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各地に壊滅的な被害をもたらした東日本大震災から1ヵ月という貴重な時間が過ぎ去った。にもかかわらず、政府・民主党の復旧・復興策作りは相変わらずの迷走を続けている。今回のケースを阪神淡路大震災と比較すると、当時の村山富市内閣が被災から42日間で1995年度補正予算の承認を国会で取り付けることに成功したのに対して、菅直人内閣は端からハードルを下げて、補正予算案の提出目標を最短でも被災から48日目にあたる今月末に置いている。
しかも、先週末の新聞各紙の報道によると、補正予算の規模は4兆円程度にとどまる見通しだ。これは、政府が公表しているインフラ、住宅、工場などの損害額(16兆円〜25兆円程度)を大きく下回る。残念だが、この調子では、復旧・復興策がToo late, Too small な内容に終わるのは確実だ。
野党やマスコミを含めて、少しでも早く被災に苦しむ人々に必要な支援の手を差し伸べてほしいとの願いから、指導力不足が明らかだった菅政権に対する批判に手心を加えてきたことが仇となった感は否めない。新聞報道によると、ここにきて、政府・民主党は2011年度の補正予算規模を3兆9000億円から4兆円とする方針を固めた模様だ。
主な歳出は、道路や港湾などのインフラ復旧のための公共事業に1兆5000億円、7万戸の仮設住宅の建設に5000億円、がれきの処理に3000億円、被災者の雇用対策と自衛隊の活動費に3000億円、被害の大きかった自治体への交付に1000億円をそれぞれ充てる方向になっている。加えて、中小企業向けの融資にも1兆円の資金を確保する案が有力という。
一方、財源(歳入)は、基礎年金の国庫負担(2兆5000億円)を流用するほか、11年度予算の「経済危機対応・地域活性化予備費」(8100億円)を取り崩す方針だ。こうした補正予算や復旧・復興対策の策定過程に共通する問題は、編成するのかしないのか、規模をどのくらいにするのか、財源として何と何を使うのかといった基本的な方針を、菅政権として官僚たちになかなか示さなかったばかりか、示したかに見えた指示も曖昧で内容が二転三転したことである。
ほとんど報じられていないが、こうした問題が原因になって、各省庁の官僚が、4月8日へ向けて準備していた復旧・復興策がいちとん挫した事実がある。というのは、官僚たちは、増税や国債増発といった財政措置が必要な大規模な補正予算案作りは困難と判断し、とりあえず2011年度当初予算に盛り込まれている予備費(8100億円)の活用を軸に復旧策作りを急いでいたのだ。
ところが、この4月8日になって、菅首相は野田佳彦財務大臣と玄場光一郎国家戦略担当大臣(政調会長)を官邸に呼び、それまでとややニュアンスの異なる方針を提示した。野党やマスコミからばら撒き批判を浴びるのを避けるために、国債増発や増税を盛り込まない点はそれまでと同じだったものの、少しでも規模を大きく見せようとして、基礎年金の国庫負担分を維持するための予算(2兆5000億円)など使途が決まっている各省庁の当初予算を見直して財源を捻出することも追加的に指示したのだ。
この結果、官僚たちのプランは前提が崩れてしまった。予備費だけをあて込んで、緊急性の非常に高いものに絞り込んだ準備を進めていた各省庁の復旧・復興策が水泡と帰してしまったのだ。細かいことを言えば、この幻の緊急策は、明日すぐに着手できるものだけを取り上げろという厄介な条件に基づいて、官僚たちが無駄とも思える労力を割いて作成したものだった。
がれき処理のために地方自治体を支援する予算を例に説明すると、必要と見込まれる総額の概算を要求することは許されず、周辺の道路が復旧し、人員の手当てに目途が立っていて、明日から作業できるものに限定しろという前提になっていたのだ。
官僚の立場で言えば、がれきが大量に発生している場所のうち、周辺の道路の補修が終わり、作業員が確保できることを調査して、今後数ヵ月以内に対策が必要であってもただちに作業を開始できない個所は除くという、手間のかかる作業だった。このため、各省庁の復旧・復興策作りの混乱は目を覆いたくなるようなものだった。これらは、明確な方針が迅速に示されてさえいれば、避けられた混乱である。
話を進めよう。菅政権が補正予算案など震災対策に伴う特別立法の提出期限の目標にしているのは、今月末だ。今月は29日から大型連休に突入するので、月末を28日のことと仮定すると、冒頭で記したように、被災から48日後の特別法案の提出ということになる。
一方、阪神淡路大震災に直面した村山内閣は、被災からちょうど1ヵ月の1995年2月17日に住宅や家財の被災に伴う損失を住民税の雑損として控除を認める「地方税法の一部改正案」や、阪神・淡路復興対策本部の設置を決める「復興の基本方針及び組織に関する法律」など5法案を閣議決定し、国会に提出した。
翌週には、自治体に対する財政援助法や国債の増発を可能にする公債発行特例法案などの補正予算の5法案を提出し、2月中の成立に漕ぎ着けている。さらに3月27日までに6本の特別法案を矢継ぎ早に成立させている。こうした手際のよさは、菅政権にはみられない。
東日本大震災は巨大な津波を伴い、阪神淡路大震災よりも被災の規模や範囲が深刻なうえ、今なお収束の展望が開けない福島原発事故を抱えている。そうしたことを根拠に、菅政権は、厄介さの時限が違うと釈明するかもしれない。しかし、各省庁にすれば、16年前の村山政権時代に阪神淡路大震災を経験しており、貴重なノウハウをどっさり蓄積しているのだ。
それらを迅速に活用できなかったのは、国民と日本にとって大変な損失である。何より、不自由な生活を強いられている被災者に申し訳がたたない話である。問題は、初動の混乱に伴うスピード感の欠如だけではない。今回の補正予算・復旧・復興対策には、規模が小さく、発想が貧しいという問題も付き纏う。
内閣府は3月25日に公表した「(東日本大震災の)マクロ経済的影響の分析」の中で、今回、北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の1道6県で、社会インフラ、住宅、民間企業の設備といったストックが受けた損害額が16兆円から25兆円に達したとの試算を公表している。
筆者は、この試算の前提にやや楽観的な部分がある気もするが、それはさておき、この政府自身の見積もりと比べても今回の4兆円という第1次補正予算案では規模が小さ過ぎて、遠からず復興資金が不足するのは明らかだ。
第1弾で、今回のような欠陥補正を組んでしまった以上、第2次、第3次補正の速やかな編成は不可欠だ。その際、財政危機の最中とはいえ、国債増発や将来の増税を完全に避けて通るのは不可能だ。程度の差はあれ、そのことを否定できる人はいないと思われる。しかし、以前にも、このコラムで提言したように、そのすべてを財政で賄おうというのは、発想が貧し過ぎる。国を危うくする致命的な間違いといってもよいだろう。
そこで強調したいのが、政府は、内外から民間投資を呼び込むことにも最大限の努力を行うべきだということである。大規模な事業所の新設・復旧に伴う法人住民税の減免措置、派遣業法の弾力運用、ビザ見直しによる外国人労働者の呼び込み、子供の保育・教育施設の充実といった産業誘致・活性化策だけでなく、将来の収益が見込めるガス、水道などの公益事業に資金を貸し付けるレベニューボンドの特別目的会社での発行の促進など国や地方の財源に負担をかけない施策もいくらでも作れるはずだ。
統一地方選挙の予想を上回る惨敗によって、菅政権はレームダック化に拍車がかかるだろう。しかし、真摯でクレバーな復旧・復興策を打ち出すことさえできれば、世論は味方をしてくれるはずである。政権の座に居座り続けるのならば、それぐらいの復旧・復興策を構築責務があるはずだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2427?page=2
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