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原発事故は、事故レベルを、チェルノブイリと同程度の「レベル7」に引き上げるなど、新たな段階を迎えつつあるが、ここに来て,原発事故報道のキーマン役を勤めてきた枝野幸男をめぐって重大な問題が浮上してきた。
原発事故が話題になり始めた段階から、僕が疑問に感じたのは、枝野官房長官が、役職上、やむをえないところもところもないわけではないが、記者会見に出まくり、しかも科学的専門用語を適当につぎはぎしながら、いかにも問題に精通しているかのように、原発事故の詳細を解説・説明していたことであった。
事故とその対策に関して、科学的な専門用語を使わなければならないような話は、それなりの専門家に任せるか、専門家を助言者として従えているべきだろうと僕は考えていたのだが、なんと、経産省の原子力安全・保安院の審議官として当初から一貫してマスコミに対応している西山某も、原子力や原発の専門家ではなく、東大法学部卒の単なる事務官らしい。
僕は、福島原発の事故発生直後からその事故処理と対応にあたっているらしい東電技術者や下請けの作業員、下請けの下請けの作業員、あるいは自衛隊、消防隊等の命懸けの努力を批判するつもりは全くないが、さらに言うならば、彼らの科学的能力や技術的能力が劣っていると思うものではないが、むしろ高く評価するのでもあるが、しかし、事故の詳細を、国内向けだけでなく国際社会に向けても発信し、説明し続けている西山審議官や枝野官房長官らが、ともに文科系出身の、つまり原発や放射能などに関してはまったく無知無学な素人同然の人間だということに疑問を禁じ得ない。
彼等が一貫して、科学的根拠に基づいているかのように、「メルトダウン」「炉心」「冷却水」「シーベルト」・・・など、付け刃の科学的専門用語を駆使して、原発事故も放射能汚染も、「安全」で「たいしたことはない」「当分、健康に害はない」などと主張し続け、むしろ科学的知識に基づかない「風評被害」や「パニック」を警告してきたのは、まさしく彼等が、専門家でも専門の技術者でもなかったが故に、つまりまったくの無責任な素人であったが故に、平然と、そして気軽に発言できたということであろう。
むろん、素人だから、原発問題や放射能汚染に関して発言してはいけないと言っているわけではない。医学の話に例をとる。たとえば、脳外科手術や心臓移植手術の内情を説明するのに、それの担当だからというだけで、医者でも医学者でもない厚労大臣や厚労省の役人が、記者会見に出ずっぱりで手術の詳細を解説するようなことはありえないし、もしそういうことになったら、何か変だな、と感じるのではないかと言いたいだけである。
原発事故に関する西山審議官や枝野官房長官の話は、当事者の話ではない。つまり原発事故の技術や現場に精通した専門科学者、専門技術者の話ではない。今、日本のマスコミや論壇やネットの世界にウジムシのごとく大量発生している、一夜漬けの促成「原発評論家」や「原発ジャーナリスト」による暇つぶしの茶飲み話程度のものであって、居酒屋論議の段階を超えるものではない。
繰り返すが、専門の科学者や現場の技術者にしか理解できない原発事故の詳細についての説明は、専門技術者や専門科学者に任せるべきだったと思う。まず以下の記事を読んでもらいたい。
*****菅内閣の「嘘」体質は常軌を逸している。
本誌は4月1日号で原子力安全・保安院の中村幸一郎・審議官の“更迭”をスクープした。東大工学部出身の技術キャリアである中村審議官は、震災翌日の会見で、検出された放射性物質から、「(1号機の)炉心の中の燃料が溶けているとみてよい」と炉心溶融の可能性に言及した。正しい認識だった。ところが、菅首相と枝野幸男・官房長官は、「国民に不安を与えた」と問題視し、中村氏を会見の担当から外すように経産省に指示したのである。そして、枝野長官は会見で、炉心溶融情報について、「炉を直接見ることはできない」といってのけ、中村氏の正しい指摘を封印した。
あの段階でメルトダウンを認め、すぐに海水注入の措置を取っておけば、その後の水素爆発、放射性物質の拡散は防げた可能性が高いと専門家は指摘する。菅氏、枝野氏が国民を危機に陥れた責任は非常に重い。その枝野氏は、今になってメルトダウンを認め、廃炉の可能性を言い始めたが、間違いを認めるなら、まず自分の嘘と失敗を詫びたらどうか。この男が「よくやっている」とか「総理候補に浮上した」などと評価される理由はどこにもない。※週刊ポスト2011年4月15日号
菅直人は、原発事故の発生の当初から、「俺は原子力に詳しい」と東工大物理学科出身を過信して、この事故に異常な関心を示し、さまざまな異常行動をとっているが、その一つが東電や関係機関の専門技術者や専門科学者たちの意見を無視・黙殺して、官邸独自の「対応行動」を次々に指示し、気に食わなくなれば怒鳴りまくり、結果的に現場を混乱に陥れたことにある。
その一つが、枝野幸男による情報統制と情報管理である。たとえば、原子力安全・保安院の中村幸一郎・審議官が「更迭」されていたことが分ったが、それは、東大工学部出身の技術キャリアである中村審議官が、震災翌日の会見で、検出された放射性物質から、「(1号機の)炉心の中の燃料が溶けているとみてよい」と炉心溶融、いわゆるメルトダウンの可能性に言及したからだった。
むろん、中村審議官の分析は正しい認識だったが、それが菅首相や枝野官房長官等の官邸コンビには気に入らなかったらしい。そしてメルトダウンの事実もその可能性もないという、それこそ官邸発の「風評」が、マスコミの協力もあって、全国に蔓延したのである。
しかし、それでも現実をいつまでも無視するわけにはいかない。そして結局、今日、今回の福島原発事故と放射能漏れは、チェルノブイル並みの「レベル7」であることをことを認め、発表となったのである。この「レベル7」の発表が、12日(火曜日)だったことは、言うまでもなく「官邸」の意向を受けた政治的判断である。
統一地方選挙が終わったからである。ところで、一時は、東京電力からの情報が遅いと怒りまくっていた枝野官房長官や菅首相だが、その後、福島原発事故が、チェルノブイル並みの大事故であることが明らかになるにつれて、原発事故そのものに興味を失ったらしく、あれほど頻繁に開いていた記者会見も開かなくなり、菅首相にいたっては、人と会うこともなく、部屋に閉じこもりっぱなしだそうである。(続く)
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