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「終息」は終わることだが、「収束」は収まりをつけること、落ち着くことである。東電は福島第一原発の事故を「収束」させるための「道筋」(ロードマップ)を示した。放射性物質の処理には「終息」はないのだろう。コンクリートの石棺で覆ったチェルノブイリの原子炉からは、コンクリートの劣化も手伝っていまだに放射能が漏れている。
フィンランドでは、世界で初めて放射性廃棄物の最終処分場づくりが地下500メートルで進んでいるようだが、廃棄物が無害になる10万年後まで、廃棄物を貯蔵し密閉するのだという。10万年後に人類が存在するかどうかも不明だ。当然のことながら東電は、福島第一原発とのかかわりを終わりなき航海と覚悟を決めているのだろう、収束への目標を「放射線量の放出が大幅に抑えられていること」とした。
菅官邸の政治的な要求に従ってロードマップを作成したものの、その中身はきわめて厳しい現実の叙述にならざるを得ず、ステップ1、ステップ2と設定された対策による効果は「希望的観測」の域を出ていない。たとえば2号機の大量漏水を防ぐため格納容器の損傷個所を修復する必要があり、強い放射線で作業長期化の恐れもあるといいながら、ステップ1(3か月程度)のスケジュールにこれを組み入れている。
早くしてほしいのはやまやまだが、実現可能な計画なのだろうかと不安はつのる。一方、東電のロードマップ公表にタイミングを合わせるかのように、経産省の原子力安全・保安院は原子炉の燃料棒に起きている事態を「損傷」から「溶融」へと修正した。原子炉の圧力容器、格納容器、配管などが破損し、注ぎこんだ水がじゃじゃ漏れになって、燃料棒が露出、放射性物質が発する熱によって温度が異常上昇し、被覆管のみならずセラミック状の燃料ペレットそのものが溶け出した。
こうした「溶融」が起きていることは、大手テレビ局の番組に出演していない学者や技術者が、事故直後から指摘していた。マスメディアは、当初こそ「溶融」と表現していたが、いつの間にか、どこも横一列に「損傷」という言葉を使うようになった。保安院は、燃料棒をおさめ防護する被覆管が熱で傷つき、内部の放射性物質が放出されるのを「炉心損傷」、燃料ペレットが溶けて形が崩れるのを「燃料ペレットの溶融」、溶けた燃料の塊が下に落ちるのを「メルトダウン」と定義した。
これを適用すると、これまでは被覆管の損傷しか認めていなかったことになる。少なくとも、溶融がなければ漏れ出さないプルトニウムが原発敷地内で検出された段階で、「溶融」を認めるべきだった。「レベル7」もそうだが、すべてにわたって判断、決定が遅い。
事故の状況、推移、漏れ出した放射性物質の中身から見て「溶融」しかあり得ないにもかかわらず、マスメディアや、原子力学会の多くの学者はテレビなどで「損傷」という用語を多用し、事故を小さく見せたい政府や東電に力を貸してきたといえる。いま国民の間に広がっているのは、東電など電事連やマスメディア御用達の原子力、放射能専門家に対する強い不信感ではないか。
彼らが吹聴した楽観的なシナリオはすべて崩れ、原子炉は日に日に深刻度を増した。その結果、彼らと同じ「原子力村」の一員である原子力安全委員会メンバーや保安院の説明を鵜呑みにした枝野官房長官らの政府見解は信用を失い、逆に国民の不安をかきたてたといえよう。東電の示した「収束への道筋」に、多くの避難者が疑念を抱くのも、これまでの経緯からして、仕方あるまい。
http://ameblo.jp/aratakyo/
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