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29日の参院予算委員会で、菅首相が地震発生翌日の12日早朝に福島原発を視察したことに関連し、自民党磯崎議員が質問した。予てから、この視察は首相のパフォーマンス以外の何物でもなく、このために同原発のベントが遅れる原因となったと批判されていた。首相はこれに対し「(初動対応が)遅延したという指摘は全くあたっていない」と反論した。当然そう言うだろうが、だが、本当にそうだろうか。
東京新聞28日朝刊(共同通信)には、「政府原子力災害対策本部の文書によると、保安院は11日午後10時に『福島第1原発・2号機の今後のプラント状況の評価結果』を策定。炉内への注水機能停止で50分後に【炉心露出】が起き、12日午前0時50分には炉心溶融である【燃料溶融】に至るとの予測を示し、午前3時20分には放射性物質を含んだ蒸気を排出する応急措置【ベント】を行うとしている」と報じている。また、この文書は当日の午後10時半に首相に説明されたとも報じている。
枝野官房長官は28日午前の記者会見で、福島原発の事故発生当初、被害拡大を防ぐため菅首相が東電に対し、放射性物質を含む気体を原子炉から抜く作業を速やかに行うよう指示したものの、東電側が直ちには対応しなかったと説明した。また、12日午前2時ころ、海江田経産相が東電に電話で指示した、と斑目原子力安全委員長は国会で答弁した。ともに、ベントが遅れたのは東電の責任だと言っている。
ベントとは、空気を入れたり、抜いたりする穴、即ち、換気口の総称である。圧力容器の中で化学反応を行い、何かの拍子にガスが異常発生し、ガス圧が設計許容値の限界を超えると爆発する虞がある。その爆発を防ぐためにベントを取り付け、ガスを大気中に逃がす。原発も同様に、原子炉圧力容器の爆発を防ぐために、ベントがある。それは同時に、原子炉内の放射能汚染ガスを、大気中に放出することを意味する。
福島原発の電源が津波により止まったのは11日午後3時半過ぎ。それから炉心では原子燃料の余熱による冷却水の蒸発が始まった。その状態が続くと水蒸気で圧力容器内のガス圧が上昇し、圧力容器が爆発する。70気圧の炉心への冷却水の注入が出来ないと判明した時点で、この事態を原発技術者なら誰でも察知できる。だから、法律に基づき、東電は電源不能(15:42)、注水不能(16:45)の通報をした。
子供ではない。東電は通報後、対策や事態の予測を経産省・保安院にしたはずだ。その時点では、東電は最悪のケース(チャイナ・シンドローム)とベント後の注水再開(=操業再開)の二つをシュミレートしていたはずだ。筆者のサラリーマン時代の経験から言えばそうなる。当然、最悪のケースを免れるために、ベント(=放射能で汚染されたガスの大気中への放出)の許可を政府に求めたはずだ。
東電だけではなく、保安院も当然シュミレーションをしたはずだ。それに基づいて、ベントによる汚染の程度と範囲が首相に報告された。それが11日夜10時半。東京新聞の記事では、その報告で首相は午前3時20分のベントを決断したことになる。それならば、地震直後に出した原発の半径3キロ以内の住民に対する避難命令を、直ちに半径10キロ以内住民に対しても出したはずだ。それが出たのは翌12日だ。
日本で初めて意図的に放射能汚染ガスが大気中に放出する。住民を避難させる前にガス放出をすれば、相当数の住民が放射能によって汚染される。結果的にそれが正解であっても、世論は首相の決断を轟々と非難するだろう。また、午前3時20分にベントした直後の12日午前6時に、放射性物質の浮遊する福島原発にヘリで行く予定を立てるだろうか。この記事は、この二つの重大な疑問を呈している。
私企業が微量の放射性物質を過って構所外に流出すると、操業停止を含めた厳しい処分が下される。だから東電は最悪の事態を予測して、政府にベントの許可を求めた。当然、ベント開始の時刻には幅がある。処がそれに対して、首相は、最速を決断できなかった。これが真実ではないだろうか。午前2時ころ海江田経産相が東電に電話で指示した、と斑目委員長は国会で答弁したが、その指示内容までは述べていない。
首相が、自らの決断と行動が初動対応の遅延に関係ないと云う認識なら、それは、今を含め、原発事故として誰もが経験したことのないゾーンに入っているのに、これからも首相が自らの進退を懸けて、何も決断できないことを示している、と思うのだ。
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