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民主主義は、衆愚制に転落するリスクが常にあるが
残念ながら自分の頭でしっかり考え、自己責任を自覚して行動する国民というのは
なかなか多数派にはならず、批判と依存と無責任が大衆の特徴なのは
世界共通ということか
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5933
カリフォルニアの教訓 行き過ぎた民主主義の危険性
2011.04.25(Mon) (英エコノミスト誌 2011年4月23日号)
カリフォルニアは世界中の有権者に警告を与えてくれている。
薬剤耐性菌MRSA、米国の海岸で初の発見例
自然にも恵まれ、優秀な人材が集まるカリフォルニア州の統治は、なぜこれほどひどいのか・・・〔AFPBB News〕
米カリフォルニア州はまたしても、予算に開いた大きな穴を抱え、それを埋める見込みがないまま会計年度の終わりに近づきつつある。州憲法では赤字予算が禁じられているにもかかわらずだ。
ほかの州も経済の不振が原因で問題を抱えている。しかし、カリフォルニアは好景気の年でさえ、然るべき時期に予算を成立させられない。カリフォルニア州の信用格付けが20〜30年程度で、50州の最上位クラスから最下位に転落した理由の1つがここにある。
その多様性から、自然の美しさ、他の追随を許さないシリコンバレーやハリウッドの人材集団に至るまで、これほど恵まれた州の統治が、どうすればここまでひどい有様になるのだろうか?
やはり、統治を行っている人を非難したくなる。非常に党派的で、普段から膠着状態にある議員は、かなり厄介な集団だ。1975〜83年にも州を率いた経験がある現知事のジェリー・ブラウン氏は、(前任者たちと同様)行政機関を機能させるのに苦労している。
直接民主制の弊害
しかし、別項の特集でも述べているように、最大の原因は直接民主制だ。カリフォルニア州の有権者が自ら選んだ議員を任期の半ばで解職するリコール、議会が採択した条例を拒否できる住民投票、そして中でも有権者が自ら規則を制定するイニシアティブといった制度だ。
「提案13号」によって固定資産税の税率が引き下げられた1978年以降、教育から鶏舎の規制に至る様々なテーマで何百ものイニシアティブが条例として成立している。
この市民議会とでも呼ぶべき存在が混乱を引き起こしている。イニシアティブの多くは、税額を抑えるか支出を命じるもので、予算を均衡化するのがさらに難しくなっている。
一部のイニシアティブはあまりに杜撰で、意図に反する結果を招いている。提案13号は小さな政府という主張にもかかわらず、カリフォルニアの財政を中央集権化し、各自治体から州政府へとシフトさせる結果となった。
住民投票にはエリートを押さえ込む意図があったが、むしろ利益団体の道具と化している。ロビイストや過激主義者が資金を出して、困惑するほど複雑で、効果が曖昧な法律を成立させているのが現状だ。こうして、代議制の上に成り立つ州政府の力が衰えた。予算の70〜90%の使い道が既に決まっている議会に誰が参加したいと思うだろうか?
彼らは楽園を舗装し、投票ブースを設けた
これはカリフォルニア州にとって悲劇だったが、問題は州の境界をはるかに超えて重要な意味を持つ。米国の州の半数近く、さらには次第に多くの国で、何らかの形の直接民主制が採用されている。
英国では5月、(投票制度の変更を巡り)何年もなかった国民投票が実施される。道を踏み外した下院議員をリコールする制度の創設も取り沙汰されている。欧州連合(EU)も超国家的な市民イニシアティブの手続きを導入したばかりだ。技術の発達で住民投票の実施が一層容易になり、欧米の有権者はかつてないほど政治家に腹を立てていることから、直接民主制が広がる可能性がある。
それも、悪いことではないだろう。何しろ、成功モデルも存在する。スイスでは、直接民主制は地方レベルでは中世から、連邦レベルでは19世紀から採用されている。スイスでは直接民主制と代議制がうまく共存しているように見える。これはきっと単に、カリフォルニア州(明らかにスイスのモデルを借りた)が良いアイデアをうまく実行していないだけだろう?
住民投票で同性婚非合法化へ、カリフォルニア州など
2008年の住民投票では、同性婚を禁止するための州憲法改正案が賛成多数で可決された(写真はサンフランシスコで、同性間の結婚を制限する州憲法改正案「提案8号(Proposition 8)」への反対を訴える活動家ら)〔AFPBB News〕
そうとは限らない。本誌(英エコノミスト)をはじめ、直接民主制を禁止したいと考えている者などほとんどいない。実際、住民投票が有効なケースもある。住民投票は議会の責任を問う1つの方法だ。
カリフォルニア州でも最近、ゲリマンダリング(議員に都合の良い選挙区の改定)を制限する制度や政党によらない予備選挙がイニシアティブによって導入された。どちらも改善と言える。しかも、これらはリコールのプロセスを経て知事に選出されたアーノルド・シュワルツェネッガー氏が推し進めた対策だ。
しかし、慎重に事を運ぶべき強い論拠がある。特に、市民が制定した法によって議会を通さずに済むようにする時には、気をつけなければならない。
代議制と直接民主制の長所を巡る議論は古代にさかのぼる。多少単純化して言えば、古代ギリシャ人は純粋な民主制を好み(「国民による統治」。ただし実際は多くの場合、少数の執政者に最終決定権があった)、ローマ人は「公共のもの」として共和制を選んだ。共和制では、代表者が公益を勘案して妥協することができ、成果の総体に対する責任を負った。
米国の建国の父、中でもジェームズ・マディスンとアレクサンダー・ハミルトンはローマ方式を支持した。マディスンとハミルトンは論文集「フェデラリスト」の中で、「パブリアス」という共通の匿名の下、群衆の危険な「情熱」や、「少数派」(すなわち利益団体)が民主的なプロセスを押さえる脅威について警告している。
正しい民主主義は単なる果てしない投票の繰り返しではない。審理の仕組み、成熟した制度、合衆国憲法にあるようなチェック・アンド・バランスが必要だ。皮肉にも、カリフォルニア州が1世紀近く前に直接民主制を導入したのは、州政府が腐敗した場合の「安全弁」としてだった。このプロセスが機能しなくなってきたのは、比較的最近のことだ。
提案13号を境に、直接民主制は安全弁であることをやめ、ほぼエンジンそのものへと変貌した。
失って初めて分かるもの
これらは、希望と不安の両方を与えるものだ。希望は、カリフォルニア州にも自らを正せる可能性があるということだ。既に改革に向けた議論が始まっている。しかし皮肉なことに、州憲法改正会議への動きが2010年に資金不足で止まってしまったため、目下の最大の希望はイニシアティブを通じた改革にある。
また、代議制の心臓である議会の権限と信頼性を取り戻そうという議論もある。これを実現するには、異常なほど少ない議席数を増やし、任期の制限を緩和することだ。
さらに重要なのは、直接民主制をエンジンから安全弁に戻さなければならないということである。イニシアティブの実施はもっと難しくしなければならない。有権者が本当に理解できるよう、内容は短く、単純にすべきだ。どれくらいの資金が必要で、それをどこから調達するかを明示しなければならない。
そして、イニシアティブが成立した場合も、議会がその内容を修正できるようにする必要がある。住民投票も同様の原則で行うとよいだろう。
一方、不安要素は、欧米諸国が少しずつ反対の方向へと流れていっていることだ。グローバル化に対する懸念は、すなわち政府が嫌われ、ポピュリズムが台頭しているということを意味する。欧州の人々は、正気を失ったカリフォルニア州民が自らの投票によって異様な混乱を招いているのを見て陰で笑っているかもしれない。
しかし欧州の有権者の中に、移民に反対する住民投票の誘惑に負けない人がどれくらいいるだろう? モスクの建設反対や減税はどうだろう? カリフォルニアの過ちはどこで繰り返されてもおかしくないのだ。
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