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「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」から「安物買いの銭失い国家・日本」を下記のように転載投稿いたします。
=転載開始=
アルルの男・ヒロシです。
米国のプラントメーカーGEの責任問題について、詳しく述べている記事があった。
(貼りつけ開始)
第138回 原子炉メーカーの製造物責任
早稲田大学大学院法務研究科教授・弁護士
道垣内 正人
メーカーにとって製造物責任は大きなリスクである。しかし、原子力損害の賠償に関する法律4条3項は、「原子炉の運転等により生じた原子力損害については、・・・製造物責任法 (平成六年法律第八十五号)の規定は、適用しない。」と定めている。原子力事故の場合の責任主体は原子力事業者(電力会社等)だけであって、原子炉メーカーは責任を負わないのである。 これは責任集中と呼ばれる。
なぜ、原子炉メーカーは製造物責任法の適用除外を受けているのであろうか。それは、日本がアメリカから原子力関連技術の供与を受け、原子力発電事業を始める際にアメリカから提示された条件のひとつだったからである。アメリカの原子炉メーカーとしては、原子炉設備の瑕疵による事故が万一起これば巨額の賠償責任を負うことになりかねず、そのようなリスクを負うことはできないというビジネス判断をしたのである。
アメリカの技術をもとにして原子力発電を始めた国々は、原子力事故の民事責任についてはほぼ同一の法制となっており、それらの国の間では原子炉メーカーの製造物責任は問わないというルールが国際標準となっている。
1986年、チェルノブイリ原子力発電所事故が発生した。ソ連時代に発生した事故であるから、死の灰の飛散により西側諸国の酪農家等が被った損害についてソ連が何らの賠償をしなかったことは不当とはいえ、当時はいかんともしがたいことであった。ソ連の崩壊後、ドイツはロシア型原子炉の危険性を理由として、旧東ドイツの原子力発電所をすべて停止したが、ロシア・東欧の多くの国は主要なエネルギー源として原子炉を稼働し続けた。これをめぐって、上記の問題がクローズアップされた。すなわち、それらの国の多くは製造物責任の特則を設けていないため、西側のメーカーは、ロシア型原子炉の補修工事を受注することによって生ずるリスクを回避したのである。
IAEAは国境を越える原子力事故に備える様々な法的対応をとったが、そのひとつとして、1997年に「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」を作成した。CSCは、責任集中のほか、無過失責任、一定額以上の賠償措置(責任保険、国の措置等による)等を定める法制を有している国が締約国となることができ、締約国で原子力事故が発生した場合には、原則として事故発生国のみが裁判管轄を有することとするとともに、国際基金から一定額が賠償資金として提供されるという仕組みを定めるものである。ロシア・東欧のほか、新たに原子力発電を始めようとする国々に国際基金というバックアップを提供する代わりに、国際標準の原子力損害賠償法制を作ってもらおうというわけである。そのため、CSCは原子力ルネサンスを謳歌して設備の輸出を積極的に行おうとする原子炉メーカー、その多くを擁する日本のためのものであると言われている。
もし、国際標準の原子力損害賠償法制を有していないA国に日本の原子炉メーカーYが設備を輸出し、同国の電力会社Bが発電中にY製設備の瑕疵により原子力事故が発生した場合、A国居住者を中心とする被害者Xらは、日本の裁判所においてYを被告として損害賠償請求訴訟を提起することになろう。この場合、日本は被告住所地国であるので、日本の裁判所は国際裁判管轄を認め、本案の審理に入る。そして、国際私法によれば事故の発生地であるA国法が準拠法となり、同法には通常の民事責任法しかないとすれば、Yは倒産リスクにさらされることになる。
これに対して、もしA国も日本もCSCの締約国になっていれば、裁判管轄は事故発生国に限定されるので、Xらが日本で提訴してもその訴えは却下され、A国で請求するほかない。そして、責任集中を定めるA国法により、A国の電力会社Bにのみ賠償責任があり(A国法上、Bは原子力損害賠償のための責任保険等の措置をとっているはずであり、それに加え、その賠償能力を補うため国際基金から一定額の拠出がされる)、Yに対する請求は認められない。
最近、ベトナムに対する日本からの原子炉の輸出が決まったという報道に接し、日本は進んでCSCを批准するとともに、その世界各国での批准を推進する役割を果たすべき時期に来たのではないかと思う。 (なお、ロシアは現在、責任集中等を定めるIAEAの古い条約の締約国となっている。他方、アメリカ等4ヵ国がCSCをすでに批准しているものの、発効要件である5ヵ国に達せず、CSCは未発効である。)
(掲載日 2011年2月7日)
http://www.westlawjapan.com/column/2011/110207/
(貼りつけ終わり)
記事の日付は地震の前である。この記事を読んで対策を立てていれば、GEだけの設計・納入であった「福島第一原発1号機」のコストとリスクに対する認識が変わったかもしれない。上の免責事項を乗り越えるだけの法的主張を行う、乱暴な米国の弁護士(hired gun)は居ないものか。
結局、日本は「安い原発」というものを米国から売ってもらって、いい気になっていたが、40年目に、そのつけがやってきた、ということなのだろう。コストというものは短期の視点、幅の狭い視点で見るのと、視野を広くしてみるのとでは、全然見え方が違ってくる。
原発は国民生活全体を電力という形でコントロールしかねないものであり、せいぜい個人生活に影響を与える「安物のラジカセ」と話が違う。
属国・日本は米国に色々なことで実験対象になっていた。原発の起こす電気で行ったのは、日本テレビのテレビ放送である。戦後日本はまるごと「トゥルーマンショー」として米国に観察されてきた。日本人はその同じやり方で米国を冷酷に観察できなかった。
「同盟国」という美辞麗句で塗り固めるか、「鬼畜米英」という感情的な憤りの対象。「戦略的競争相手」という冷酷な視点をとうとう持てなかった。
それが今回の原発事故にすべて現れている。
やはり日本は、欧米人から見れば「猿の惑星」だ。映画の中で「猿の惑星」のサルたち(=明らかに日本人のこと)が近代的なコバルト兵器(=核兵器・原発のアナロジー)を神棚に祭っていたにと同じである。こんなことだから何時までも「日本土人(にっぽんどじん)」は成長しない。
=転載終了=
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