http://www.asyura2.com/11/senkyo111/msg/891.html
Tweet |
まずは、素直に喜ぼう。壊滅的な被害をもたらした東日本大震災に伴う電力不足を、国民や企業の驚異的な節電努力によって、曲がりなりにも乗り越えることができたのは幸いだった。首都圏では暖かい日が続き、暖房による電力のひっ迫の思い悩むことなく暮らせる季節がめぐってきた。
しかし、喜んでばかりはいられない。この節電には、「経済の大幅減速」というリスクが潜んでいるからだ。独自の取材の結果、東京電力のユーザーが震災から1ヵ月の間に1日当たり500万キロワット前後という驚異的な節電を果たした事実と、それに伴って日本の成長率が3%以上も減速した可能性が浮き彫りになってきたのである。
折しも先週末、日本は、ワシントンで開かれた「主要20カ国(G20)財務大臣・中央銀行総裁蔵相・中央銀行総裁会議」の場で、「世界経済のリスク」との嬉しくないレッテルを貼られてしまった。ところが、菅直人政権が鳴り物入りで設置した「東日本復興構想会議」は、第1回会合で、いきなり「震災復興税」の創設を最優先課題のひとつに掲げて、財政偏重・増税ありきの復旧・復興策を推し進める方針を打ち出した。
愚策としか言いようがない、まるで、衰弱した病人に、体力が必要な外科手術を強行し、患者の命を奪うような話なのだ。菅政権には、菅政権が「日本経済のリスク」になっている事実の自覚が求められている。電力消費が12%減少した裏側で「皆さん、なんと協力的なのでしょうか。救われました」---。目を皿にして日々の電力需給をモニターしてきた、ある電力関係者は、筆者の取材に対し、開口一番、こう漏らした。
言葉の背景にあるのは、被災直後の週末に計画停電突入をアナウンスした途端、翌週の初めから東京電力管内の1都8県の電力消費が見る見る下がり出したことだ。花冷えの暖房需要がピークに達すれば大停電を誘発しかねないとの懸念を他所に、電力消費は、前年の同時期を500万キロワット、率にして12%前後も下回る日が続いた、と、この関係者は、未公表の電力消費の詳細を明かしたのだ。
そして、「ありがたいことだ。これほどの協力が得られると予想した電力会社関係者はいなかった」と安堵の表情をみせていた。多くの人々の善意の総和である驚異的な節電が、無計画で大規模な突発的停電を未然に防いだというのである。しかし、エコノミストの中には、この善意の節電を、「手放しで喜ぶのは間違いだ。むしろ、その節電に伴う経済活動の停滞に危機感をもつべきである」と顔を曇らせる向きもある。
詳しく紹介しよう。被災後の1ヵ月間の節電について、このエコノミストは「過去の弾性値から見て、首都圏の経済成長が10%近く減速したという試算が成り立つ」と分析している。そして、「首都圏経済は、日本の4割近くを構成するので、国家レベルでみれば3%を大きく超える成長の阻害要因になったはずだ」とみているのだ。
国際通貨基金(IMF)は4月11日、世界経済見通しを改訂し、その中で、日本の2011年の成長予測をこれまでより0.2ポイント低い1.4%に下方修正した。この水準は4.4%の成長が見込まれる世界経済から見れば、群を抜いて低いものである。
G20が示した日本経済への懸念
しかし、電力不足は今回の1ヵ月にとどまらない。東電なりの電力供給の復活努力がその通り実現できたとしても、6月以降は冷房を中心とした電力需要が高まり、3、4ヵ月にわたって電力不足が繰り返されるのは確実な情勢にある。そうなれば、事態はIMF見通しより大きく悪化し、マイナス成長の泥沼に落ち込んでも不思議はない。さらに言えば、今後、数年間、こうした状況を解消することは難しいとされている。
もちろん、日本経済を減速させる要因は、首都圏の電力問題だけではない。全国各地で繰り広げられた自粛に伴う消費の減退や、観光を中心とした人の移動の激減も深刻な問題だ。大手流通各社は軒並み、2011年度の純利益が2〜4割落ち込むとの業績見通しを公表しているし、大手航空会社は「羽田発着便の搭乗率が3割を切り、1日10億円規模の営業赤字を計上する日が珍しくない」と頭を抱えている。
先週末、米国の首都ワシントンで開かれたG20財務大臣・中央銀行総裁会議は、こうした危機に対して、当事者である日本よりも諸外国の方が敏感であることを浮き彫りにした。東日本大震災の復興支援を前面に打ち出す一方で、共同声明において、政情不安の中東・北アフリカと並んで、日本が「経済面での不確実要素だ」との見方を示したのである。
こうした中で、経済の減速を和らげるために速やかな復旧・復興が必要なことは、だれがみても明らかだろう。ところが、菅政権の取り組みは、目を覆いたくなるほど惨憺たるものだ。その第1が、2011年度の第1次補正予算である。先週の本コラムでも指摘したように、そもそも阪神淡路大震災の際の対応と比べて遅いうえ、規模が4兆円と大きく不足している。
にもかかわらず、ここへきて半ば公約だったはずの「4月中の国会提出」さえ危ぶまれる事態に陥っているのだ。与党・民主党や野党・自民党、公明党から、「財源として国債に頼らない」という菅首相の基本方針に異論が続出していることが理由という。
いきなり増税論議を持ち出す愚
そして、第2が、のっけから、経済オンチぶりを露呈した政府の「東日本復興構想会議」だ。議長の五百旗頭(いおきべ)真防衛大学校長は14日の初会合で、「全国民的な支援と負担が不可欠である」と強調した。そして、「議長提出資料」に、具体策として「かつて無い支援の輪(義援金)+公債+震災復興税」と盛り込んで見せた。
しかし、以前から本コラムで指摘してきたように、復興の財源が、義援金と財政しか存在しないというのでは、視野が狭過ぎる。そもそも震災や津波からの復旧・復興は、被災者が主役である。さらに、内外からの民間投資を呼び込む努力も欠かせない。義援金や財政は、そうした当事者や民間の投融資のサポート役であることを肝に銘じるべきだろう。
まして、復旧・復興がほとんど手付かずの段階で、いきなり投資や消費に冷や水を浴びせかねない増税論議を持ち出すことの弊害の大きさを、復興会議が理解できていないことは論外だ。筆者は将来、増税が必要になる可能性は否定しない。大手メディアの世論調査でも、「増税を容認する向きが7割を超えた」という。
しかし、そうした増税は「今ただちに」ではなく、復旧・復興のめどが付いたら実施する課題のはずである。端から増税を前提にして、復旧・復興の効果の乏しいばら撒き政策を羅列されてはたまらない。これが、「世界経済のリスク」は日本、「日本経済のリスク」は菅政権、と憂慮せざるを得ない所以である。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2465
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK111掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。