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太平洋戦争の検証が本格的になされたのは戦後だ。戦争が終わ
って、当時の責任者が退いてから何年もたって、次々と真実が
明らかにされ、それが語られるようになった。そしてその検証は
66年経った今でも続けられている。
当時を生きている国民は、その戦争を、そしてそれを報じる報道
を、毎日見たり聞いたりしていたにもかかわらず、66年たった今
を生きる我々よりも知らなかったに違いない。
その事が福島原発事故でも行なわれているのである。
あの事故が起きたとき、我々は何もわからずにただオロオロ
させられた。事故が起きて一ヶ月あまりたち、断片的に検証作業が
はじめられ、それがメディアに載る。その事によって当時の事実が
少しばかりわかるようになった。
たとえば4月22日の毎日新聞一面に報じられた「検証 大震災」
の記事である。そこには3月17日に行われた自衛隊ヘリの放水作戦
の背景が書かれている。
あの時、テレビで映し出された放水を見て、こんな原始的なことで
しか冷却することが出来ないのか、焼け石に水ではないか、そう思っ
た国民はほとんどだったに違いない。
なぜあんな事をしたのか。その理由が、アメリカ向けのパフォーマ
ンスだったことを、それから一ヶ月以上たった4月22日の毎日新聞が
次のように明らかにしている。
・・・「ヘリ放水開始」・・・テレビ画像のテロップとともに映像
は世界に生中継された・・・テレビを見守るワシントンの日本大使館
では拍手がわいた。
「「自衛隊などが原子炉冷却に全力をあげている」。作業終了から約10
分後菅首相はオバマ大統領にそう伝えた・・・相次ぐ水素爆発と放射
線物質の広域拡散・・・原発暴走を制御できない無力な日本という
印象が世界に広がりつつあり、菅政権は「このままでは日本は見捨て
られる」と危機感を強めていた。
「放水はアメリカ向けだった。日本の本気度を米国に伝えようと
した」。政府高官は明らかにした・・・「原発の状況がわからない」。
米国のいらだちは震災直後からあった・・・(事故発生から数日間の)
米国の一連の言動は日本への不信と強い危機感の表れと映った・・・
打開に動いたのは防衛省だった・・・「やるしかない、放射線量の
数値が高くても踏み切る」・・・米国は好感し・・・藤崎一郎駐米
大使にこう伝えた、「自衛隊の英雄的な行為に感謝する」・・・
(その後)現実には冷却効果が期待できないヘリ放水は二度と行な
われなかった・・・
そこには被災住民や国民に向けられた思いはない。あるのは米国
の顔色をうかがう姿だけである。
おそらくこんなことはメディアは当時から知っていたに違いない。
それをほとぼりが冷めてからもっともらしく国民に知らせる。それも
また、あの時とまったく同じなのだ。
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