不可能だ)5兆円しか浮かないのである。
もちろん歳出カットだけで財政再建できるとは誰も考えていない。みんなの党だけは「増税しなくても財政再建は可能」と主張しているが、他の政党は何らかの形での増税を主張する。候補にあがる消費税は、1%上げれば国税だけで約2兆円の増収。つまり10%上げて15%にすれば20兆円税収が増える計算である。歳出を10%カットして7兆円、消費税を10%上げて20兆円、それでようやく基礎的財政収支がとんとんになる。
しかもこれには毎年1兆円増える社会保障関連費用などは計算に入っていない。そうなると、消費税を上げるほかに何をするのか。例えば所得税の累進税率を上げる(高額所得者の税率を上げる)とか、相続税をさらに厳しくするとか、いくつかの組み合わせはある。さらに政策経費のカットにしても社会保障費をどうするのか、それぞれの政党によって変わってくるはずだ。
指導者としてのリーダーシップが必要
巨額の財政赤字に悩む米国でも財政赤字削減プランが、民主、共和両党それぞれの案が出てきた。オバマ大統領は12年で4兆ドル(1ドル80円換算で約320兆円)、共和党は10年で4.4兆ドル(約352兆円)である。しかし中身は全く異なる。オバマ大統領は1兆ドルの増税を提案しているが、共和党はむしろ減税を主張する。オバマ大統領は新しくできた医療保険制度(5000万人とされる無保険者を減らすために国が補助する制度)をさらに強化したいとしているが、共和党はこの法律そのものを廃止せよと主張する。オバマ大統領は軍事費を減らすとしているが、共和党はこれには慎重だ。
税金を誰からどのように徴収するのか、産業を促進するような政策を取るのか、社会保障をどうするのか、年金をどうするのか。また、そういったことを実現するのに規制を緩和するのか強化するのか(換言すれば市場機能に任せるのか、それとも政府機能を強化するのか)などなど、対立軸はいっぱいある。
これらの対立軸で自分たちの意見を押し通し、一方で対立する政党と妥協を図ってよりよい社会に向かって進むためには、それこそ指導者のリーダーシップが必要である。何よりも自らのビジョンを語って、国民の支持を得なければならない。その一点を取っても、菅首相はすでに失敗している。さらに大震災を、政権を延命させる「千載一遇のチャンス」ととらえて政治的な駆け引き(自民党の谷垣総裁にいきなり入閣を求めたのが好例である)をする姿には失望すら覚える。
菅首相は自分の評価は歴史に任せたいというようなことをよく言うが、歴史に評価されたいなら少なくとも自分のビジョンを国民に何度も説明しなければなるまい。「強い経済、強い財政、強い社会保障」というような抽象論ではなく、具体的にどのような道筋で何を実行するのか、そのとき国民にどのような痛みを分かち合ってもらうのかを分かりやすく説明する必要がある。同時代の国民を納得させることができずに、歴史家を納得させることができると言い張るのは、単なる評価の先送りに過ぎないのである。
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