http://www.asyura2.com/11/senkyo111/msg/772.html
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5873
4月初めに新聞を読んでいたら、ある市の副市長に総務省の方が着任されたという記事が載っていました。私の知っている人ではなかったのですが、某政府機関で、被災地に派遣される消防や自衛隊の調整を担当していた幹部職員だったそうです。副市長への着任ぎりぎりまで現地での調整の仕事をしていたと、美談のような感じで書いてありました。
しかし、私にとってそれはとても残念な記事でした。
敗戦後の焼け野原の時期を別として、今回の地震は戦後最大の危機だと言われています。地震が発生してまだ3週間も経たない時に、現場での消防や自衛隊の活動を調整する担当の幹部が交代するのです。
この官僚が着任した市役所は、地震の被害を全く受けていない西日本にある市です。着任が遅れたところで東北の各地の大変さに比べたら、なんということはありません。被災地の支援のため、消防や自衛隊の活動を調整して最大限に力を発揮してもらうことの方が、とても大切なはずです。
震災復興にある程度のめどが立つまでは、副市長への出向を遅らせるべきでした。場合によっては、副市長への出向を取りやめ、地震に関係ない別のポストにいる人を出すように調整し直すということも、あってよかったのではないかと思います。なにせ長期戦が予想される戦が始まってから、3週間とたたないうちに幹部が交代するのですから。
私は、太平洋戦争の時に、日本軍が戦争中であっても定期の人事異動を行っていた悪弊が今も改まっていないことに、残念な思いを禁じ得ませんでした。
そして、この新聞の報道も、そのことをまるで問題視していませんでした。おそらくこれからも同じことが繰り返されるのだろうということを感じました。
霞が関の幹部人事は前例を打ち破れるか
繰り返しますが、今回の東日本の大震災は戦後最大の危機だと言われています。
通常、霞が関の幹部人事は、通常国会開けの6月から7月にかけて行われます。国会を乗り切るのが霞が関にとっては非常に大事なことなので、予算案や法律案が無事に国会を通過してから幹部の交代が行われるのです。
今年は、この人事が非常事態に合わせたものになっているかどうか。私はその点に大いに注目しています。
平時のやり方で6〜7月に人事を行うのではなく、前例にとらわれずに、震災の影響のなかった地方から配置転換をするなど、前倒しでどんどん人事が行われるとよいのですが。
また、役所の幹部人事は、ほとんどが年功序列です。民間企業で時々目にするような、末席の常務が10人以上の先輩を飛び越して社長になるようなことは全くありません。事務次官は1年ごとに代わるのが通例で、時々3年ほど事務次官を務める人も出ますが、例外的です。これも、太平洋戦争という緊急時も変わらなかった日本の官僚組織の伝統です。
米国では、緊急時の人事と平時の人事を切り替えます。例えば太平洋戦争の時は、真珠湾攻撃を受けるやいなや、米国海軍太平洋艦隊長官は責任を取らされてクビになりました。代わりにニミッツという少将が27人の先輩を飛ばして大将に就任し、以後終戦までの4年間、日本海軍との戦闘指揮を執り続けました。
緊急時と平時では人事のやり方を変えて、あくまでも能力重視にすべきなのです。今年の各省の幹部人事はどうなるでしょうか。能力重視の抜擢人事や、また、これまでの慣例なら異動時期にあった、実力のある局長が引き続き指揮を執り続けるという人事が続出することを期待しています。
首相の判断で大臣や副大臣などの増員を認めるべし
復興のためには、霞が関の役人の人事だけでなく、菅直人総理が大臣や政務官を自由に増やし、一層の指導力を発揮できるような環境をつくることも大切です。しかし、残念ながらこれも進んでいません。
菅総理が原発担当大臣に細野豪志議員を起用しようとしたところ、与野党から「根回し不足」などとの反発がありました。また、それに同調するかのような報道もなされています。このような緊急事態にあっても「根回し」を要求する議員やマスコミがいることに、とても悲しい気持ちになります。
非常事態にあっては、首相が指導力を発揮できるような体制を一刻も早く整えなくてはなりません。
霞が関では、1997年の「橋本行革」(注:第2次橋本龍太郎内閣が推進した行政改革)によって各省庁が合併したので、ただでさえ巨大な官庁が巨大になりすぎていて、政治家が指導力を発揮しにくくなっています。
例えば、国道交通大臣は、今回の震災の復旧の根幹をなす道路、下水道、河川、海岸堤防、空港、港湾、都市計画、市営住宅等のすべてを管轄しています。厚生労働省は、医療、水道、老人福祉、生活保護、雇用の確保などすべて管轄しています。これ以外に年金問題も抱えています。
このようにただでさえ守備範囲が広いのに、これに加えて地震の復旧対策を講じなくてはなりません。
合併をしていない省庁であっても、例えば、今回、大活躍の自衛隊を所管する防衛省は、増大する中国の圧力に備えるために第一線の防衛をおろそかにするわけにはいきません。また、普天間基地問題もなくなったわけではありません。てんてこ舞いのはずです。
このような緊急事態では、首相の判断で大臣や副大臣などの増員を認めるべきだと思います。
実はどの自治体も「平常時」ではない
自治体の人事も、平常時は年功序列です。多くの自治体では、退職まであと1年間しかない人を管理職にしたり、例えば退職まで1年間しかない福祉部門の課長を別の部の部長にするという人事も行われています。
今回の地震で大きな被害を受けた自治体は、もはや年功序列などと言ってはいられないと思います。
では、今回の地震の被害を受けていない地域は「平常時」のままでいいかというと、すでにそうではない自治体がたくさんあります。人口減少や高齢者の急増という、地域に致命的な悪影響を及ぼす状況は、もう何年も前から進行しているのです。
それにもかかわらず、多くの自治体では、相変わらずの年功序列人事や、外部から幹部を中途採用しないなど、平時と同じ人事をしているところが目につきます。
このような人事が続いているのは、首長に経営能力が欠けていることもありますが、そうした能力主義の人事をすると議会や公務員労働組合から批判を受けるので、面倒な事態を避けたいという理由もあると思います。
菅首相が細野議員を原子力担当大臣に起用することを「根回し不足」と批判した某党の議員のように、日本の社会は非常時でも年功序列や根回しを重視する社会なのでしょうか?
今回の地震を契機として、非常時と平常時の人事を使い分けることの大切さが認識されることを願ってやみません。
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